『吉原 泡の園』第5回 「どういう了見してるんじゃい!」
■服と靴を用意され、とうとう客の呼び込みのために店の外に出されたイッセイ。……といってもソープの呼び込みなど経験したこともない上、背後には鬼のマネージャーが後ろに控えている。ピンチは続く。
* * *
向かいにある店の40代のボーイさんの呼び込みを見ていた。
「どうですか~お客様~」
目の前を走りさる車の運転手に向かい、怒鳴り、体を大きく使ってジェスチャーしている。
隣の店のボーイは、早口で聞き取れないが、通行人に何かを説明していた。
「こ、これが呼び込み!」
僕はあっけにとられて何も出来ない。それでも、見よう見真似で声をかけてみた。
始めて声をかけた人は、いきなり不機嫌になった。
「アッ!?俺は今仕事中なの」
そう軽くあしらわれる。どこかのソープ店のボーイに声をかけてしまったのだ。
何時間も客引きをやっていると腹も減り、のどもからから、タバコも吸いたい。すると、自動ドアが開いた。自動ドアの上にスイッチがあり、それを押すと開いたままになる。
「間もなく!」
マネージャーがそう怒鳴った。
「???」
僕の頭の中が?でいっぱいになる。何を怒鳴っているんだか、それにしても何だろう。これから、一体何がはじまるのだろう。
何も分からなかったので、悠長に構えていた。間もなくとは、実は僕に対して発していたのだ。数時間前に仕事をはじめたばかりの僕に、何かをやらせようとしているのは確かだ。でも、何も教わっていないし分からない。
「はい到着!」
僕に向かって怒鳴っている。
すると、その声とほぼ同時に、ナンバー7○7のクラウンが店の前、つまり僕の前に滑り込んでくる。
「あっぶないな~ぶつかったらどうするのさー」
そう思っていると。
「お前どういう了見してるんじゃい~!」
マネージャーが騒ぎ始めた。
「ヘッ、僕?」
どうすりゃいいのさと、右往左往していると。
「客が車に乗ってんじゃ、ドア開けろボケ!」
そう怒鳴っている。
慌ててクラウンの後ろのドアを開けると、年配の客が降りてきた。客は、そそくさと店に入っていき、マネージャーのいるフロントで入浴料を払っている。
ソープランドは、法律上サウナ付きの個室風呂である。そのため入浴するのが名目で、はじめに入浴料を払う。
何が何だか分からないまま、ただ怒鳴られ続け、ボケ、カスといわれ、ソープボーイのデビューを飾った。これが悪徳高級ソープの洗礼なのだった。(イッセイ遊児)
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コメント
弟子入りするとそんなイメージですが《親方に怒鳴られる感じ》普通の企業だとパワーハラスメントに近い感じですね。
投稿: スナフキン | 2006年12月13日 (水) 16時19分
まさにその通りです。ただ、パワーハラスメントというよりも、暴力団による暴力という風に理解していただければ、よりイメージとしては近いです。(泣)
投稿: イッセイ遊児 | 2006年12月14日 (木) 09時17分