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2006年9月20日 (水)

チェチェンで本当に起こっている怖い話

Che チェチェン共和国という国をご存知だろうか。モスクワから南へ1500キロほどの距離にあり、カスピ海と黒海にはさまれた北コーカサス地方に位置する小さな国だ。チェチェンではチェチェン語が使われていて、国民のほとんどがイスラム教スンニ派の信者だという。
1991年12月のソ連の解体の直前、10月にチェチェンは独立を宣言。帝政ロシア時代から数世紀にわたってロシアと血で血を洗うような抗争を続けてきた歴史を持つチェチェンだが、この独立で、「お互いこれまでのことは忘れて、平和にやっていこうよ」ということには、もちろんならなかった。
1994年には当時のロシア大統領だったエリツィンが「ロシア連邦の一部であるチェチェン共和国での憲法秩序を回復させ」ることを名目として、軍をチェチェンに侵攻させる。第1次チェチェン戦争の始まりである。1年半でなんと10万人ものチェチェン人が死亡。そしてそのほとんどは民間人であると伝えられる。初代大統領のジョハル・ドゥダーエフもこの戦争で爆殺されている。首都グロズヌイをはじめ、インフラまでもが徹底的に破壊された。
96年には一時的に停戦が成立したものの、99年に再び第2次チェチェン戦争が始まり、現在に至る。
ソ連時代、89年に行なわれた人口統計では、チェチェンの人口は約100万人だったが、94年以降、少なくとも20万人以上が死亡し、今では正確な人口も把握できていない。
しかし、この惨劇の規模に比べ、日本を含め国際社会の関心は異常に低く、また高度に情報技術が発達した今日でもチェチェンに関係するニュースはほとんど入ってこない。
これはなぜか。
『チェチェンで何が起こっているのか』(林克明・大富亮/高文研)によると、チェチェンの情報は当然ロシアの検閲によってチェックされおり、発信すべき情報の取捨選択権はチェチェンにはない。ロシアがチェチェンに関するニュースを発信することはあるが、同じ出来事でも、ロシアから発信される内容と他のヨーロッパ諸国から発信される内容では大きな相の違いが出てくるという。
本書は95年から現地取材を続けるフリージャーナリストの林克明氏と、ロシアやヨーロッパの人権NGOや英語圏でのチェチェン情報を翻訳しEメールによる「チェチェンニュース」(http://chechennews.org/chn/index.htm)を発信している大富亮氏によって書かれている。記憶に新しい02年のモスクワ劇場占拠事件で人質となった当事者たちへの取材、焦土となってしまった国内の様子、現在のチェチェンのジャーナリズムがどうなっているのか、そして何より、なぜロシアがチェチェン独立を決して認めようとしないのかという最も重要な点についてもしっかり触れられている。

『記録』ではアゼルバイジャンの首都・バクーの難民キャンプで生活を送ることを余儀なくされているチェチェン人を支援する鍋元トミヨさんが『チェチェン・死と瓦礫を乗り越えて』を執筆している。報道で知る、マクロな政治力学の動きとしての各国家像というよりも、難民キャンプの生活の中で聞こえてくる、人々の生々しい(ときにユーモラスで笑える)言葉が聞えてくるような連載だ。(宮崎)

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