ゲーム機麻雀――クリマス商戦死闘編――
南2局
Xbox 2000
PS3(俺) 13000
ニンテンドーDS 46000
Wii 39000
積もったニンテンドーDSが、また長考に入る。ホントに切るのが遅い。だから頭の悪い奴と打つのは嫌なんだ。人差し指で雀卓をトントンと叩いてやった。
「リーチ」
途端にDSが叫んだ。捨て牌を見ると、字牌を切り終わった後に一萬、それから3巡置いて六萬。いわゆる間4軒だ。そのうえ切り出したリーチ表示牌が三萬。モロソバ、即リーの二、五萬待ちしかないだろ、コレ。CPUの劣る奴に何言っても仕方ないが、あまりにも頭が悪すぎる。こんなミエミエの手でどうしてリーチなんだ……。
そのときいきなり卓に牌が叩きつけられた。
「9筒通るかー!」
「おい、Wii! その大げさな動作はやめろ。ゲーム機ならゲーム機らしく、指先動かしてりゃいいだろ。なんで積もったり、捨てたりするたびに腕振り回すんだよ。それに8筒が壁になってるだろうが」
ぶち切れたオレがWiiを怒鳴りつけた。
「怖い怖い。スタートダッシュに失敗したからって、そんなにカリカリしないでくださいよ」
色白のWiiがニタニタ笑いながら俺を見る。
「バカ野郎、俺だって東1局は小三元をテンパってたんだ。それを、おまえがショボイ手で流すから」
「あー、東1局のテンパイって転売組の大騒ぎのこと。初出荷が10万台にも届かなくて出没した」
Wiiの薄笑いは止まらない。それを制止したのは弟のDSだった。
「兄さん、生産が追いつかないことは仕方ないよ。ままあることだもん」
「バカだなー、爆発的な人気で生産が間に合わなくなったお前とPS3さんは状況が違うんだよ」
この不毛な会話を遮ったのはXbox360だった。
「どうでもいいけど、PS3さん切ってくれないかな。おしゃべりは、もういいだろ」
打ち始めたときから元気のないXboxは静かに言い放ち、また視線を自分の牌に戻した。
「ごめんな」と言って9筒を捨てる。
いくらソフトが多くたって、洋ゲーじゃ売れないのは道理だ。そのうえ360になって本体を小さくしたのに、ACアダプターの大きさじゃ。しょせん米国のデカイ家に置くゲーム機でしかない。日本の「ウサギ小屋」に誰が置きたいっていうんだ。まあ、切るのが早いのは嬉しいけど。
「一発ツモ。2000と1000ね」
DSが大声をあげた。二萬を積もったらしい。
「一発だからチップも付けてね」
開いた牌はタンヤオへの手変わりを望めるものだった。タンヤオと三色を視野に入れつつ待てばいいのに……。
次世代ゲーム機ならCPUにモノをいわせて早く打ち、自分の河に迷彩を施し、画像がきれいな手を狙う、コレだろ。それが上がればいいみたいな、頭の悪い手を連発してコイツは上がってく。ゲームの風上にもおけねぇー。
同じ思いを抱いているであろうXboxをチラリとみると、青ざめた顔をして自分の牌を全自動卓中央の穴に押し込んでいた。発に2索、3索など、7~8枚が見えた。きっと迷彩をほどこしながら、一発逆転の役満でも狙っていたのだろう。緑一色あたりか。
「ブルードラゴンが当たれば絶対逆転だ。ブルードラゴンで」
血走った眼Xboxがブツブツとつぶやいている
そのつぶやきを性格の悪いWiiが聞き流すはずもなかった。
「Xboxさん、鳥山明のデザインと植松伸夫の音楽のゲームなんでしょ、ブルードラゴンって。ウチも鳥山さんのゲーム発売すんですよ。弟のですけどね」
「ごめんなさいね、PS3さん。僕らのところにドラクエが戻って来るって聞いて嬉しくて。何でも一番売れてるハードで出すって、スクウェアさんが言ってるから」
ニコニコと笑いながらDSが俺に話を向けた。不遇をかこっている弟のプレーステーションポータブル(PSP)のことが脳裏に浮かぶ。DSのママゴトみたいなソフトに負けた弟。「英語漬け」「どうぶつの森」の何がゲームらしいっていうんだ。
とりあえずDSとWiiを無視してサイコロを振り、山を割った。
「あーあ、怒っちゃった」という声とともに、Wiiが牌を頭の上まで摘み上げる。
ボテッ!
手から滑った牌がWiiの山を崩した。
「てめぇー! 何度も言ってるだろ。手を振りあげんななよ、ゲーム機なんだから。そんなだから牌を落とすんだろうが。だいたい危ないだろ」
「仕方ないよ。手に汗をかいてくると、コントローラーがすっぽ抜けるのは。ストラップを手首に巻くようにはしてるんだけどね」
シレッと開き直りやがった。ネットのYouTubeにコントローラーが手からぶっ飛び、部屋を壊している映像が流れまくっているのに。まるで自分に関係ないといわんばかりだ。
しかし任天堂の連中に構っているわけにはいかない。南場の親だけに、ここで反撃ののろしを上げないと苦しい。まして俺は借金を背負っての勝負だ。自社開発の半導体でつくった負債が重い。ただし、俺のCPUなら任天堂たちより、数倍美しく、デカイ手をつくることができる。スーパーコンピュータなみの演算処理ができるんだから。たまたま今は負けてるが、長期戦に持ち込めば任天堂兄弟なんかに負けねぇー。
「徹マンに持ち込んで勝とうとか思ってるでしょ、PS3さん。長期でソフトを売って、ハードの負債を取り換えそうって。
でも、ソニー家電にも半導体をのっけてくれなくて、頼みの久多良木健社長が会長に退いたんでしょ。ゲーム開発のメインをハードからソフトに移すとなるときついんじゃない。PS3さんが1日で1割の利子が付くカラス金で麻雀打ってるって、みんな言ってたよ」
Wiiがまた俺の痛いところをついてくる。
「PS3さん、二言目には僕たちの頭が悪いとか言うけど、いつも手は広く取ってるよ、僕たち。別にきれいな手だけにこだわらないからね。発売時のソフトの種類なんて僕が16本、PSさん6本でしょ。というわけで、リーチね」
ムダヅモがなかったのだろう。字牌を切った後、最初の中張牌 (チュウチャンパイ)5索でリーチ。
どうせクソ手に違いない。あいつが売れているのは、コントローラーそのものを動かす楽しみだけなんだから。俺も含めて全員が安牌を切った。
「ツモ。リー即ツモで、おー裏が2枚のったよ。マンガンだな」
また裏ドラだ。今日のりまくっている。
「へへへ、僕が上がると必ず裏がのるんだよね。まあ、僕1台に対するソフトの数は1.6~1.8本だからね。本体を買うと、必ずソフトも買ってくれるってことさ。それに引き替え、PS3さんは0.8~0.9本なんでしょ。大変だよね」
俺はWiiをにらみ付けた。ただ言葉は出なかった。南場の親で上がれないとなれば、今回の負けは決定したも同然。
自然と深いため息がでる。右横のXboxは「ブルードラゴンが来れば、ブルードラゴンが」とつぶやき続けていた。(大畑)
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コメント
Xboxさん…・゚・(ノД`;)・゚・
投稿: ヌカ次 | 2006年12月15日 (金) 06時24分