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2006年5月10日 (水)

ビジネスマン必読 いろんな「あちら側」

 知ってます? 「あちら側」と「こちら側」。
Web  現在のIT社会に何が起こり、今後どのように変わっていくのかを明確に示した『ウェブ進化論』(梅田望夫/ちくま新書)が売れている。この本で示された概念が「あちら側」と「こちら側」。簡単に言えばウェブがつくり出した世界が「あちら側」、リアルな社会が「こちら側」である。
 例えば、ウェブ上の大量の情報を検索によって仕分けできる道筋をつくりあげたグーグルは「あちら側」、リアル世界にソフトを売り込んだマイクロソフトは「こちら側」となる。

 この本は確かによく書けている。ITの進化がスッキリ分かる。そのうえキーワードになりそうな語句が散らばっており、ITの現在を説明したい人にとっても「使い勝手」がよい。これからITを話題にするときは『ウェブ進化論』の読了が前提になりそうなのだ。

 例えば「Web2.0の本質はオープンソースじゃないですか」とか、「ロングテール現象とマスのかかわりってどうなの?」なんて、普通に言われちゃうとかね。知ってしまえば難しくないが、語句の意味が分からないと話にならない。
 この本はそうした専門用語を理解するためだけにも読む必要がある。

 で、この本を読んでウェブの現状を知り、自分にできることが何なのかというと、これがなんもない。だって所有欲が根本にあったビル・ゲイツが「あちら側」に行けなかったというのだから、マイクロソフトの基本ソフトさえ使いこなせず、携帯でネットを見られない僕が「あちら側」に行けるはずがない。

 当分は「あちら側」と「こちら側」は融合しないらしい。リアルな社会だけに住んでいる「こちら側」の住民が気付かぬまま、大きな変化が進行していくことになるだろう。つまりワードを使えなかった中高年サラリーマンがリストラされたように、近い将来僕も社会の隅に捨て置かれるに違いない。

Photo_12  ならばIT以外の「あちら側」に行けないかと思いつき、目に留まったのが『フェチ楽園考』(いその・えいたろう/ちくま文庫)だった。全364ページ、フェティシズムにはまる当事者の重~い言葉のオンパレード。もちろん、かなりヘビーなフェチも網羅している。スカトロだとかアニマルとかになると、もう「あちら側」に足を踏み入れたくもないッス。

 でもフェチの王道「下着」ぐらいなら大丈夫かと思ったら、「(下着を)急速冷凍するとカチン、カチンに凍ってね。それをあとで解凍して嗅ぐのが、ぼくのエロスやなあ」って……。
 ムリ、やっぱりムリ。理解できません。

 ならば、せめてメガネフェチぐらいならとページを繰ったら「必ずメガネを必要としていなくてもメガネ越しはエロイぞ。町歩いてるおばあちゃんの、あの老眼鏡が。あれもわるくない。ソソる」
 スミマセンでしたっ! フェチの世界も深いです。とても「あちら側」には行けません。

Photo_13  それなら新興宗教はどんなもんだと、某信者を両親に持った18歳青年の自叙伝『「人を好きになってはいけない」といわれて』(大沼 安正/講談社)を手に取ってみた。しかし、これは悲惨過ぎ。アイデンティティーを形成する時期に「あちら側」の論理を押しつけられる恐怖をタップリ味わった。

 結局、3冊の「あちら側」解説本(?)で分かったことは、「あちら側」と「こちら側」の溝が思ったより深いことだ。簡単には橋などかからない。
 だが、そんな溝に橋をわたすのがライターの仕事なのかもしれない。自分の中にそっと抱えている「あちら側」をなだめつつ、静かに「こちら側」で生きている自分を少し反省した。(大畑)

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