日曜ミニコミ誌! ここが最前線・デモ活動者たち
以前、『記録』でミニコミ誌業界の特集を組んだときに、まだまだ新しいミニコミ誌が生まれてきていることを実感した。
といっても、大手出版社が創刊する雑誌のように「ミニコミ『○○』創刊!」といった広告が打たれることは100%ないので、ミニコミ誌が産声を上げても自分で見つけるか、あるいは人に聞くしか存在を知るすべはないのである。
当然と言えば当然だが、ミニコミ誌を多く扱う書店の店員さんは、そのへんには詳しい。
店員さんにいろいろ話を聞くと、やはりミニコミを発行するような人にはヘンな人が多いんだなぁ、と思う。突然見たこともない人が入ってきて「これ、絶対面白いですから!」と自慢のミニコミをドン!と置いていく。納品書もなにもなし、そしてもう2度とやって来ない。私はそのエピソードを聞いて、それは幽霊ではないのだろうかと思ったがどうだろう。
話がそれました。何が言いたかったのかというと、店員さんに聞けばミニコミ情報がいろいろ聞けますよ、ということだ。特集記事で紹介するため、05年、06年にできたばかりの新しいものを探していた。例によって新宿の模索舎で。「最近創刊されたものはありますか?」と聞くと、「例えばコレとか、」と店員さんが手に取ったのが『抵抗者』だった。
表紙に「【小特集】戦争国家との拮抗線」とある。買って読んでみるとかなり気合の入った内容だった。
「私たちの日常が、この戦争を支えている。にもかかわらず、反戦運動の停滞は誰の目にも明らかだ。どうすればこのような日常を揺るがすことができるのか。それは、2年前と同じやり方ではないだろう。」
『抵抗者』の執筆者たちの座談会中の文言が裏表紙に、大きな明朝のフォントで書かれてある。ここでいう「戦争」は言うまでもなくイラク戦争のことだ。
『抵抗者』の編集者に創刊のいきさつについて聞いた。自衛隊の海外派兵を阻止する活動をするうちに、なんとなく顔見知りができ、「海外派兵をやめろ!抵抗者の会」という集まりが結成された。それが2004年。『抵抗者』は「抵抗者の会」の活動を知ってもらうため、また活動の連帯のために作りはじめたそうだ。
編集に携わるのが20代の人たちだと聞いてちょっと驚いた。文章が軽やかなものでなく「浸潤」「盲動」「瞞着」という言葉がふんだんに使われている。なんとなく30代の人たちを想像していた。
創刊のきっかけがデモの連帯の強化という側面もあるだけに、デモに関する記事が多い。「靖国弾圧に直面して」という記事では05年の8月15日にある団体が靖国神社に抗議行動を起こしたところ、仲間が機動隊に取り押さえられ、そのまま警察署に連れて行かれた。そのことに対する抗議活動(こう書くとちょっとわかりづらいが)の顛末が書かれている。
『抵抗者』の誌面にたびたび登場するのは「ビラ」「逮捕」「占領反対」といった言葉だ。彼らがアメリカのイラク占領政策や「政府機関化」する靖国神社に対し、最前線に立って活動した記録として『抵抗者』はあるが、このミニコミの面白いところは(といっては失礼な部分なのだが)カラ元気で「活動が上手くいっているぞ」とは読者に訴えずに、「なんかうまくいってないぞ」というテーマで座談会(「私たちの『反戦』は、いま?」)が行なわれているのだ。
なぜ自分たちの活動が停滞気味なのか、そこまでを読者にさらけだし、そして自浄作用につなげようという意思はちょっとすごい。すべての記事を読もうとすると、こちらもそれなりの気合いが必要だ。牛丼でも食いながら読めるかというとちょっと難しいかもしれない。(宮崎)
(■A5 48P 定価400円 発行:海外派兵をやめろ!戦争抵抗者の会)
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コメント
「派遣」を恣意的に「派兵」と言う、自分の見たい物
を見たいようにしか見ないその姿勢が活動の停滞に
つながっているのではないかなと思います。読んで
ないので推測ですが。
ところで「反戦」と言う人を良く見かけますが、何が
何でも戦争に反対、というのと、何が何でも戦争で片
をつけろ、というのは同じくらい愚かな思想だと思い
ますがどうでしょうか。
投稿: 国家の犬 | 2006年7月24日 (月) 01時12分