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2006年7月 6日 (木)

版元が訴える「在庫免税」の正当性

返品。

ふふふ。私はこのブログをかなりの御同業が読んでいると知っている。であれば冒頭の一行というか一言を見ただけで慌ててアクセスを止すか、止す前に吐き気を催すか、もう吐いてしまったバカヤロウという人が多数いるのもわかっている。それほど御同業にとって大嫌いな言葉なのだ。同業だからそうと私が知るは当然だ。
返品のヤマを倉庫で見上げる。驚くほどの高さである。もしかしたら刷り部数よりも多いのではないかと疑うほどだ。

問題はこれが資産だということだ。
資産であってほしいとは願う。皆が皆やっとの思いで世に送り出した私にとっては子どものような大切な作品ばかりだから。だがほとんど動かない作品も残念ながらある。
ふぐ料理チェーン店「下関ふぐ」はピクピク動くトラフグが売りだが当方はモノによってはピクリとも動かない。すると「これは資産ではなくゴミではないか」と悩まざるを得なくなる。いや借り倉庫代がかかっているわけであるからもしや負債かとまで思い詰める。
あれほど頑張って送り出したのにヤマを作るとは何ごとだと最後は叫びたくなる。火を付けてやろうとすら怒るが愚の骨頂極まるからやらない。かわいいはずの我が子を虐待する親の心がわかったような気に勝手になる。
お金を払って下さる神様である取次様からの計算書に「書籍清算後返品」という種目がある。マイナスのお支払いというあってはならない概念だ。考えてみれば「書籍清算後返品」という日本語も本来はあってはならないはずである。だがある。書店様および取次様が精一杯をしてくれた結果であるから甘受するしかない。

やっぱり資産とは言えんわなあと落とす肩を叩いて励ましてくれる存在が1つだけある。税務署だ。「もちろん資産です」と断固として主張し税務調査の際には舐めるように調べていってくれた。でもなあ。唯一励ましてくれるのが税務署では・・・・。
「太鼓判を捺す」という表現は「確実な保証」を意味し税務署がいうならば税務上資産であるのは確実であろうが「太鼓判」という言葉に秘められた安心感とかポジティブなイメージがまるで感じられない。何ていうか。税務署の保証は「太鼓判を逆さに捺す」って感じかなあ。

だったら廃棄すればいいのである。事実として泣く泣く廃棄している。でないとばく大な資産の持ち主になってしまうから。妙な悩みだが事態は切実である。
ただここからが重要なのだが、なかにはピクリぐらいは動く商品や時機至れば再出撃可能な、少なくともそんな気がする商品があるにはあるのである。年にわずかでもその本を読みたいという人がいるのに、かもしれないのに廃棄して版元の面目は立つであろうか。
いったん廃棄してブームが来れば再刊すればいいじゃんとの助言もあろうが事は簡単ではない。例えば最近になって急に『オシム語録』が売れ出して版元はうれしい悲鳴という。でも大喜びして大増刷した頃に「オシム急な辞意表明」なんてニュースが流れたらどうなるか。寄せては返す波どころか津波となって返品が来る。ブームとは常にそうした危険をはらむから大版元でない限り決心するのは骨が折れる。まして小社の如き零細版元においてをや。

長々と書いてきたが私が是非提案したいのは返品などの書籍在庫は一定割合「資産」とみなさない税制改革をしてほしいということだ。これでも文化財として国会図書館に納めているのだ。売上はもちろん計上する。
でないと良い内容ではあるが細々としか出ていかない本は片端から廃棄されていく。現に廃棄されている。小社の内情を申し上げているのではなくあらゆる版元がいまやそうせざるを得ない状況に追い込まれているのだ。
改造社が円本ブームを巻き起こして以来、日本では「本は廉価で買って読む」文化が定着した。それが風前の灯火になっている。何とかしてくれと叫んでも本を読まないことで有名らしい彼の首相には聞こえまい。つくづくヤな奴(編集長)

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コメント

なんだか今回はかわいい小泉批判ですね。私は
小泉首相はもうこれ以上中朝韓に土下座し続ける
必要はないんだという誇りを取り戻してくれた
時点で戦後最高の宰相だと思っています。

投稿: | 2006年7月 6日 (木) 23時20分

諸悪の根源は再販制度の維持と、寡占・排他的な配本体勢にあるのではないでしょうか?
「お金を払って下さる神様である取次様」との編集長らしからぬ謙った物言いが、出版業界のタブーへ対する憤りと感じるのは穿った見方でしょうか?

追伸:前コメントに意見するのは筋違いかも知れませんが、私には小泉政権が明らかにしたものは、日本が一度として中韓に土下座した事は無く、これからも謝罪するつもりは無いと明言したものとしか考えられません。

投稿: 国粋主義者? | 2006年7月 8日 (土) 05時40分

もしかして・・最近、税調が入ったのでしょうか?
確かに税務上では、その商品がたとえ返品のものであったとしても、
在庫を抱えるという面から棚卸資産の1つとなりますよね。
書籍在庫は一定割合「資産」とみなさない税制改革をということですが、
「書籍のみ」と限定するとそれはちょっと難しいかもしれませんね。
商売をする上では、どんな業種でも必ず「在庫」が発生いたします。
確かに原価が高い・安いはあると思いますが・・
あと、一定割合とは、どのくらいのレベルをおっしゃっているのでしょうか?
私なんかよりよくご存知かもしれませんが、日本は税制改革に対して
腰が重いですよね。
納税とは、本来、読んで字のごとく「税金を納める」ということですが、
最近は、「税金を取られる」って言う人が多いです。
そう思われちゃう世の中自体が問題なのかも?と私個人としては思います。

追伸:私の上司、ニフティと富士通の監査役なんです。
   より一層のサービスと品質向上をお願いします!と
   よく言って聞かせたので、今後はメンテの数が減るかと思います。
   (ちょっと自信ないですが(笑))
   宮崎さん、駅名シリーズ「大泉学園」が一番面白かったです♪

投稿: 青山三保 | 2006年7月15日 (土) 23時11分

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