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2006年9月 6日 (水)

虐げられ続けた彼らの声を聞け

Koe 中村一成氏の『声を刻む ~在日無年金訴訟をめぐる人々』を再読。全体で約230ページ、そんなにボリュームがあるわけではないが、濃厚な内容と、唸る剛球的な力強い文体に張り合うため、こっちも思わず気合を入れる。それまで読んでた『ハチミツとクローバー』のフワフワした雰囲気が東京湾あたりまで吹っ飛んでいってしまった(『ハチミツと~』も面白かったが100:1ほどの重量差が)

戦前に日本によって植民地支配が行なわれ、日本人にとってのみ都合がいい“連帯”を強制された在日朝鮮人は、戦後一貫して「非国民」「あちら側の人」として扱われ続けた。現在も高齢の在日の人には年金が給付されていないケースがある。その状況を中村氏が丹念な取材で追っている。
1959年に成立した国民年金法は「国民皆年金」と謳われたが、その「国民」には在日朝鮮人は入れられることはなった。1981年、インドシナ難民の受け入れに消極的だった日本の態度が国際的に批判され、しぶしぶ国連の難民条約を批准することになった。難民条約には社会保障における内外人平等が定められている、要するに日本国籍を持っている人でなくても社会保障は適応されなければいけないこともあったから、ここでようやく外国籍者の国民年金の加入が認められたことになる。
しかし、日本政府は、その時点までで国民年金に加入できなかった人に対する“経過措置”をとらなかった。国民年金法成立以前の在日朝鮮人たちの権利を切り捨てたのである。

本書では在日朝鮮人がこれまで日本で辿らざるを得なかった歴史が、法律や部落形成の変遷などで実に詳細に追われている。そして年金が給付されない在日が多く存在する状況に対し、断固として異を唱え活動する人々の声を集めている。
中村氏は在日朝鮮人を「日本の近代史が、戦争と差別、植民地支配が生み出した歴史の生き証人」であるという。その彼らの話が、幼少の頃の生活の情景、日本への移住を決めたときの様子、日本での苦しい暮らしにわたって鮮明に聞き取られている。
04年、特定障害者給付金法案が成立した。同法は、国民年金が任意加入だった時期に、未加入のまま障害を負ったため障害基礎年金の支給を受けられなくなってしまった元学生や主婦に対して特別給付が可能になったものだったが、当然のようにこれには在日朝鮮人は含まれなかった。
過去の問題ではないのである。

『記録』に連載中の「『国民の歴史』の外で」は、部落に住む人たちとその場所・歴史を、中村氏の入念な取材と当人たちからの聞き取りによって書かれている。
魂のこもった連載である。ぜひ多くの人に読んでほしいところだ。(宮崎)

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コメント

宮崎様

 この本を読んでいない私が書くのもなんですが、エントリーを見て
いくつか感じたことを。

 まず第一に掛け金(というのでしょうか)を払っていない人が年金を
貰えないのは当然の話です。これは日本人でも同じです。在日韓国・
朝鮮人はもちろん払っていないのであって、何故年金をよこせと言える
のかその心が分からない。
 次に、こういった社会保障とは所属する国家が行うべきもので、北朝鮮
政府なり韓国政府なりが考えるべき問題でしょう(ところで海外在住の
日本人はどうしているんだろう)。問題は在日韓国・朝鮮人は本国から
大変冷たい扱いを受けているという点にあるのではないでしょうか。
北朝鮮に帰国した場合は監視対象となり、韓国に帰国すれば半日本人と
蔑まれる。選挙権もなければ徴兵もしてもらえない。
 それから難民条約についてですが、これはその名称から判断するに難民に
関する条約のようですが、在日韓国・朝鮮人は難民ではないので適用され
ないのは当たり前なのでは?
 また、例えばここ(http://www.asahi-net.or.jp/~fv2t-tjmt/daigojuunidai)
で述べられているように、韓国・朝鮮人自ら日本との同化を拒み、歩み寄りを
行なってこなかったのに今になって年金だけ寄越せとはいささか虫がよすぎる
のではないでしょうか。
 さらにいえば、中村氏のように「在日韓国・朝鮮人は弱者でかわいそうな
人たち」と感傷的にあおる日本人の存在が問題をさらにややこしくしている
ように思われてなりません。こういった日本人の負い目(感じる必要がある
のかどうかも怪しいものですが)をつつくというやり口はこれまではそれ
なりに有効でしたが、今後はかえって反発を招くばかりではないでしょうか
(これは同和問題にも言えると思います)。

 いずれにしても、参政権の問題にせよ、公務員への採用の問題にせよ、朝鮮
学校から大学への進学の問題にせよ、自分たちには日本人と同じ権利があると
思い込んでいることが問題の根っこにあるように思いますが、彼(女)らの
国籍というものへの意識がどうなっているのか、大変興味深いです。宮崎さん、
ひとつこの切り口で取材してみてはくださるまいか。

投稿: 国家の犬 | 2006年9月 7日 (木) 02時12分

国家の犬さんと同意見です。
帰化もせず、年金も払ってないのに受け取りたい。
どう考えても無理があるのではないでしょうか?
そもそも日本人以上に優遇しなければならない理由が
『彼らは虐げられ続けた弱者だから』では、同意出来ません。

すでに彼らには非課税・課金免除など
日本人以上の特権が与えらています。
(駅前に朝鮮系のパチンコ屋が多いのは
 相続税が免除されているからと指摘されています)

日本を忌み嫌い、日本人以上の特権をよこせと主張する。
そんな彼らは『虐げられ続けた弱者』ではないと思いますが、いかがですか?

