第2回 グレーゾーン金利
今年に入ってからニュースでよく見かける。しつこく「追い込み」をかけて借金を回収していたアイフルに対して、金融庁が全店舗に業務停止命令を出した最近の報道でも目にした単語だ。
なんだろうと思って調べてみると、これ自体はさして難しくはなかった。違反すれば罰則を科す出資法が定める上限の年利29.2%と、罰則規定のない利息制限法の上限15~20%(借りた金額によって3つに分かれる)の間にある金利だという。つまりお縄ちょうだいにはならないけれど法律には違反してるぞ、っていう金利だ。
じゃあ、どうして2つの法律ができたのかといえば、そもそも法律の性格が違ったのである。両法律が成立したのは1954年。出資法は戦後のヤミ金融を取り締まる目的で制定された。そのため当時の上限金利はなんと109.5%だった。一方、利息制限法は市民間のルールである「私法」に属する。分かりやすく言えば、個人間の争いが起こったときの基準になる法律なのだ。
そして1983年新たに貸金業規制法が制定される。「サラ金」が社会問題化し利用者を保護しようとの声に押されてできた法律だ。取立ての具体的な内容を盛り込むなど、貸金業への規制を全面に打ち出した法律とも評された。ただし、この法律には業界が納得する「アメ」が仕込まれていた。それが「みなし弁済規定」。
細かな決まりいくつかあるが、もっとも重要なのは借り手が任意で払うならグレーゾーン金利を認めるというルールだ。このみなし弁済規定によって消費者金融はますます発展していく。その裏で利用者が増え自殺者が増加するなど問題は深刻化していった。
そうしたなかグレーゾーン金利に対する裁判も増加し、司法が徐々に利用者保護へとかじをきっていく。そして今年1月、最高裁は「事実上の強制があった場合は、利息制限法の上限を超えた利息分の支払いは無効」との判断を下した。
そのうえ、この最高裁判決を受けた金融庁の「貸金業制度等に関する懇談会」は、出資法の上限金利を引き下げて金利の上限を利息制限法に数値に統一する方向でまとまった。
もちろん業界は大反対。木下盛好・アコム社長などは「金利を下げると(審査が厳しくなり)借りられない人が出てくる」と発言。結果としてヤミ金融に頼る人が多くなると主張した。
さて、ここで改めて考えみたい。
そもそもみなし弁済規定が定めるように「任意」で高い金利を選ぶ借り手がいるだろうか? 通常なら選ぶわけがない。選ぶとすればよほど尻に火がついたか、貸し手側がきちんと説明しないかのどちらかだ。
じつはもっと大きな問題がある。そもそも消費者金融の借金は返せるのかという疑問だ。50万円を借りて月々1万5000円ずつ返済する場合、出資法の上限金利29.2%なら利息が54万円にもなる。少しでも経済状況が悪化したら破綻してしまうだろう。
実際、破綻の兆候といえる多重債務者はかなりの勢いで増えている。国民生活センターへの多重債務の相談件数は年間6万件近い。ちなみに最高裁による個人の自己破産件数は約18万にのぼる。また同センター調査によれば多重債務者の6割が年収300万円未満だという。
大手消費者金融は先頃、利用者が計画的な返済ができるかどうかを自ら判断するためのチェックシートを無人契約機などに置く計画を発表したが、本当に返済能力をチェックしてもらいたいのだろうか? むしろ返せなくなるような人が「お得意様」ではないのか。
年収300万円では生活はカツカツだ。そこに借金が加われば家計は破綻寸前だ。ただし家族が払ってくれたり、追いつめられて他の金融機関で借りて返してくれれば企業は利益を確保できる。いうならば破綻を見越した金貸し同士の「ババ抜き」である。もちろん独自の「資金回収術」を持つヤミ金にババがまわることに、消費者金融業界が痛みを感じているはずもない。金利を下げればヤミ金に頼る人が増えるのではなく、ヤミ金に行く前に金を落とす人がいなくなる。それこそ業界が危惧しているものの正体だ。
金がなく尻に火がついた貧乏人を、みなし弁済という法の抜け穴に誘い込み金をむしり取る。ヤミ金融との違いを声高に主張しながら、行き着く先が結局ヤミ金だったりするのが恐ろしい。
ちなみにヤミ金以上に消費者金融と近い関係なのが銀行だ。三井住友はプロミスを、三菱東京UFJグループはアコム、みずほグループは武富士を傘下に収めている。筋の悪い客には銀行の客を消費者金融に回しているとの噂もある。
ゼロ金利と公的資金の導入で庶民からどんどん財産を搾り取った銀行が、消費者金融と手を組んで貧乏人を地の底に叩き落とそうとしている。
ヒデェ話だ!
銀行の連結決算の対象となる消費者金融に打撃を与えるグレーゾーン撤廃に、銀行側がどうやって反対に回るのかも監視する必要がありそうだ。(大畑)
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