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2006年6月 7日 (水)

これが現場だ! 舞台の裏側をエグるブックガイド

Kyo 組織の中枢にいた者にしか書けないものがある。どんなに外から取材したとしても、組織ナンバー4として政策委員長を務めた著者の、共産党バクロ本と言っても過言ではない本書『日本共産党』(筆坂秀世・新潮社)のあまりにもリアルな幹部間のやり取りは描くことができない。
1955年に結党・再統合された自民党・社会党(現社民党)を遥かにしのぐ84年の歴史(1922年創立)を持つ共産党だが、内情はがんじがらめの党内序列と立ち行かなくなりつつある財政、ハリボテもいいところの言説が満場の拍手をもって迎えられる世にもいびつな組織だった。
共産党を離党する前は決して許されなかっただろう、実質トップの座である不破哲三への批判は驚くほど痛烈。「野党外交」を技とする不破氏に対し、
「まるで日本共産党の新綱領が世界の公理になったかのような文脈で書かれているが、世界の公理を綱領に書き込んだだけのことである。何でも自分たちに都合よく解釈するというのは共産党の得意技であるが、「野党外交」はその極致と言えるかもしれない。」と斬りつける。
幹部だけでなく、「赤旗」を何部も買い込まざるをえない党員の苦境、鉄の規則の嘘実に焦点を当て、06年現在の日本共産党の姿を浮き彫りにしている。

He やっぱり面白いなぁ。『「噂の眞相」25年戦記』(集英社新書)の続編のような『編集長を出せ! ~「噂の眞相」クレーム対応の舞台裏』(岡留安則・ソフトバンク新書)にも、文字通り舞台裏事情が山積みだ。「黒字休刊」という羨ましくも腹立たしい休刊に踏み切るまでの25年間、実に実に様々な事件が。
「クレーム対応の舞台裏」部分はあるものの、やはり醍醐味は裏で起こっていたトラブルの数々。猪瀬直樹、渡辺淳一、川島なお美、右翼団体、同業者、様々な相手との攻防がここに収められている。新聞ばかり読んでちゃダメですよ、真相はまた別の場所にあるんですから。

Ama アマゾンの本ってすげェでかい倉庫があって、そこでバイトが必死に走り回って集めて送ってるんだぜ、ということをはじめて聞いたとき、私は、「んなアホな」と笑った。
本当だった。『アマゾン・ドット・コムの光と影』(横田増生・情報センター出版局)では著者が実際に物流センターのバイトとして、本やCDのピッキング作業を行っている。それまでにも数え切れないほどの物流センターを見てきた著者だったが、アマゾンの物流センターは他とは「どこかが違う」と感じる。それはいったいなにか。「たかが自給900円である。なぜこんなに(バイトたちが)懸命に働いているのだろう。」
そして著者は違和感の原因を知る。物流現場によくあるけだるい雰囲気が全くなかったのだ。そして担当者は言った。
「ここでは、1分間に3冊の本をピッキングしてもらうことになっています。できるだけ早く達成できるようにがんばってください。それとみなさんの作業はすべてコンピュータに記録させてもらいます。」
リストを受け取り、名前とパスワードを入力する。そして商品が保管されている場所に移動し、買い物カゴに入れる。この作業の繰り返し。一区切りついたと思った途端、コンピュータにこう表示された。「今回のスピード 1.2冊/分」。失格だ。物流センターを支配していたのは機械による徹底した人間の管理だった。働く人々の描写、日本におけるアマゾンという存在の特異さ、そしてなぜ日本でアマゾンが成功したのかを分析する。(宮崎)

※編集長追記

アップされた原稿を読んでこれ書いています。上記3冊はいずれも「ある視点」から見て面白いとはいえますが宮崎編集の文章だと「これが裏の真実じゃ!」と決めているようにも読めますよね。読めるんだよ宮崎!

といって書き直させるのも言論弾圧みたいで言論の自由原理主義者の私が何が悲しくて手前のブログで言論弾圧しなきゃならんのかとの理由により(ああ回りくどい)ママとします。その上で気高き読者諸賢には「ある視点」の紹介と読んでいただければ幸いです

念のため申し上げておきますが私は何かを恐れてこんなことを書いているのではありません。あえて恐れる理由があれば1冊の「ある視点」で全部がわかった気になっているような風に読める文章を書いて推奨する編集者が小社にいるというのを隠しておきたいということかな・・・・ってバラしてるじゃないかって? むむむ

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