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2006年3月 8日 (水)

もうセンバツなんてやめようよ

北海道の駒大苫小牧高校が卒業生(高3生)が卒業式後に飲酒と喫煙をし、うち多くが野球部員だったことをもって春の選抜高等学校野球大会(センバツ)への出場を辞退した。
駒大苫小牧は昨夏の優勝後に野球部長が暴力を振るっていたかどで「優勝返上か」と騒がれた。殴る鬼の野球部長がいないと酒とタバコに走ってしまう野球部って、やはり変ではある。

ところでセンバツは毎日新聞の主催である。夏の全国高等学校選手権大会は朝日である。どちらも拡販を目的としているがセンバツが毎日の紙勢に貢献しているとは到底思えない。
夏の大会は都道府県予選から甲子園大会まで一直線に続いていくのでリアリティーがある。トーナメントで勝ち残った学校だけが上に上がっていくのでわかりやすくもある。3年生にとっては最後の大会だからやる気に満ちてもいる。
でもセンバツは違う。そもそもセンバツされる高校の戦績が何をもとにしているかを知る人がどれほどいるだろうか。答えは夏大会が終わった後で新体制になったチームが都道府県別に秋に大会を開き、その上位が全国10ブロックの大会に出場して、その成績が選考の基本だ。

秋にそんな大会を開いているなど関係者以外ほとんど知るまい。現に秋大会はブロック戦のレベルにまで進んでも観客席はガラガラである。夏の地区予選も1・2回戦の試合には目を覆いたくなるような、スコアブックに覚えたすべての記号が書き込めるほどひどい試合もあるが、秋の1・2回戦よりはずっとましだ。秋大会は事実上の新人戦だからレベルが低い。
そして、それでもブロック戦の上位校だけが無条件に選ばれるというならば透明性があって真剣味も増すであろう。しかしセンバツは文字通り「選抜」するのだ。
ここでまず28校を決めるが地域性を考慮するためにブロック戦では下位に終わったチームが上位を出し抜いて選ばれたりもする。「毎日新聞が売れていない地域だから選んだんじゃないの?」みたいな突っ込みが入る余地を与えるわけだ。
一応もっともらしい基準はある。「品位・校風・技能・地域性」の4つだ。うち地域性は上記のような問題がある。技能は強ければいいとまあ納得できる。問題は品位と校風だ。校風がいけないという理由がそもそも立てられようか。
駒大苫小牧は辞退の理由としてセンバツは品位を問われるからとも言っていた。確かに未成年の飲酒と喫煙が品位にもとるのはわかるが、字義通りの意味での品位を問えば出場できなくなるチームはたくさんある。一度でも高校野球の取材を継続的にした経験がある者ならば皆が知っている事実である。

誰も知らない低レベルの秋大会の結果を参考に謎のごとき選考規定で突如出場が決まるというのがセンバツ出場校である。これでは盛り上がらない。言い換えれば拡販につながらないと21世紀に入ってから「21世紀枠」と「希望枠」を新たに設けた。
両枠とも秋大会でそこそこの成績を収めたものの通常枠からはもれたチームをセンバツする。21世紀枠は部や学校の歴史で苦労を克服するなど他の高校生の模範になるような「ご立派校」を選出する。そうした基準がなぜ21世紀から必要になったのか脈絡はない。
希望枠はいろいろ細目はあるようだが要するに通常枠から外れた守備に見所のあるチームが選ばれるらしい。守備がいいと希望なのか。にしても本当に守備が鉄壁ならば通常枠で文句なく選ばれる成績を挙げるはずだとのウンチクは通じない。
要するに両枠とも意味不明なのだ。うさんくさい通常枠に意味不明の枠を乗っけて短い春休みに駆け足で大会を終えてしまう。なくていいゆえんである。
ハッキリいって高野連自身も現場ではたいしてやる気が感じられない。毎日新聞がセンバツで拡販大攻勢に成功したという話も聞いたことがない。卒業式の後の高3生の動向まで高校や部がフォローするなどできっこない。羽目を外したいお年頃とタイミングであるのは大人ならば全員が覚えているはずだ。
「卒業まで部員は部に属していなければならない」という規定はちょいと大げさにいえば憲法に違反するのではないか。できっこなかろうが出場できなくなった駒大苫小牧の現役選手とその保護者が民事裁判でも起こしてみると面白い。

矛盾と弥縫とカラ意地とつじつま合わせと商魂と呪文と偽善が結束するとセンバツとなる。それをNHKがいかにも素晴らしい模範生の大会のように美化して公共放送の電波をたれ流す。まるで野球をしない男の子は青春の傍観者であるように。

何が面白くてセンバツをやるのだ
大人よ
もうよせ、こんな事は

と高村光太郎をパロッてみた。

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