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2006年6月 9日 (金)

2ちゃん系ブログ閉鎖と金儲けアレルギー

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 5月末から6月初旬にかけて、いくつもの人気ブログが相次いで閉鎖された。ネットの巨大掲示板である「2ちゃんねる」の傑作な文章や絵だけをまとめたブログだった。とにかく2ちゃんねるは掲示板の数が多い。また、面白いものほどレスが多くつき読めなくなってしまう。それだけにエキスだけを抽出したブログは人気だった。実際、わたしもいくつかのブログを回り、腹を抱えて笑っていた。

 で、何でこれらのブログが一斉に閉鎖されたのかだ。

 いろいろと七面倒臭い問題点はあげられている。主催者のインタビュー記事にむかついた、投稿した個人に著作権があるのに勝手に使用しているのが許せない、不正にカウントを稼いでいるブログがみつかったなどなど。しかし今回、かなりの多くの人が怒り、激しい抗議が吹き荒れたのは主催者が金を儲けているという点だった。一説には月300万円儲けていたとの話も。
 一度、ネット上で火がつけば、あとはいつものパターンだ。開設している掲示板に抗議が殺到し、個人情報がネット上に公開され、自宅まで押しかけるやからが現れ、こうしたリンチに耐えられなくなった主催者が掲示板を閉じる、と。こうしたネットのリンチについては絶対許せん思っているが、とりあえず今回の本題ではない。
 
 問題はなぜ2ちゃんねるの読者、というよりネットの「住民」が、金儲けに拒絶反応を示すかである。
 1つの大きなポイントは、ネットに公開された情報を公共財と考えている人が多いことだろう。
 ホームページ用の写真素材を扱っているサイトをのぞくと、「ネットで探したら無料に写真がなかったので、私が撮影して公開しました」というような記述に出会うことがある。金儲けにつながらなくとも手間暇をかけて無料公開すること自体、ネット空間では珍しいくない。
 ネットの黎明期、まだウィンドーズ98や2000が標準だった時代に、ネットの情報は消費するだけはダメだ、自分が発信して情報を提供してネット空間を豊かにしていこう、とよく言われていた。個人が情報を少しずつ無償で発信することで、企業や金儲けにも無縁な自由な空間が広がるという希望をネット空間は担っていたのだ。
 この試みは当初、非常にうまくいった。
 美味しいレストランを自腹で訪問して点数を付けたジバランは、評論家や出版社が店の評価に手心を加えているのではないかという疑惑を抱いていた人々に熱狂的に受け入れられた。金儲けのための紹介ではない、という視点が多くの信用を勝ち取ったといえる。
 また、7~8年前の大手広告代理店の営業マンは「ネット広告は単価が安くて代理店として扱えない」とこぼしていた。テレビやラジオのように流せるCMの拠点が限られていれば放送料も上がっていくが、拠点を誰でも作れるネット広告にうまみはないない。そう判断したのだろう。
 だが、時代は大きく変わった。すでに個人に情報発信を促す時代は過ぎさった。情報量は多くなりすぎ、その情報をどう検索できるかが大きな問題点となっているのだから。またアフリエイトなどで儲けている人も増えた。結果として、金儲けのために記事内容に手心が加えられているケースもあることだろう。

 つまり現状のネット空間は当初の希望と商業の論理が入り乱れ、どれが宣伝で、どいつが金儲けで、何が善意のサイトなのかを分からなくなっている。だからこそネットでは善意見まがう形、あるいは善意を利用した金儲けが嫌われる。
 しかし、そもそも善意でのネット運営はどこまで続くのだろうか? 例えば2ちゃんねるのまとめブログにアフリエイトを貼らないで、いつまで続けられるだろう? 1日に何度もサイトをチェックし必要な部分だけを抜き出し、面白い部分の色を変えてアップする。こんなことタダ働きで毎日やってたら死ぬぜ、マジで!
 
 かつてNGOや市民運動団体を小誌紙面で取り上げていたことがある。会の趣旨や運動を主催者に書いてもらったのだ。ある人は社会に怒り、ある人は弱者を助けようと必死になっていた。みんな立派な人だったと思う。でも、10年後に続いている団体は少なかった。活動すれば金もかかる。応援してくれる人はいても、現実はなかなか変わってくれない。結局、潤沢な資金を持つ団体が残っていった。

 私は極端な民営化論者ではないが、ネットで金儲けできる環境が重要だと感じている。多くの人が飽きずに継続的に情報を配信するためには、理想や支援、希望だけでは弱い。小さくとも商いに展開する必要があろう。
 事実、面白い書き込みで喝采を浴びた2ちゃんねるの投稿者も、ほとんどは消えていった。ただ2ちゃんねるによって年収1億とも報じられた主催者は2ちゃんの維持に全力を傾けている。その違いは小さくない。(大畑)

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