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2006年12月16日 (土)

『吉原 泡の園』 連載第6回 赤鬼、吠える。

 初日ということもあったのか、時間が経つのが早く感じられた。22時を過ぎると目標額を稼いだコなどは、帰りたいと言ってくる。
 帰りたがっているコに、帰る許可がおりると、マネジャーが僕に向かって。
「お供1台」
と言う。
また僕は
「??」
になる。
「なんのこっちや~?」
 僕がグダグダしていると、面倒臭くなったのか、マネジャー自身がフロントから出てきて、タクシーを止めた。
 はじめ“お供”とは聞こえず、“おおとも”と聞こえた僕は、マネジャーに。
「おおともって、タクシーのことなんですね」
と聞いてしまった。すると。
「フンッ」
 睨まれながら無視された。

 店の前で停車したタクシーに女のコが乗りこむ。それを先輩ボーイEさんが見送っていた。その時マネジャーが止めておけとEさんに言った。ところがEさん、聞こえなかったのかドアをしめ。
「ご苦労様」
 と微笑んでいるではないか。タクシーは黒煙を撒き散らして去っていく。ここで怒り爆発したのがマネジャー。真っ赤な顔をして、つりあがった一重まぶたは、まさに犯罪者。いや、赤鬼である。
「E!! てめえ俺の言うことがきけねえのかー」
 空気が張りつめ、時間が止まった。怒鳴り声は、数軒先の店にまで聞こえる。怒られているEさんは完全に金縛り状態。怖すぎて、僕には凝視できない。
「てめぇ、俺の言うことがきけねえなら、帰れ!!何がきにくわねえんじゃ」
 フロントの木製の机をバンバンたたいて、大声でわめき散らしている。待合室にいる客などは、恐がって帰り出す人もいる。
「なんだか、雰囲気よくないから帰るわ」
 そんな客は、真っ青な顔をしてR店を出て、違う店に逃げるように入っていく。
 とんでもない店に入ってしまったと分かった。しばらくしてほとぼりが冷めた頃、Eさんが僕のところにきて、耳もとで囁く。
「苦労せず、威張るだけで偉くなったから、あのマネジャーはだめなんだよ。客がいないところで怒られるならいい。でも、客の前で怒鳴っちゃダメだよ」
 僕も同感だった。あれじゃ客はこない。来ても逃げるだけだ。こんな高級店はない。高級という字が聞いて呆れる。嫌な空気のままだが、それでも店はまだ営業時間である。そのころ店長は、客のいない第2待合室で、呑気に革張りのソファに寝転がり、テレビを見てながら弁当を食べている。時々笑い声も聞こえる。
 僕は飲まず食わずで、12時間近く働いていた。そのため、カルキ臭くて飲めたものではない水道水を飲んで凌いだ。その脇には、炭酸水、オレンジジュースが注げる立派な機械があった。
「惨めだな……」
 ソープに来る客は大威張りする人が多い。それに対応するため、裏方は火の車だ。
「客引けー!」
 温もりのない街角に、マネージャーの怒鳴り声が響き渡った。(イッセイ遊児)

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コメント

ここまでくると悲しくなる。もっと人間として学んでほしいですな。

投稿: スナフキン。 | 2006年12月16日 (土) 15時13分

フナスキンさん、またまたコメントありがとうございます。まったくその通りなんですが、人の話を全く聞けない人だったのです。ハイ。

投稿: イッセイ遊児 | 2006年12月16日 (土) 19時10分

今日もなぜか更新されてないんですね・・・・・・。
楽しみにしていたのですが。

投稿: 更新 | 2006年12月17日 (日) 09時16分

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