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2006年10月 3日 (火)

和合秀典氏の逮捕とフリーウェイクラブの正当性および「大丈夫」

高速道路使用料無料化を訴えてきたフリーウェイクラブの和合秀典会長と私は因縁浅からぬなかである。彼の運動を全国紙やテレビなどの大マスコミに公然と紹介したのは私が多分最初だからだ。少し長くなるが当時の記事を引用しよう。タイトルは「首都高の値上げに抗議 500円通行運動始まる」である。

【以下本文】
 首都高速道路の料金が昨年九月、二〇%値上げされ六百円になったのに反発して埼玉県戸田市早瀬二の二三の九、金属加工会社社長、和合秀典さん(46)がこの四カ月間、旧料金の五百円通行を押し通している。首都高速道路公団は「法的措置を取る」と警告書を出したが、和合さんは応じるどころか、同志を募って五百円通行の輪を組織化、値上げを白紙に戻させようという運動を広げている。
 和合さんは従業員六人をかかえる企業主。九月の値上げでは、普通車五百円が六百円、大型車千円が千二百円になったが、値上げ初日の九月十日夜から五百円を固守している。この夜、乗用車で首都高池袋線・高島平料金所を通ろうとして徴収員に六百円を求められた。「渋滞も解決せずに一挙二〇%値上げは納得がいかない」と押し問答の末、自分の名刺を渡して五百円で通り抜けた。
 その後は「公団側の経営努力及び値上げに納得できる説明があるまで旧料金で通行します」との文書(コピー)をその都度、徴収員に手渡して五百円通行を続行。毎月二十回余利用するが、通行阻止などのトラブルはない。
 公団は二度、和合さんを説得したが、平行線。十二月五日、浅井新一郎理事長名で「(旧料金通行は)不法行為。正規料金を払わないときは法的措置をとる」という内容の警告書を送付した。
 和合さんは「円高不況で減量経営に苦労しているのに、公団は利用者にツケ回し。安易すぎる」と抵抗姿勢を強めた。道路法四九条の「道路の維持は、(公的な)道路管理者の負担とする」を根拠にこのほど知人の会社社長ら八人と旧料金で走る「フリーウェイクラブ」を結成、代表になった。
 同クラブの事務所は和合さんの自宅近くの工場内に置き、顧問の弁護士もつけた。
 同クラブは近く、五百円通行を宣言する会員証を作り、会員は自主的に旧料金通行に乗り出す。通行阻止などのトラブルは同クラブで受け、まとめて公団側にかけ合う。さらに「高速道の料金徴収は道路法に照らし不当」と、欧米並みのフリー通行実現をめざす集団訴訟を東京地裁に起こすことも検討している。
 斉藤直正・同公団広報課長は「和合さんに対しては、料金所ゲートを通さないなどの措置を早急に決めたい。値上げは所定の手続きを経たもので、その点を理解されないのは残念だ」と話している。(1988年1月4日毎日新聞東京夕刊社会面) 
【以上本文終わり】

和合さんは前年の9月11日、志村料金所で600円に通行料金が値上げされたのを知る。事務的な対応に怒った彼は名刺と旧料金の500円をわたして通過した。米国同時多発テロの14年前に和合さんの9.11は発生したのだ。
私は「旧料金で通る」という洒落っ気に惹かれた。100円値上げ分のサービス向上もなく深い詫びもなく当然のように請求する態度への怒りをもっともだと感じた。さらにいえば彼は中小企業経営主で首都高は自ら製品を運ぶ生命線でもあった。
父親の赤字会社を引き受けて苦心惨憺し当時の不景気で身を削る思いだった企業主の憤怒は知らせるべき情報だと強く信じた。自らも値上げ問題を抱える毎日新聞が駆け出し記者の記事をよくぞ掲載してくれたと驚いた覚えがある。デスクの奮闘には今でも感謝で一杯だ。
また運動の当初から一貫して実名と住所を明示し続けている潔さにも打たれた。

「値上げ分不払い」が無料化に転じた時点で正直いって「大丈夫か」と不安になった。前述の言葉でいえば洒落ではなくなるからだ。ただそれにも伏線はある。和合さんは運動開始の当初、首都高速道路公団(当時)の課長(同)から次のように言われているのだ。
「30年たったら無料になりますよ。それが5年後の1993年に来ます」
いぶかる和合さんの質問に対して課長はさらに「法律で決まっているから大丈夫です」と念押しした。

では1993年に無料になったか。答えはいわずもがなである。法律で決まっているのは本当か。本当だった。和合さんが「最後の1年は(通行料金を)10万円にしなければ」無理だと心配?したほどだ。
原点はここにある。法律で約束した契約を守ると役人は言う。それができなくなるとムニャムニャと反故にする。代わりにあれだこれだと立法措置を講じるが破られた側の怒りは忖度しない。どうせ従うさとのお上意識に加えて担当役人は次々代わって誰も責任を取らないとの体質がはびこる。
だったらこちらも「道路は原則としてただである」との定義を厳格に運用した行動に出てやれというのが確か無料化に転じた大きな動機であった。

和合さんの活動を批判するのはたやすい。「無料」にのみ利益を見出して活動の意義など二の次三の次の者まで仲間に加えていったことや堂々たる行動としながら一方で差し押さえなどの対抗策に手段を講じた点などが挙げられよう。
だが前者は小さな違いで目的は同じなのにいがみ合って雲散霧消するという市民活動の根源的問題を考える際に仕方のないリスクとも取れる。後者はまさに理念だけでは活動は持たないという現実的選択でもある。どちらがなくてもフリーウェイクラブは今日まで持たなかったであろう。

