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2006年7月 2日 (日)

■日曜ミニコミ誌! 炎上するイラクからの便り

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新宿の模索舎でミニコミあさりをしていてこの冊子を見つけた。ちょっと目を通すつもりが、途中でやめることができなくなっていた。
「今週は2006年第1週目。‘6’を象徴するものといえば? 1時間電気が来て6時間来ないなんていうのは? それとも・・・2005年のガソリンより3倍高いガソリンを買うために6時間並ぶというのは? さもなくばこの地域で起こっている1日に平均6回の爆発は?」
2006年1月4日の書き出しである。書いているのはイラク・バグダッドに住む現在27歳の女性、もとコンピュータプログラマーのリバーベンド。
『イラク女性 リバーベンドの日記 2006年1月〜5月』(著者・リバーベンド 翻訳・細井明美)はリバーベンドが市民の側から見たイラクの現状を詳細に記したブログを翻訳したものだ(オリジナルは英語で書かれている)。ミニコミ誌、というよりは冊子だがこのさい細かいことは言いっこナシで。
内容がめちゃめちゃにリアル。ふだん報道で知ることのできるイラク情報は主に政治指導者の動向、もしくは「バクダッドのドコで爆発があった」といった類のものがほとんどだが、そこからは現地に住む人々の生活の様子、不安、考えていることなどは知ることができないのだ。その点、本書は100%「住民の声」による。
3月18日の日記。「3年たって電力状況はこれまで以上にひどい。治安状況はますます悪化した。国は、再び混沌のきわみにある信心深い民兵と狂信者によって導かれ、あらかじめ計画され、作られた混沌。学校、大学、仕事はあったりなかったり。2日間は仕事・学校に行き、残りの5日間は状況が良くなるのを待って家で待機する」。
電気がなく、ビルは崩れかかり、道路は破壊されている。そんな中での生活を親戚など身近な人々を中心に記しているが、それだけではなくリバーベンドが乏しいメディア環境の中から、人との会話の中からより多くの情報を得ようとする姿勢が文章からうかがえる。今年1月に国民議会選挙の結果が出てシーア派の「統一イラク連合」が第一党になった。この結果に驚くイラクの人々について彼女は「何を今さら驚いているのか」とため息をつく。「イランの影響を受けた聖職者は2003年から強い権力を持っていた。新生イラク治安部隊を創設する動きがあったとき、彼らの民兵は即座に内務省と国防省に組み入れられた」と選挙の結果が開票前から分かっていたことなどについて書く。

2月11日の記述、リバーベンドが訪れていたおばの家が米軍とイラク軍の共同部隊による深夜の家宅捜索を受けたくだりは圧巻。
「……一人の男は私たちにカラシニコフを向けて立っていて、もう一人がキャビネットを開け、ドアの後ろでチェックし始めた……」
イラクの現状をより深く知るためにぜひ多くの読んで欲しい一冊だ。
翻訳にあたった細井明美さんがリバーベンドのブログを知ったのは2003年の11月(ブログ自体は同年8月に開始)。まだブログというツール自体が知られていなかったころだが、細井さんの友人がはじめに見つけ、「ねえ、これホントにイラクの人が書いてるのかな?」と持ちかけてきた。興味を持った細井さんはすぐさま「リバーベンド・プロジェクト」という翻訳チームを結成し、2004年1月からウェブサイト上で公開し始めた。2004年7月に出版社アートンより『バグダッド・バーニング イラク女性の占領下日記』として出版されるが、諸事情によりその後出版はされなかった。今回紹介した『リバーベンドの日記』は細井さん自信が翻訳し、ブログで公開してきた内容を冊子にまとめたものだ。
『リバーベンドの日記』は書店では模索舎でしか手に入れることができない。(細井さんのHPから注文することはできます。300円という低価格!
http://blogs.dion.ne.jp/hope/)細井さんはジャーナリストの松井やよりさんの秘書をしていたことがあるが、現在も講演を受け持ち、高遠菜穂子さんの集会などに参加し精力的に活動中。イラク関係の集会で置くと『リバーベンドの日記』はたいてい売り切れになるそうだ。「日本の人たちはもしかするとイラク=テロ国家だと思ってるかもしれない。少しでも現実を知ってもらいたくて冊子を発行した」という。
炎上する国からのリバーベンドの便りだが、実は今年6月10日から3年近く続いていたブログが更新されないままになっている。これについて細井さんは「リバーベンドはスンニ派です。立場が悪いスンニ派で身の危険を感じ、少しでもお金がある人の中にはヨルダンやモロッコに脱出する場合もあるようです。もしかしたら彼女もそうじゃないかしら」と推測する。
「バグダッド」はもともと「平安の都」という意味を持つ。この首都が平安を取り戻すのはいつになるのか? なお、リバーベンドのブログは2005年にルポルタージュ文学賞ユリシーズ賞3位、2006年にはサミュエル・ジョンソン賞にノミネートされている。Don’t
miss it!!(宮崎)

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コメント

訳者が松井やよりの秘書だという時点で「こりゃ
だめだ」という気持ちで一杯です。まあリバーベンド
氏も悪い人間に目を付けられたということなので
しょうか

投稿: | 2006年7月 6日 (木) 23時25分

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