素ボケ系は好きですか?
著名人の対談ほど面倒くさいものはない。テープをおこし→文章にまとめる→著者チェック→言い足りない部分にアカが入る→※文章を直す→対談相手のアカを読み再度アカが入る→※に戻りエンドレス!
こんなことを締め切り時間いっぱいまで付き合っていると、えらく文章が長くなってしまう。実際の会話よりどんどん格好良い会話となり、できあがったときには実際の対談で交わした言葉はどこに? なんてことも。
てなわけで、著名人のキャラクターと実物は違うモノと思っていたりするのだが、たまにキャラが素だったり、実生活で押し通している人物とぶつかり驚くことがある。
例えば土屋賢二。『週刊文春』に連載を持っているお茶の水大学教授である。大学の同僚の先生をも笑いにネタにし、返す刀で自分自身をも笑いにする文章はかなり面白い。ただし、あくまで執筆上のネタ、文章における芸風だと思っていた。『ツチヤ学部長の弁明』(講談社)を読むまでは。
この本の冒頭にお茶大での講演会のもようが収録されているのだが、これがスゴイ。始まりなんか「土屋でございます。ものすごく緊張していまして、すごくあがっております。私の妻に釈明するときみたいに(笑)」なんだから。自分が所属する大学での講演ですぜ。
そもそもこの講演はお茶大の魅力について語っているものなのだが、とにかく笑いのため練り上げたような話でしかない。しかも文春での連載と同様、実際に同僚の先生で笑いを取っているのだ。
「皆さんあそこにいらっしゃる人が平野先生です。今この大学の人間文化研究科の科長をしておられまして、僕はエッセイの中で僕が博多人形だとすると平野先生は金剛力士像だというふうに(笑)書きましたけれども、ご覧になって納得していただけると思います。(笑、拍手)」
ちなみにこの文章には「金剛力士像」の写真まで載ってた! 編集者が言い出したのが、著者が言い出したのかは知らないが、かなりの英断だと思う。まあ、ここまで笑いにしているのに本人が講演会場まで来ているのだから、逆に人間関係はしっかりと築かれているのだろう。そう考えると学部長に就任したのも頷けないこともない。
いずれにしても、この本のおかげですっかり私も土屋ファンになってしまった。ノンフィクションを書けば「あとがき」で格好を付けすぎ、笑いを取ろうと面白い文章を書こうとすれば偽悪的になっちゃう自分としては……。
ならば土屋先生とお友達になりたいかといえば、これはイヤかも。
昔、女友達に「男の好きな『天然』はけっこう計算高い人。ホンモノの『天然』はかわいくても男なんて寄りつかないからね」と言われたのを思い出した。
手に負えるぐらいに演じてくれた方がいいんですよ。自分、小市民ですから。だから「天然系」の女性に騙されるんだろうな……、うん。(大畑)
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