投稿: やや右より?のベル | 2006年9月 7日 (木) 10時52分

まず、年金を納付していなのだから給付がされないのは当然、ということですけど、ここで焦点となっている無年金の在日の方たちには、国民年金に加入する権利も与えられなかった、ということがあります。(権利が与えられれば皆が払ったのかというのは別問題ですが)

1959年に国民年金法が施行されたとき、25年の加入期間を満たせない日本人については納付期間の短縮といった措置がとられたにも関わらず、在日にはなんの措置もとられなかった。
その時点でのことは譲ったとしても、今日に至るまで問題が据え置かれているのはおかしい。

>それから難民条約についてですが、これはその名称から判断するに難民に関する条約のようですが、在日韓国・朝鮮人は難民ではないので適用されないのは当たり前なのでは?

この点については書き方が悪かったですね。
要するに、難民条約を批准することによって、社会保障、ここでは国民年金においての国籍条項が撤廃されたことを言いたかったんです。難民であるかそうでないかではなく、国民年金加入の条件として、国籍の条件が問われなくなり日本人でも外国人でも国民年金には加入できるようになったということです。(というか強制加入なんでけどね。)


たしかに北朝鮮・韓国から冷たい扱いを受けているというのは事実なのかもしれませんが(そのあたりまでは調べてないのが正直なところ…)、だからといって日本が何の措置も取らなくていいということにはならないでしょう。
中には「勝手にやって来て住んで日本に“カネ払え”はおかしいだろ」的な在日に対する認識もあるけど、歴史的経緯を考えればそれはムチャクチャな暴論でしょう。

参政権などの問題についてはまだ何ともいえませんが、年金問題に関しては「特権をよこせ」という発想ではないでしょう。経過措置を取らなかったことが問題なので、そこから他の権利の拡張などを求めることはないと思われます。(パチンコ店の話は初耳…)

たしかに、国籍への意識については気になるところです。2世、3世と1世ではまるで考え方が違うこともありうるみたいですし。

投稿: 宮崎 | 2006年9月 8日 (金) 00時17分

丁寧にお答えいただき、在日韓国・朝鮮人に対し何らか
の形ですくいあげる必要があったのではないか、という
のが論点であると理解できました。これについて2点
述べさせていただきます。
1つに、私が当時の行政官だったとしたら、やはり在日
韓国・朝鮮人には手をつけなかっただろうと考えます。
その理由として、当時彼らは「我々は帰国する」という
意思を鮮明にしていたからです(民族教育を推進して
いたのもこれが理由)。年金を払ってもらっているうち
に彼らが帰国してしまったら日本としては貰いっぱなし
ということになり、それこそ社会正義に反するのでは
ないでしょうか。
2つめには、昨日も書きましたがやはり韓国人の面倒は
韓国政府が、朝鮮人の面倒は将軍様がみるというのが
本筋であり、日本政府がしゃしゃりでていく理屈は見
つからないと思います。
 判断に微妙な点があることは認めますが、日本と
しては決して「虐げ続け」てきたわけではなく、一定の
合理性のある政策だったのではないでしょうか。いず
れにせよ今となっては法に沿って粛々と司法の判断を
仰げばよいのであり、「在日は弱者であり、被害者で
あり故に正義」というような感傷論は有害無益では
ないでしょうか。中村氏のようなこういった焚き付け
方が昨今の嫌韓に結びついているというのは疑いよう
の無い事実であると思います。

あといくつか。
(難民条約について)
難民条約の批准によって、現在では日本在住の外国人
にも国民年金加入の義務が生じた、ということですね。
理解しました。
(パチンコ屋)
相続税については知りませんが、税金のとりまとめを
朝鮮総連が行っているため、脱税の温床になっていると
別冊宝島かなにかで読んだ覚えがあります。以前税務署
に勤める友人が、『パチンコ屋だけは金の出入りが全く
分からない』とこぼしていました。
(歴史的経緯)
私の認識は、在日韓国・朝鮮人とは日韓併合期に職
を求めて(不法渡航も含め)本土に渡ってきた人々
及び戦後、朝鮮戦争の混乱をさけて渡ってきた人々
である、というものです(余談ですが、朝鮮戦争から
逃げ出したため本国人からは良く思われていないと
いう側面もあるようです)。何故「勝手に・・・」が
ムチャクチャな暴論になるのでしょうか。

どうも乱文で申し訳ないです。わんわん。

投稿: 国家の犬 | 2006年9月 8日 (金) 02時42分

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