日曜ミニコミ誌! 宮崎県発・フォトマガジンで伝えたいこと
宮崎県発の季刊誌『日向時間』の表紙には「本当に大切なものって何だろう?」とある。この雑誌の本質を表している文言だと思う。(雑誌なのかミニコミなのか判然としないがこの際気にしないことに)地域のトピックを発信することがメインとなっているが、取り扱うテーマは限定されていない。創刊号は主に宮崎県の環境問題を取り上げているが、次に発行された号では戦争の体験談の特集が組まれているというようにだ。「フォトメッセージマガジン」と題されているだけあって、見開きいっぱいの青い海の写真をはじめほとんどのページがグラフィカルにレイアウトされている。
『日向時間』を立ち上げた藤木哲朗さん(30)に電話でお話を伺った。南国を思わせる大らかさをそこはかとなく感じさせる声だ。
藤木さんは雑誌づくりのノウハウを持っていたわけではなかったという。地元でアルバイトをしてときおり海外に旅に出る生活を送っていた。バヌアツ共和国のタナ島では電気もガスもない生活を2ヵ月間送ったこともある。
『日向時間』創刊号の特集では、地球温暖化による海面上昇により国の存続自体が危ぶまれている島国ツバルを生活感に満ちた写真の数々で伝えているが、これも藤木さんが訪れて撮ったものだ。
「いろんな国に行って多様な意見に出会うなかで、大切なものは何なんだろうってことをを考えてました。どんな場所でも、それは子どもの成長だったり、自然のある豊かな生活だったりするんですけど。それで、自分がいま住んでる宮崎という場所の豊かさなり直面している問題なりを発信しようと思ったんです。一番心配だったのは、自分の写真を雑誌に載せていいレベルにあるのかということ」。宮崎在住のプロの写真家・芥川仁氏に相談に行くと、「君の写真は心配せんでいい」。「いい編集長がいれば、いいものが出来る」。と、アドバイスしてもらいました。時には、一向に進まない状況を説明すると、「作るって決めたんなら、覚悟を持って作るんだよ!」「ぐだぐだ言ってたら一生かかってもできねぇぞ!」と説教されたりもしました。
なにはともあれ創刊することができた『日向時間』だが、見事な内容である。
世界のトップ・サーファーが絶賛した赤江浜に護岸工事が入り、「赤江浜を守る会」を中心とする市民と、成功の保証がない人工リーフ建設を推し進めようとする行政の対立を追った「宮崎の砂浜の行方」はかなり読ませる。
ここにも多くの写真が使われている。若い地元のサーファーたちが建設反対の活動を続ける様子などが撮影されているのだが、これらを見て「自分たちの場所を守ろうとする若い人たちがこんなにいるんだなぁ」と感心してしまった。
この様子を活字のみで伝えるのと写真入りで伝えるのではまったく意味合いが違ってくるように思える。活字のみの記事が影響力を持たないわけではないが、問題を知らない人たちに運動をアピールすることを考えたとき、写真というのはよりダイレクトにものごとを伝えるツールとなりうるからだ。
私は赤江浜という場所がサーファーたちの聖地になっていることも知らなかったし、そこに人工リーフなるものが建設されていることも知らなかったのだが、砂浜に巨大なクレーンをはじめ多くの重機が入っているの写真を見てやはりちょっとショックだった。
「実は、あれほど大きい規模の工事なのに、この問題は宮崎県内でもあまり報道されていないんです。宮崎日日新聞という地元の新聞もありますが、圧力があるからかあまり報じられない。中央のメディアは地方のことなんてなおさら報じないでしょう」
赤江浜の記事に関しては、盲目的に建設反対を謳うのではなく、人工リーフ建設の前例や建設の必要性にまでしっかり踏み込んでいる。
「日向時間」とは、しばしば時間にルーズな気質というどちらかというとネガティブな意味で使われることがあるそうだが、藤木さんは、『自然に寄り添って生きてきた
宮崎の生活のリズム・郷土の時間』だと定義づけている。その時間のなかで、「本当に大切なものは何か」ということを考えて生きていきたいという。宮崎から発信される『日向時間』これからの展開が楽しみな雑誌なのだ。(宮崎)
(■A4 68ページ 季刊 定価800円 発行:日向時間舎)
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コメント
この欄でJ.ARIIZUMIさんという方からJALに関するコメントがついたのですがブログのコメントの常識とみなされる長さを遙かに上回る文章量(約3万2000字)であり、かつ当欄記事との直接性も薄いと判断して削除しました。
J.ARIIZUMIさん。ご主張を再びなさるならば
・他者のブログへのコメントという性格上許容される程度の分量を推し量る
・関連のある内容である
点をご留意下さい。そうでないと今後断りなしに削除します。よろしいですね。私とて削除のような行為はしたくないので。
なおJALからの圧力などいっさいないので念のため
投稿: 月刊「記録」編集長 | 2006年9月10日 (日) 03時25分