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2006年5月18日 (木)

5月病をぶっ飛ばせ! ウツウツを振り払うブックガイド

『きょうの猫村さん』で和むことはできるが、これからの季節に必要なのはなんてったって「元気」だ。
Hon まずは『本の雑誌血風録』(椎名誠・新潮文庫)。椎名が編集長だったあの型破りな『本の雑誌』誕生の様子を描いた文字通りの血風録。読書狂・目黒考二のほとんど個人的な読書レポートとして始まった『メグロ・ジャーナル』が、椎名やその仲間と共に雑誌として成長していく過程を生々しく描いている。『本の雑誌』創刊は1976年。出版が舞台の話なので、その頃の出版事情を知る手がかりとしても読める。1973年のオイルショックで紙が値上がりし、ハードカバー本が一気に高騰した時代的エピソードなども随所に。
手書きの誌面から活字組みされた紙面へ変わる。売り込みにいった書店にはじめて雑誌を置いてもらう。謝礼はカツドンのみという学生のアルバイトを雇って書店に届ける原始的、かつたくましい配本制度の開始。
「『本の雑誌』十号はエイヤッと一万部刷った。初めての一万部だったが、売れ行きはよかった。」
わずか20部足らずの『メグロ・ジャーナル』が荒々しく成長する様と椎名の昭和軽薄体が濃密に絡み合い、出版界に興味がなくとも一度読み出したら手放せない引力を持つ一冊。

To 太宰なのだ。『人間失格』『晩年』のイメージが強烈ゆえ、その他の作品も陰鬱なトーンであると、特に若い人たちにはそういう太宰像がすりこまれているかもしれない。しかしここで言わせていただきたい。『お伽草紙』を読んでから太宰を語れ、と。
「こぶとりじいさん」「浦島太郎」「かちかち山」「舌切りスズメ」という古典的な題材の4作品を太宰流に大胆にアレンジしたものが本書。「あ、鳴った。」という書き出しは印象的。
「こんどは、五歳の女の子が、もう壕から出ましょう、と主張しはじめる。これをなだめる唯一の手段は絵本だ。」
4つの話に入る前に、この作品が防空壕の中で、父親から子に聞かせるという設定であることを示している。しかし、子どもに聞かせるにはいささか奥が深く、含蓄に富んだ内容になっている。
『浦島太郎』を題材とした『浦島さん』では、竜宮の亀と浦島太郎の会話がおもしろい。
「なんだ、お前。こないだ助けてやった亀ではないか。(中略)また子供たちに見つかったら、どうする。こんどは、生きては帰られまい。」
「気取っていやがる。また捕まえられたら、また若旦那に買ってもらうつもりさ。心意気を買ってくんな。」
もちろん本当の面白さは、おとぎ話では語られなかった最も核心の部分に太宰が切り込んでいるところにある。どうして、竜宮の姫は開けてはいけない玉手箱など浦島に渡したのか。この部分に切り込んでいるのだ。
この至上のパロディに込められた想像力が、そして不気味なほどアッケラカンとして明るい太宰の語り口が、私たちに新しいドアを与えてくれるのである。(宮崎)

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コメント

わたしも「お伽草紙」を高く評価します。音声ブログのケロログに全編のよみの録音をしてますので、どうぞお聴きになってください。声にどのように表現されるか、日本でもめずらしい資料です。
http://www.voiceblog.jp/kotoba/car20.html

投稿: 渡辺知明 | 2006年5月18日 (木) 09時05分

>音声ブログのケロログに全編のよみの録音をしてますので、どうぞお聴きになってください。

さっそく、『瘤取り』と安吾『桜の森の満開の下』を読ませて、ではなく聞かせていただきました。思わず聞き入ってしまいました。
録音状態もこれ以上ないくらい良いものですね。ちょくちょく聞きに行かせていただきます。

投稿: 宮崎 | 2006年5月18日 (木) 12時47分

お聴きくださりありがとうございます。
また、ちょくちょくお出かけください。

投稿: 渡辺知明 | 2006年5月18日 (木) 20時22分

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受信: 2006年5月18日 (木) 22時10分

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