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2006年9月24日 (日)

日曜ミニコミ誌! 高尾山は壊させない!

Takao  今回は『高尾山の自然をまもる市民の会』の会報。ミニコミというメディアの本来的な役割を体現している小冊子だ。
 市民サイドのメディアとしてのミニコミが発展し始めたのは60年代。高度経済成長に伴う過剰な開発や公害、人権問題などを、既存のマスコミからではなく問題の渦中にいる人々が外に発信しようとしたのがミニコミの起源なのだ。そのあたりは平凡社から出ている『ミニコミ総目録』に詳しい。話題性のあるニュースしか取り上げない、また政府や行政の単なるスポークスマンと化してしまうことのあるマスコミへの不信がミニコミ誕生の大きな要因になったと『ミニコミ総目録』では分析されている。

『高尾山の自然をまもる市民の会』が発足したのは1988年。首都圏中央連絡自動車道(圏央道)の建設により高尾山や国史跡八王子城跡の自然が壊されてゆくことを知り、それに反対する地元住民約1000人以上が意を共にしたのだ。
 圏央道は東京の中心部から40~60キロの位置を、横浜厚木,八王子,川越,成田,木更津などを連絡する環状の道路だ。首都圏の渋滞緩和とそれに伴う経済効果が期待されての計画とのことだが、その設計に当たっては、圏央道が通る場所の住民たちの意向が全く汲み取られることがなかった。(高尾以外の地域でも道路建設反対の団体は多数ある。)
 1200種もの植物が育っている高尾山に、圏央道が走るためのトンネル工事のメスが入ったのは1998年。同会では学者との共同作業で入念な環境アセスメント(環境影響評価)を行なうなど、科学的な側面からも工事の影響を分析している。水脈の破壊、生態系の破壊などは容易に推察された。
 しかし、02年、東京地裁で圏央道の土地収用事業の認定取り消しを訴えるが、05年に事業は適法とされ敗訴となる。「御主殿の滝」が水枯れを起こすなど生態系への影響は誰が見ても明らかになってきていることについては現在「高尾天狗山裁判」で訴訟が行なわれている。

『高尾山の自然をまもる市民の会』事務局長の橋本良仁さんに聞いた。
「高尾山を守りたい、という気持ちももちろんあります。けど、自然を壊してまでこういう道路が本当に必要なんだろうかとか、住民の声を無視してあくまで計画をゴリ押ししようとする行政への怒りというか、それもあるんですよ」。
 これまでに訴訟はいくつか起こしてきたが、それに勝つことが最終目標ではないという。司法の力で工事を止めるのではなく、最終的に世論を動かして計画をやめさせるのが橋本さんの理想だ。
 会報は、会の発足と共に発行されるようになった。
 1988年、まだインターネットがなかった時代には紙媒体で会の情報を会員に伝え、情報を共有した。巨大な「市民の会」が一同に会することのできる集会は年に3、4回くらいしか開くことができないので、会報は意思の疎通に欠かせなかったのだ。そして、問題を知らない人たちに運動を伝える手段となった。
「7年ほど前からネットでホームページを公開するようになりました。何せ、かなりの情報量をのせることができますし、メールで双方向の伝達もできるし、なにかと便利です」。
 しかし、それで紙媒体の会報がお役御免となったわけでもない。
 運動を続ける人には高齢者も多く、誰もがネット環境にあるわけではない。彼らと情報を共有するのにはやはり紙媒体がいちばんいい。
 しかしそう考えると、これから何十年か後には、この会が発行しているような“情報の共有”に主な機能を求められたミニコミはなくなっているということになる。
 テキストのみであればメルマガ形式でじゅうぶん役割を果たすことができるし、ホームページに乗せておけばバックナンバーの閲覧も可能だ。時代が変わればツールも変わる、ということだろうか。(『高尾山の自然をまもる市民の会』のHPは“運動体”のイメージをいい意味で裏切ってくれるカッコよさである。http://www.naturetakao.com/

 さて、『高尾山の自然をまもる市民の会』はこれから社会を背負うことになる若年層にも運動を知ってもらおうと、ある集会を計画した。今年11月に新宿御苑で開かれるイベントでは小林武史や櫻井和寿、坂本龍一らが運営するap bank(http://www.apbank.jp/index2.html)を招くことがほぼ決定している。
 古くから人々に親しまれ、オオタカが舞う山が、10年後にどうなっているのか。『高尾山の自然をまもる市民の会』の戦いは続く。(宮崎)

(■A4 16P 月刊 80円 発行:『高尾山の自然をまもる市民の会』)

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