日曜ミニコミ誌! ミニコミ界・ゆったり級チャンピオン
なんといってもまず全体的なデザインがすばらしい。今回紹介する『日々』3号の表紙は、色とりどりの卵をケースに並べたもの、ただそれだけといえばそれだけだが何とも言えず温かみのある色彩に思わず手にとってしまった。だいたいミニコミ誌なんてものはデザインをハナから度外視した活字ワサワサの濃厚な誌面がほとんどなので、それらが棚にいっせいに集まる場所からはなんか不吉なエナジーのようなものをイヤでも感じてしまうのだ。その中で、『日々』は紅一点ではないが、わさわさの中から飛び抜けてわーっと目に入ってきたのである。
女性的な柔らかさがページのいたるところから感じられる。余白をおしみなく使ったゆったりした誌面のデザイン、フォントの選び方と行間の取り方、アクセサリ的なニュアンスで度々登場するイラストの繊細さと質の高さ。なんというか、肩に力が入っていない。
『日々』のHPによると(HPのデザインもすばらしい http://www.iihibi.com/)編集者の高橋良枝さんは出版社で編集を経験し、フリーの編集&ライターを経て40代で仲間と共に『日々』を立ち上げた。
この号のアタマの記事は高橋さんと仕事で関わってきた料理家、飛田和緒さんの三浦半島での暮らしぶりを伝えるものだ。飛田さんは海辺の暮らしについて
「初夏に引っ越してきて、一番びっくりしたのは湿気の多さでしたね」
と語り、除湿器の重要性、東京に比べて虫が出てくるが慣れたことなど話す。読んでいて感じたのは、まるで友人と食事を共にしながら話し合うようなテンションが『日々』の全体を流れていることだ。強烈なメッセージがあるわけではない。というより、何かを伝えることを目的としているわけではなく、休日の過ごし方の「地図」のような役割を果たすのにピッタリの雑誌ではないだろうかと思う。
三浦半島は佐島漁港の鮮魚屋を紹介するあたりはまさにそんな感じ。特別な情報が書かれているわけではない。だが「これは今日の魚ではないよ」と教えてくれる魚屋さんのエピソード、漁港のステキな写真を眺めていると、この地域に住む人たちの暮らしぶりがぼーんやりとではあるが浮かび上がってくる。
(■B5変型版 40P 定価735円 株式会社アトリエ・ヴィ)(宮崎)
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