和合さんの活動は2004年の道路整備特別措置法改正で58条に「30万円以下の罰金に処する」と罰則が定められたのにともない警察の民事不介入原則でしのげなくなった。改正当初私は深刻にとらえたが世間は改正のカの字も話題にならなかった。そもそもこの法律は特別措置法すなわち時限立法のカテゴリーのはずなのに恒久化している。
和合さんをもって不払いの原点とするのも間違っている。彼が100円不払いを始めた時点で料金所を強行突破する者は少なくなかった。そのなかで和合さんは9.11で沸点に達するまで大人しいユーザーだったのだ。
今でも名前も名乗らずに料金所を抜けていく者は多数いる。そのなかで自分なりの大義を掲げているフリーウェイクラブの少なくとも和合さん自身と公団は公開討論などで闘えなかったか。裁判所での債務不存在訴訟では事実の一部しか明らかにできないのだから。

問題意識を持って払わず実名を徴収側に知らせている者に督促し、それが効かないならば法改正して刑事で挙げる。羊のように大人しくしたがっている者には無法者が縄付きになったぐらいの感覚であり下手すると「ざまあみろ」であろう。
だがちょっと待て。似たような蠢動はいくつもある。NHKは今月から簡裁を通した督促を始める予定である。国民年金だって社会保険庁の始末が済めばわからない。それでも効果がなければ警察が踏み込めるような環境を作る。いずれも「ざまあみろ」的世論の後押しがあればできそうだ。

しかし不払い活動の多くは各道路公団はもちろんのことNHKやら社保庁の不手際への怒りにある。その背景には道路という公共財への料金徴収、公共放送の意義、年金問題など制度の根幹に関わる不信が存在するのだ。これらへの異議申し立てを不払いという方法以外に劇的になせるであろうか。「ざまあみろ」との感情は本来制度の上にあぐらをかいてきた者へ浴びせるべきである。
私は羊だ。君は羊らしくない。だからオオカミに食われて当然だと開き直っているうちに羊の私が最後は食われる。食われているという自覚さえなく自ら特攻を志願する場合さえある国民性を我々は知っているはずだ。

それにしても和合さんへのあらゆるアクセスが通じない。大丈夫かあ和合さん!(編集長)

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コメント

なんだか「俺は正義だから何をしても許される」
という典型的なテロリストの理屈に聞こえます。
独善も大概にしたほうが良いのでは?しかも正義
であることの根拠が役人の口証文とは。法律につ
いては知りませんが、それが事実なら道路公団を
告訴すべきであり、ただ料金を払わないとうのは
運動の方向としては真逆でしょう。泥棒に対する
のに自分も泥棒になってどうする。

それから
>私は羊だ。君は羊らしくない。だからオオカミに
>食われて当然だと開き直っているうちに羊の私が
>最後は食われる。
の部分は意味が分かりません。羊は狼に食われるのが
私のイメージですが、羊でないものがまず食われるん
ですか?

>食われているという自覚さえなく自ら特攻を志願する
これはあまりに失礼なのではないでしょうか。高田
日明流に言えば「時間のカンニングペーパー」を使って
昔の人を好き勝手に評論するのは傲慢な精神構造だと
思います。

投稿: 国家の犬 | 2006年10月 4日 (水) 00時59分

和合さんの活動は私もTVで何度か見せて頂きました。和合さんの語り口調も穏やかで、権利の主張や理屈も感情的でなかったし、値上げ分のみを不払いとしていた時点では(私自身が青かったせいもあり?)共感出来ました。しかし無料化に転じたあたりから「義務を果たさない権利主張者」との違いが怪しく感じられるようになってきました。フリーウェイクラブの名を語って料金所をすり抜ける輩との区別がなくなり、反体制活動の様相を感じたのです。

文中にある、役人が言った「法律で約束した契約」とは具体的に何を指すのでしょうか?ちゃんと法律化されたのでしょうか?そして今もその法律が改定されず生きているのでしょうか?法律は法律で、約束でも契約でもありません。もちろん政治家の答弁や首都高速道路公団課長の口証文は法律ではありません。
私も「将来、高速は無料化する」と約束していた場面も前述のTVで見た覚えがあります(それが政治家だったか公団代表だったかは定かでないのですが)。しかし「騙された」「約束と違う」という怒りは理解出来ますが、ハッキリ言えば和合さんは負けたのです。残念ですが、その活動は実を結ばなかったのです。

民主的に行われた手続きによって法改正が成された以上、賃金の不払いは罰せられてしかるべきでしょう。年金未払いと同じで『やったもの勝ち(払わなかったもの勝ち)』がまかり通るなら、社会と言う共同体など不要ではありませんか。

制度への不信感、不手際への怒りは完全になくなる事はありません。それを疑問に思い、和合さんが政治家となり法改正に努力するか、署名活動などで世論を動かそうとするなら支持しますよ。でも今のままでは、私も「独善」だと言わざるを得ません。

投稿: やや右より?のベル | 2006年10月 4日 (水) 20時37分

国家の犬さん、広い視野を持つべきですね。やや右よりさんも理屈に基づいて批判しているのは分かりますよ。
でもその意識は何?批判すれば何かが解決するのか?
国家官僚の腐敗はそういうレベルの問題ではないし、自分の行動が売国奴の背中を押すことに少しでも気づけるのかな。もっとも確信犯のように感じますがね。

投稿: コダール | 2007年7月15日 (日) 01時15分

はじめまして!最近デコメつくりはじめたのでアルバムみにきてください☆
URL:http://creppy.jp/ual/sa

投稿: sa | 2007年7月30日 (月) 10時25分

“やや右より?のベル”さん
権利と義務は別個に存在するものです。
権利が付与されその代償として義務を果たす必要が生じるのではありません。
勘違いしないで下さい。
それこそ与党政治家と政府の思う壺ですよ。

投稿: AS | 2009年2月14日 (土) 11時50分

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