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2006年6月 1日 (木)

18歳で愛する彼をがんで失った女の子のその後

ブログで自分の体験を綴っている(http://takakoworld.blog66.fc2.com/)takakoさんから電話があったのはもう2ヶ月以上前のこと。私(編集長)が電話に出た。ちなみに小誌編集部への電話の多くは編集長が取る。なぜならば他の部員がいないことしばしばだからだ。何をやってるだか。
内容は本の売り込みだった。仕事柄多く受ける用件ではある。ともかく会って草稿があればみせてくれと申し入れ期日を決めて対面した。これもよくあること。

その本人はブログで写真を公開しているので見ていただければわかるが美しい31歳の女性だった。草稿にざっと目を通す。するとその内容が眼前にある楚々とした女性の告白なのかとにわかには信じがたいほど衝撃の連続だった。恋愛が縦軸に貫かれているのは変わらないが、ざっと述べると次のような話が出てくる

1)中学時代の反抗・シンナー依存
2)高校中退
2)18歳で大好きだった「彼氏」と両想いになってわずか数ヵ月で彼氏のがん発覚
3)がん闘病と空しく迎えた死
4)引きこもり
5)脅迫的な宗教の勧誘
6)新しい彼の覚せい剤使用
7)キャバクラでナンバーワン
8)結婚とセックスレスと離婚
9)レイプ
10)買い物依存症

これでも一部である。おおよそ15歳から約15年間に実際に出会ったジェットコースターのような内容に圧倒される。悲しかったりつらかったり腹立たしかったりの連続なのだが半面で家族愛、友人愛、姉妹愛がtakakoさんを支える温かい環境もまた存在するのである。

愛する人をティーンで失うなどいくつかの点で星野夏著『あおぞら』(ポプラ社刊)に似るが、星野さんと違ってtakakoさんは30歳を越えている。いわば『あおぞら』で紹介されたような体験を味わった女性が、その後どうなるのかを身をもって解説しているような面白さがある。
takakoさんは今、同じような体験をして苦しんでいる人のために自分も一緒に考えていきたいと活動している。指導や助言といった高みからの行為ではなく伴走者の役を望んでいる。そのためには実名、顔出しもいとわない。本を出版するのもその一環であり内容は個人情報を守るために自分以外の登場人物は仮名とするが他は事実のみを記載している。

さて出せるのか。私は自分のところで出してみたい。ただし草稿段階の原稿ではいうまでもなく読者に提供できないので大幅なリライトが必要だ。また現時点でtakakoさんは有名人ではないので、このままの状態で書店営業をしても、また取次様へのパターン配本に乗せても大した部数は出ないのが近年の常識である。ないしは返品のヤマとなろう。
したがって編集者としてできることは私の精一杯をするがtakakoさんへの一層の支持が不可欠であるというのが商人でもある私のいつわらざる心境である。「場合によっては自費出版もあり、ですか」と問うたらtakakoさんはうつむいてしまった。気の毒な質問であるのはわかっている。だが小社とて損を承知のボランティアはできない。

ともあれ気高き当ブログ読者様にお願いしたいのはtakakoさんのブログ(http://takakoworld.blog66.fc2.com/)を一度だけでもいいから訪ねていただいてコメントをつけるなり小社に感想をいただくなりをしていただけないか。

別の取材でわかったことだが現在この国ではtakakoさんが陥った状況にある若者は多数いるということだ。彼ら彼女らは無軌道とも感じられる言動で取材者である私でさえ驚かす。しかし心の内には悲しみや虚ろさを抱え込んでもいる。それが犯罪や自殺の導火線になるのもしばしばだ。正直を申せば若者の犯罪や自殺を調べているうちに上記のような状況が広く存在すると知ったのである。
そこには「地元」という濃密な環境がある。高校→大学→就職といったステップを踏み切れなかった若者がこぼれ落ちていく残酷な構図がある。若くしての病死や事故死もびっくりするほど多い。同じ境遇で恋愛という形で支え合おうと男女が身を寄り添っても「残酷な構図」が彼ら彼女らのナイーブな心のひだをかき乱して混乱を生じさせる。
失礼を承知でいえばそこに無理解や無知がしばしば見受けられるが、そうした若者は解決する糸口や方法を見出したり知ることもできない。そこに付け入る「大人」のあこぎが追い打ちをかけてくる。

小誌は「弱者・少数者の側に立つ」を編集方針としており、上記のような追いつめられている若者の実態も取り上げてきたつもりだがtakakoさんの草稿を読んで改めて見逃している弱者・少数者が悲しく固まっていると再認識した。大学進学を境に上京して以来、田舎とは没交渉。運よく就職を果たして後にドロップアウトしたものの好き勝手をやって生きてはいる私では見えない。ぜひ一読をお願いしたい。(編集長)

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コメント

とりあえずコチラにコメントさせて頂きます。

子育てに苦労する親の子供が、更にその無知・無理解を解消できないまま、孫世代を生む事になるというスパイラルを解く事が必要なのでしょうが、現時点において社会・行政組織はそれを出来ていないという状況の中、重要なのはその立場にいる人の中の、実態に気が付いた人の声をより大きくするという事が、まず重要なのではないかと感じました。

ブログも拝読してきました。本が出たら、是非読ませて頂きたいと思います。

投稿: taka | 2006年6月 2日 (金) 04時04分

編集長が本を小社から出したいといわれていますが、もう本は出版予定のようです、その食い違いはなぜなのですか。
 

投稿: 質問 | 2006年6月 8日 (木) 00時07分

わかりにくい書き方ですいません
私が出すといえば小社がつぶれない限り出します
だから「出版予定」ではあるのです
ただし本文にも述べたように
「大幅なリライト」「takakoさんへの一層の支持」
などが確認できないと出版予定ではあっても
部数、定価設定、発売日など具体的な行程表を作成できません
takakoさんはそれらをすべてクリアする意気込みで
ブログに綴っているのでしょう
私も心からそう願っているのですが
私の立場では現実の原稿と反響が手元にない限りは
「予定であっても具体化できない」状態にならざるを得ないのです
ブログを「訪ねていただいてコメントをつけるなり小社に感想をいただくなりをしていただけないか」と
本稿で呼びかけた所以でもあります

投稿: 月刊「記録」編集長 | 2006年6月 8日 (木) 01時22分

編集長のいった意味は十分理解しました。が、タカコ氏のブログの見解とやはり食い違っていますね。ということは、タカコ氏の一方的な個人的見解なのかな。
 11月にアストラからと言ってますから。食い違いにより問題化しなければいいと思います。

投稿: 質問者続き | 2006年6月 9日 (金) 11時40分

ご心配ありがとうございます
でも大丈夫です
編集者の日常業務範囲内なので

投稿: 月刊「記録」編集長 | 2006年6月 9日 (金) 20時03分

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