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2006年11月12日 (日)

日曜ミニコミ誌! タイポグラフィの変遷と技術をたどる/『文字百景』

Moji  タイポグラフィという言葉をご存知だろうか。大雑把に言えば、印刷物において文字・活字を効果的に配置し、体裁を整える技術ということになる。現在ではデザイン的な要素も含まれた意味を持つ傾向があるようだ。
 文字を効果的に配列する、といきなり言われても何のことだか分からない人もいるだろうが、印刷物には目的に即した文字の組み方が求められている。
 例えば、絵本に文字をギュウギュウに詰めることはない。それぞれの印刷物には伝達に適した文字の組み方があるが、その実現のためには書体、文字の大きさ、字間(字と字の間)、字数、行間(行と行の間)、行数、またはスペースなどの要素がうまくコントロールされていなければならないのだ。

 今回の紹介する『文字百景』は、そんなタイポグラフィに関する知識とエピソードがグワッと濃縮された小冊子である。
 発行元である朗文堂(http://www.ops.dti.ne.jp/~robundo/)の根岸さんによれば、10年ほど前にデザイナーたちとタイポグラフィに関する勉強会を開いたとき、せっかくだからその場で共有された知識をもっと多くの人に知ってもらおうじゃないか、という流れで形になったのが『文字百景』だという。
 私の手元にあるNo.47では、1400年代にイタリアで活躍し、書物に初めてイタリック体を用いたアルダス・マヌティウスという印刷者を取り上げている。タイポグラフィに関してはもちろんだが、当時の時代背景なども取り上げられており、文章の構成にものすごく深みがあっておもしろい。

Moji2  もちろん、タイポグラフィに関する内容だから、全体的なレイアウトもちょっと洒落たものになっている。通常の出版物ならば小口(本を開いたときの手前の部分)にあるノンブル(ページ数を表す数字)がノド(小口と逆の奥の部分)にあり、本文の下に少し多めのマージンを取ってある。

『文字百景』は、「とりあえず100号まで出そう」という創刊当初の予定通り、No.100で完結した。今、書店で手に入れることができるのは池袋のジュンク堂書店のみだが、朗文堂に問い合わせれば、全号ではないが在庫はあるそうだ。また、『文字百景』の続編的な存在である『ヴィネット』が刊行されている。

 さて、朗文堂では9年前から「新宿私塾」というタイポグラフィ・スクールを開いているが、これが盛況なのだそうだ。
 1クール半年、週1回(3時間)、定員が10人。30万円というけっこう高い授業料にかかわらず、常に満員。学習の内容は、タイポグラフィの基礎、組版・デザインの基礎などを経て最後にはオリジナル作品の制作にあたる。基礎的な内容を扱っているのだが、実は出版社で働いている人などが多いという。
 根岸さんによると、より高度な専門技術の獲得のために、かなりしっかりした指導が行われるという。(お金があったら通ってみたいものだ)
 DTP(Desk Top Publishing)の急速な普及は、誰にとってもお手軽な出版物の作成を可能にしたが、同時に組版の職人的技術も急速に忘れられようとしている。(昔の出版人は何十種類というフォントを覚えていたのである)
 若い出版社員は細部まで組版の知識を学ぶ必要もなく、「なんとなく」の感覚で印刷物が作れるようになった。ただ、「なんとなく」は作れるが、理論的な本文の組み方や意図のある組み方からは遠ざかってしまった。そんな危機感が、このスクールに足を運ばせる部分もあるのだろう。(宮崎)

(■B6 27P 朗文堂)

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