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2006年7月 1日 (土)

『私は偽悪者』・山崎の独白を聴く

Gi 戦後・混乱を極める東京で一瞬の輝きを放った光クラブ社長・山崎晃嗣の独白で綴られる『私は偽悪者』(山崎晃嗣著/牧野出版)。まず驚くのは、山崎が中野区鍋横マーケットに光クラブの看板を掲げてから自殺までの期間がわずか1年と1ヵ月という事実である。
しかも事業立ち上げの直前には中野の財務協会で10万円を騙し取られる、いわば「カモ側」だった。
はじめから光クラブの成功を確信していた山崎ではなかったが、最初の客が訪れた後どんどん運転資金が膨んでゆく。店を訪れた客に金を置いてもらうためのやりとりが記されているが、これがおもしろい。相手の口上に乗ってやり、相手の信用を得ながら金を引き出す。
「人を疑る人ほど、私にいわせれば騙しやすい」との山崎の弁に思わずドキリとしてしまうのだが、資金がみるみる集まっていったのは営業力がずば抜けていたからだけではない。私企業に対する政府支払いの遅延といった時流的な影響もあり、光クラブは設立から2ヵ月で運転資金を約600倍にまで膨らませたのだ。
一見、中野の財務協会で10万円を騙し取られたことが山崎を駆り立てたように取れるが、戦中に所属していた部隊での食料隠匿の際に仲間に裏切られたこと、また学徒兵時代に友人が私的制裁によって死に、その事件が訓練中の事故とでっち上げられ、葬られた経験などを経て、徐々に「義理人情などもう信じない」という姿勢が形作られた可能性はあるだろう。
時流に乗り切った虚業の勢いは十分に感じられるのだが、光クラブを共に作り上げた三木、久野、鳥田たちとのやり取りが詳細に描かれていない点は残念。例えば創業当初からのパートナーである三木は、光クラブが大蔵省に目をつけられたときどんな態度を取ったのか、その態度に対して山崎はどんな反応を示したのか。気になるところではある。

本書は一人称形態が取られているが、「人より数学を信用せよ」「女は道具だ」といった内容が山崎の本心をダイレクトに写しているのならば、そこまで徹底した意思の持ち主である山崎が自殺に至るまでの心の在りようについて興味を抱いてしまうのである。(宮崎)

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