« カルガモ親子のお引越しはどうなった? | トップページ | 暇や! GW、なーんにもすることがない人のためのブックガイド »

2006年5月 2日 (火)

最初はグー、サイタマケン

4月24日付『毎日新聞』朝刊の一文には笑った。衆議院議員千葉7区補欠選挙で敗れた前埼玉県副知事の斎藤健候補を売り込むために武部勤幹事長が広めようとした「最初はグー、サイトウケン」に対して民主党が「最初はグー、サイタマケン」とやり返していたというのだ。
笑った後に実に効果的な方法だったのではないかとにわかに深刻となった。民主党候補が勝った数百票がこのワンフレーズで乗ったかもしれないというほどインパクトがあったかも。民主党にも知恵者がいるのだね。まさに「人なきところに人あり」だ。

東京都を囲む3県の県庁所在地にあるマスコミの支局・総局は「首都圏支局・総局」などと呼ばれて優秀な新人が配属される。私は優秀ではなかったが何かが間違って浦和(現さいたま)支局に配属になった。他に比べて重要度が高い支局とみなされている。
この3県は一般に時計回りに順位がついている。神奈川→埼玉→千葉の順に偉いと。この認識は当の住民にも根強くあるらしく千葉の選挙区で「最初はグー、サイタマケン」とやられたら「何を偉そうに」と反発されるのは目に見えている。そして3県ともに東京都にコンプレックスを持っている。

3県で最上位とされる神奈川県警は警視庁(東京都警察本部)への対抗心も露わである。こうした張り合いは埼玉県警や千葉県警には感じられない。どうせ桜田門にはかなわないさと諦観があるようなのだ。
例えばカナトクの存在が挙げられよう。戦前における最大級の言論封殺事件である横浜事件をでっちあげた神奈川県警察部特別高等警察課(カナトク)である。警視庁特別高等警察部に対するライバル心むき出しで、横浜事件もその功名心があおった結果といえよう。

警視庁の特高が激しく人権侵害をしているのに負けてなるかと「死なう団」事件の摘発もやったね。三国一郎司会で当時の団員はカナトクの拷問を以下のように証言している。

指と指の間に鉛筆をはさんで、これをギューッと曲げられたり、手の甲へ、タバコの火を付けられたり・・・・
陰部にもぐさをつけて、火をつけて、扇子であおぐ・・・・

4月25日に横浜地裁が県警保土ヶ谷署員が救護義務を怠ったと認めた「保土ヶ谷事件」のように神奈川県警が不祥事を起こすたびに隠蔽体質を指摘されるのも歪んだエリート意識とカナトク以来の暗い思想警察の名残があるからではないか。

その点、埼玉県警は悠長である。だが県政は神奈川への対抗心がなくもない。新都心とやらを現在のさいたま市に誘致しようと必死になったり、いやそれ以前にさいたま市を作ったのも神奈川県への対抗意識であろう。神奈川には政令指定都市が2つもあるのに埼玉にはない、とね。何しろ格下のはずの千葉県の県庁所在地が1992年からは政令指定都市になったわけで、埼玉県民には耐えられない屈辱であった。あれやこれやをくっつけて「さいたま市」が政令指定都市になったのは2003年。

タモリがダサイタマと名付けたのを埼玉県民はいまだ不快である。抵抗のシンボルとして「彩の国」なるキャンペーンを長らく張り続けているが全然浸透しない。都県境には埼玉側なのに東京都という飛び地があって十数世帯が住んでいる。私も取材したが彼らは絶対に埼玉県民になりたくないらしく、飛び地ゆえに不便になる住民サービスも構わない気配である。

そのダサイタマがチバラギと蔑むのが千葉である。この差別感は「国が違う」というところに発してないか。東京、埼玉、神奈川の一部は武蔵国であるに対して千葉は下総、上総、安房である。下総の北部から常陸にかけてが茨城県。つまり東京を取り巻く3県が一致結束して「あそこよりマシだ」と信じて疑わない北関東3県の一つである茨城と千葉は親戚じゃあねえかとの蔑みがチバラギに込められる。

だが実際問題として埼玉県春日部市と千葉県柏市に大きな違いがあるわけではない。なのに何で埼玉は千葉に偉そうにするのだ。新宿駅からならば埼玉の方が近いが東京駅からならば千葉だぞというのもあろう。こうした微差のナルシシズムは決定的な違いよりも嫉妬やいさかいの元になりやすい。埼玉県の副知事が何を偉そうな顔をして千葉で国会議員になるんだと反発されるのは当然である。(編集長)

|

« カルガモ親子のお引越しはどうなった? | トップページ | 暇や! GW、なーんにもすることがない人のためのブックガイド »

経済・政治・国際」カテゴリの記事

コメント

この記事へのコメントは終了しました。

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 最初はグー、サイタマケン:

« カルガモ親子のお引越しはどうなった? | トップページ | 暇や! GW、なーんにもすることがない人のためのブックガイド »