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2006年3月 4日 (土)

インパール民主党と小泉のさえわたる言語感覚

永田→野田→前原ラインの自爆メール騒動の詳細を調べているうちに「どっかで読んだ話だな」と気づいた。なかなか思い出せなかったが『失敗の本質』のインパール作戦だ!

先入観の根強さを示すとともに、組織による学習の貧困ないし欠如をも物語った。また、「必勝の信念」という非合理的心情も、積極性と攻撃を同一視しこれを過度に強調することによって、杜撰な計画に対する疑念を抑圧した。(前掲書176ページ 中公文庫)

寒いぐらい当てはまる。前原さん。あなたは軍事オタクなんでしょ。しっかりしてよ。

ところで私は小泉首相が大嫌いである。 夜神月が『DEATH NOTE』に彼の名を書かないのが大変不満である。『アクメツ』が彼を生かしているのは実に不可解である。それほど嫌いなのだが見事としかいいようのない言語感覚には時折感心させられる。ワンフレーズではあるが切れ味は鋭い。
ほめているのではない。インパール作戦じゃないけど敵を知らずして戦いはできないと言いたいのだ。でないと先の大戦の皇軍になってしまう。その例として昨年11月29日に「首相の大相撲パフォーマンスをネチネチ分析」を書いた。本物の催眠術師である。魔術師と置き換えてもいい。もしよかったらご笑覧下さい。

今回の「送金メール」もよくよく考えれば首相が大問題に切り返したと推察できる。彼は幸運だというが、幸運を感じる瞬間があるということは攻め込まれた状況もあったというに等しい。事実5年間の「治世」で何度もあった。今国会も「4点セット」で守勢に立っていた。
永田寿康議員の質問もその流れの一環で、それを普通の扱いに止めておけば「あの話はどうなった?」ぐらいの茶番劇で人々の記憶から薄れていくような程度・・・・のはずだった。

大問題になってから当時を振り返れば、なるほど永田質問は大甘だった。ただ永田議員もそう問題になるとは思っていなかったのではないか。国会の質疑は党首討論などの例外を除いて野党が与党を一方的に攻める形式である。与党は何をいわれても右に左にかわしたり、いなしたりして採決に持ち込む。負けるとわかっている野党の質問が激越になるのも与党が困ったふりをするのも、いわば「お決まり」である。
今回の送金メールも永田議員が「お決まり」の大げさな攻めをみせ、受ける与党が「当方は認識していない文章ですので調査して可及的速やかに報告します」と発言する程度だったはずだ。もめたとしても議長席に集まってヤイノヤイノが関の山ってところだ。

それを大問題に仕立て上げたのは質問直後の首相の
「ガセネタ」
の一言だった。私はあの時点で首相が100%の客観的裏付けを持って「ガセネタ」と発言していないのではと深く疑っている。だが首相本人には感覚的な確信があったのだろう。忘れてはいけない。彼は魔術師なのだ。ウソをもっともらしくする天才なのだ。いつの間にか「戦死者の顕彰」を「戦没者の追悼」に「前の国会で否決された郵政民営化関連法案の是非」を「郵政民営化の是非」に、それぞれすり替えて何となく国民に信じ込ませる御仁だ。ならばウソの臭いをかぎわける能力が断然高いに違いない。
「ガセネタ」という言葉の響きもすごい。ガセだネタだという言葉はもともとは捜査当局や記者が隠語として使用するもので総理総裁の発する音ではない。小泉首相も百も承知であろう。彼のワンフレーズは内容はともかく下品ではない。しかしこの時に限って隠語、すなわち汚い言葉を公然と使用した。それが一挙に流れを変えてしまったのである。
隠語は汚い一方で俗耳にストレートに響く。あれが「きちんとした情報源から手にした情報とは思えない」ぐらいだったらウヤムヤになっていた可能性だってある。

その後の大もめでも首相の言動はさえわたっている。与野党内から永田議員の辞職を求める声が上がっても首相は追随しない。「懲罰委で除名だ」との蛮声が聞こえてくると一転して「除名は死刑宣告に等しい」と暗に反対している。
この感覚は悪魔的とさえ表現できよう。先に述べた「お決まり」に従えば犯罪を起こしたり粗暴な振る舞いをしたわけでもない議院内の発言をとがめて辞職に追い込むのはまずい。「お決まり」でなくなるからだ。となると自分が目指している「改革」も「お決まり」通りにいかない恐れが出てくる。
身内の民主党まで永田議員の辞職を求めていた愚かさに比べて際立った振る舞いであろう。議院内の身内の発言云々で辞職させたら野党は自滅である。その自滅を民主党はやらかそうとした。それで首相は十分だったはずだ。

「死刑宣告に等しい」と除名に事実上反対するのも温情派をイメージさせる効果はもとより、イケイケの自民内を強烈に牽制する威をみせつけられる。過去の例からみて永田議員の発言は除名にまでは価しない。
仮に院内の発言で謝罪までしている議員を除名か否かまで追い込んだとしよう。するとメディアは「除名」とは何かを報じざるを得なくなる。
まず過去の例から伝えよう。すると画面には信念を述べただけで除名になった川上貫一や、もはや神の域にある斎藤隆夫を映すしかない。と同時に永田発言とは比較にならないスケール?だった楢崎発言でさえ除名にならなかったのも報道せずにはおけない。
さらに除名とは圧倒的多数が数の論理で押した場合には「粛清」と同義の民主主義否定になりかねない処分であると斎藤隆夫の絵をバックに解説者が述べる。そして何よりも刑事被告人の身でありながら闇将軍として堂々と権力を長期間操った元首相に除名のジの字もなかったことに国民は気づく。

要するに除名が現実味を帯びてくれば民主および永田議員の逆襲の目が出てくるのだ。だから小泉首相は避けたがっている。ならば永田議員は謝ったついでにまな板の鯉になって「どうにでもしてくれ」と大の字になってしまうがいい。
私は以前に広告の仕事をやっていてミスをクライアントにつかれて追いつめられた時にとっさに請求書を渡して「わかりました。あなたがここに書いた金額で請求するので許して下さい」とやったことがある。ほめ殺しがあるならば謝り殺しもありだ。東大卒の元大蔵官僚には無理か。

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受信: 2006年3月 5日 (日) 13時42分

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