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2006年2月 7日 (火)

清原・ノリという名の偽善

今シーズンからオリックス・バファローズの一員となる清原和博と中村紀洋のキャンプ地での人気は大したものだそうな。スポーツ紙も連日大きく扱っている。たぶん小泉政権のせいで奈落の底に落ちた日本人の程度というか低度というか、そんなことがプロスポーツの世界でも垣間見える。

スポーツ選手に人格を求めるのはお門違いである。人格者とされた王貞治でさえ「実は私もね」と苦笑混じりに現役時代のやんちゃ振りを各種メディアに披露しているほどだから。だが石田禮助ではないが「粗にして野だが卑ではない」品格は求められよう。清原・ノリの人気も彼らが「粗にして野」であるように映る点にありそうだが、2人とも私のみるところ「卑」である。
それを如実に感じたのは2人がオリックス・バファローズへの入団を決めた際、ないしは直後にしきりに語った「亡き仰木彬前監督への恩返し」だの「引き合わせ」だのという文言である。こんな言葉をどの口から吐けるのだろうか。
経歴から察する限り、彼らは後ろ暗さや力のなさを覆い隠すために「口なし」の死人をダシにした卑怯者であり偽善者である。

清原と仰木の2人に接点を探すとすれば05年のシーズン前に所属していた巨人の堀内監督(当時)から事実上の戦力外扱いを受けていた清原に監督を引き受けた仰木がオリックスへの移籍を勧めた時からである。しかし清原は「泥水を・・・・」云々などとクサイ言葉で巨人に残る未練を示して袖にした。
05年シーズン終了前後に今度は本当に巨人から三行半を突きつけられても清原は仰木の誘いに生前ついに応えることはなかった。彼がオリックス入りを決めたのは他球団から相手にされないのを確信して唯一誘ってくれた球団だったからに過ぎない。
しかも決断は仰木没後である。何が「恩返し」だ。恩知らずの方が表現としてはふさわしい。恩知らずが恩返しとシレッと言う。こうしたのを偽善者と呼び卑怯者と指弾して何かおかしいか。

中村紀洋に至っては悪人の領域に近い。仰木が近鉄バファローズ監督を務めたのは1988年から92年まで。中村は大阪府立渋谷高校から91年に入団したから仰木近鉄時代に戦力として活躍したとはいえない。
2002年にアメリカ大リーグのニューヨーク・メッツへの入団を合意したにも関わらず不可解な主張をして近鉄に残留した。中村側とメッツ側の言い分はとらえ方もさまざまであろうが結果的に中村は6年約40億円の破格の契約を近鉄球団とかわした。その時に彼は確か「長嶋さんのようになりたい」と言った。ドメスティックでも未だ英雄視されるミスターのように、とね。
ところが当の近鉄球団がオリックス・ブルーウェーブと合併して消滅するとなると手のひらを返すがごとくに新球団のプロテクトを拒みポスティングで海を渡る。「仰木さんへの恩返し」どころか仰木が率いることになった球団から逃げ出したのである。長嶋になるのはどこへ行った。
もっとも大リーグではまったく通用せずに日本に舞い戻ろうとしたはいいが意外なほど他球団の感触は悪く、ここから先は清原と同じような経緯でオリックスに入団する。今度は仰木とともに清原を尊敬しているとまで言い出した。

恩とは生前に報いるべきであろう。その機会がなかったならば別であるが2人ともあったにも関わらず袖にした。だとしたら死者にはまず謝罪から始めるのが筋である。ダシにするなどもっての他だ。

仰木が育てた選手として有名なのは野茂英雄とイチローである。この2人は公式には仰木死去に対するコメントを出していない。さすがの振る舞いといえよう。私とて恩人はいる。その人が急逝したらぼう然とするばかりである。言葉を生業としている私ですら言葉が見つからない。恩とは本来そうしたものではないか。
野茂とイチローが仰木に強い恩義を感じていたのは雑誌やテレビの対談などを見聞する限り間違いない。逆に清原と中村にはそうした形跡が仰木の生前までに全然うかがえない。ところが死後に饒舌なのは後者である。明らかにうさんくさい。

と、清原と中村を批判したが本当に訴えたいのは2人をくさすことではない。こうした人物をヒーローとして受け入れる側の知性の低さ、感度の甘さ、倒錯といった点である。日本人は卑怯な偽善者をそうと見抜けず、あべこべに「おとこ気がある」「情け深い」などと評価するようになった。これを倒錯といわずに何と呼ぶ。小泉は笑っている。ブッシュは嗤っている。

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