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2006年4月29日 (土)

堀江貴文は山崎晃嗣か松永安左エ門か

「電力」といえば20世紀前半における最大のIT産業だった。その中心に君臨した事業家の松永安左エ門は34歳の時に贈賄容疑で逮捕され、未決勾留された。彼は最後まで容疑を認めなかった。

一方「光クラブ」の山崎晃嗣も逮捕容疑を徹底的に争い、起訴を免れているのは2月10日に記した通りだ。

堀江貴文被告が4月28日に保釈された。95日も拘置していたにもかかわらず初公判前の保釈だから「早期保釈」と報道するマスコミの鈍すぎる感性にはあきれてモノもいえないが、まあその点は28日に小誌・大畑も書いたことなのでいいとしよう。問題は今後の堀江被告の行く末である。

問題は今回取られた「公判前整理手続き」に基づく裁判の行方である。事前に検察側の立証方針と弁護側の意見書を裁判所が受け取っているために、いわば初公判で行われる主要部分を先取りしているために保釈も可能となったとされる。近々導入予定の裁判員制度に合わせた審理の迅速化の新基軸のようだが、だとしたら以下のような疑問が消えない。

おそらく初公判は検察・弁護人双方の冒頭陳述と裁判官による公判前整理手続きの説明となろう。だが整理手続きがどのようになされたのかはわからない。弁護人は堀江被告と十分に打ち合わせた上での意見書を提出しているはずだが(でないと筋が通らない)堀江被告はそもそも否認している。だいたい、こうした過程を明らかにするのが裁判公開の原則の趣旨ではなかったのか。

被告人否認のままでなされた整理手続きの手順に沿った迅速な裁判とはいかなる展開になるのか。被告人が裁判の席でこれまで話されなかった新事実を訴えたら整理手続きの内容を超えた審理ができるのか。できたとしたら論理的に奇妙である。といって、できなかったら裁判とはいえない。そこで待ってましたとばかりに検察側が対抗する証拠を出してきたとすれば、なぜ整理手続きの際にそれを隠していたのかが問題になる。

推定無罪の原則がどうなるかも知りたい。そりゃあ現時点で日本の裁判は推定無罪なぞ形がい化していると言い放ってしまえば身もフタもないわけだが、堀江被告の新事実や、それを裏付ける新証人がいたとしても公判前整理手続きとは文脈が違うと却下されないのか。どうも趣旨からいえば受け入れられないようである。ただでさえまかり通る暗黒司法にさらなる黒雲が覆うことになりはしないか。

・・・・などなどの問題点が初公判以降にドッと噴出したらどうなるだろうか。ムチャクチャのまま裁判の原則を無視した有罪判決が出れば暗黒司法極まれりとの批判は避けられないし、逆に新システムに基づく混乱で検察が公判を維持できなくなったらアッと驚く推定無罪に基づく判決が出るかもしれない。

もしかしたら堀江被告はこの辺の面白さをすでに感じているのかも。何しろ新しい仕組みには天才的な能力を発揮する人だからね。すき間を突くのも上手だし。だとしたらむしろ好ましい。実は私は公判前整理手続きを含む裁判員制度の運営自体に非常に深刻な懸念を持っている。その一端を明らかにしてくれたならば、そして取りやめも含む裁判員制度の改廃の一助となれば、堀江被告の罪よりも功績の方が大きいとさえ評価してもいいくらいだ。

ただし気になる点もある。保釈後に堀江被告が語ったとされる「自分は生き急いだのかな。拘置所生活はこれまでの人生をゆっくり振り返る機会になった」との言葉だ。これはどちらにも取れる。悪く取れば「光クラブ」の山崎のような「堀江貴文らしい結末」を彼自身が演出しかねない。周辺は彼の行動に目を光らせて決して自殺に走らせないようにしてほしい。彼はまだ死ぬにはおしい。

良く取れば身柄拘束を「いい経験だった」と回想した松永安左エ門のような心境だ。だったら裁判は堀江被告らしく勇敢に戦って、しかるべき日から再起を図るであろう。20代で命を絶った山崎ではなく100歳近くまで「鬼」と呼ばれた経済人だった松永になってほしい。もっとも、いずれにせよ平凡な結果だけは見たくない。それは堀江さん。あなたがすでに作ってしまった一種の期待感から来るのだから我慢してね。(編集長)

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