写研に取材を申し込んだのだが
以前に何度か写研書体について当ブログに書き込んだ。日々の時事問題を書き連ねていてアクセスも当然ながら新しい書き込みに多いなかで、その記事だけは古びることなくアクセスされている。こういう点でアクセス解析というのは意味があるね。
そこでアクセスして下さる方への情報提供と私自身の興味と実益から06年4月10日、小誌は写研に電話で取材を申し込んだ。
質問の内容は「写植全盛期には他の追随を許さないほど発展した写研の書体だが、DTPに移行してからは、モリサワなどが対応しているにもかかわらず、写研は対応しないまま今日に至っている。DTPでも写研の書体を使いたいという声はあると思うが、いまだにDTPに移行しないのはなぜか聞きたい」ということだと取材の趣旨として伝えた。
電話で対応した女性が「少々お待ち下さい」というから5分くらい待った。その結果「社長が現在会議中なので、折り返し電話する」ということでいったん切る。
2日後の12日、電話がかかってきた。「取材などは方針として受けないようにしておりますので、今回は失礼させていただきます」とのこと。対面ではではなくせめて電話取材ならばどうかともちかけてもダメであった。
写研は不思議な会社である。帝国データバンクの情報にも入っていない。あれほどの会社だから帝国データや東京商工リサーチは対面取材を断られても決算書などから調べそうなものなのに。今回の取材拒否も不思議である。まず「取材などは方針として受けない」企業などあっていいのだろうか。零細ならばいざ知らず写真植字のリーディングカンパニーの言葉とは思えない。
「社長が現在会議中」というのも腑に落ちない。たかがいったら自虐になるが小誌ごときの取材の是非が社長を通さないと決まらないのであろうか。それともDTP関連の質問は社長以外は答えられないトップシークレットなのだろうか。
以上は写研という会社をくさして書いているのではない。むしろ逆で私は写研書体を偏愛していて使いたいのである。だから愛するあまりの質問なのだ。ならば旧来の方式で使えばいいだろうとなるのか。それだとDTPよりもコストがかかる。愛の代償に支払うコストということか。
もしかしてこの論理で写研を使い続けている人が今でもかなりいて、それゆえに写研はDTP化をせずにやっていけるということであるのか。聞きたいことはヤマほどあるが取材拒否ではどうしようもない。
写研コンバータを使うことも考えたがジャギーの問題などが大きすぎて出力してみないとわからない。しかもいかに高解像度のレーザープリンターといっても普通紙出力を版下にして商業印刷をする勇気はないから印画紙となるが今さら印画紙出力機を買うのは明らかに時代錯誤である。古手の組版屋さんが印画紙出力機を捨てたという話を一昨年に聞いてフーンそういう時代なんだと隔世の感にとらわれたほどである。だいたい今のパソコンのDTP環境とうまく連動させる自信がまったくない。
写研コンバータは著作権の侵害にならないかとの疑念もあるから使わない。コンバータ自体は写研が出しているものではないから写研書体そっくりの出力(という表現になろう)をした場合には著作権侵害で訴えられかねない。
民事の損害賠償請求となれば得べかりし利益論が問題となろうが書体こそ売れるか売れないかの根幹を握っているとの主張に立てば100%を請求することも可能だ。少なくとも私が原告ならばそのくらい吹っかけてやろうと思いつく。しかも被告があえてコンバータを使っているという事実は取りも直さず写研書体が必要不可欠と被告が考えていた何よりの証拠だという論法は説得力があるしね。
では外注といっても写研を扱う製版屋さんが激減している。以前から付き合っていた3社は3社とも止めてしまった。
ならば印刷屋さんに頼もうとしても「対応していない」との返事ばかり。大日本や凸版ならば何とかしてみせるのであろうが、この二大印刷企業はかゆいところまで手が届く素晴らしいサービスは提供してくれるものの対価が高い。一刻を争う雑誌コード付きの週刊誌や分厚い月刊誌ならばともかく単行本の世界で二大印刷企業に頼るのは少部数しか売る力のない我ら零細版元には荷が重すぎる。
書店で本を片端から開いて見ると写研の書体がみるみる減っているとわかる。ここ2・3年に顕著に感じる。もはや私のような偏愛者自体が編集の現場では少数派なのか。いやそれはあるまい。確かに若手には写研に何の愛情も感じないだろう。私が凸版に何も愛を感じないように。ただ写研世代の現役はまだ多数いるはずだし美意識も共有しているはずだ。結局はコストの問題および時間短縮の問題に行き着く。
今や中堅どころか大手まで内製化を進めている時代である。本文レイアウトのデザイナーは製版業を自動的に兼ねている。いやそれ以前に編集者が本文レイアウトのデザイナーになっている場合も多い。
写研様。なぜDTP化しないのか。理由だけでも教えて下さいよ。(編集長)
| 固定リンク
「文化・芸術」カテゴリの記事
- 画廊誕生100周年記念大賞展開催(2010.08.14)
- マイケルジャクソンは早死にだったのか(2009.07.15)
- 初笑い洋楽おバカなプロモーションビデオ(2009.01.14)
- マスコミ総崩れ(2008.12.10)
- キャロルキングの「マイ・リビングルーム」コンサート(2008.12.03)
この記事へのコメントは終了しました。


コメント
はげしく同感です。
私は写研オペレーターですが、会社はMacオペレーターの人員は補充しても、写研オペレーターの数を増やそうとはしないし・・・。このままでは、写研システムを扱える人間がいなくなり、写研のクオリティの高い書体や、組版システムも消えてしまうのでは、と心配しています。
投稿: qoo | 2006年4月30日 (日) 22時36分
コメントありがとうございました
写研の問題は5月4日に改めて書きます
qooさんのコメントも大きなきっかけです
よろしければご笑覧下さい
投稿: 月刊「記録」編集長 | 2006年5月 4日 (木) 00時06分