« 第48回グラミー賞の感想 | トップページ | ライブドア粉飾立件は難航か »

2006年2月16日 (木)

奥田碩トヨタ会長という名の怪物

奥田碩トヨタ自動車会長。73歳のこの爺さまがどれだけの権力を握っているのか。まずは利益1兆円企業のトヨタの会長である。同時に道路行政を担う国土交通省交通政策審議会の会長でもある。車と道路は不即不離の関係であるが彼は両方のトップ級を兼ねる。

トヨタはいうまでもなく東京証券取引所の1部上場企業であるが奥田会長は東証の社外取締役である。「社外」という言葉のイメージから深く詮索されないが、社外取締役は商法に定められた法的な役職である。ちなみに「社長」や「重役」の呼称に法的な位置づけはない。
社外取締役は通常の取締役のように業務は執行しないが経営に対する監視や明確化を職務とする。自らの会社の株券(しかも超優良)の売買をする鉄火場を公正な立場で監視できるのか。

日本経済団体連合会(日本経団連)会長でもある。日本経団連は旧経団連と旧日本経営者団体連盟(日経連)が合併してできた。旧経団連は大企業の集合体で「財界の総本山」と呼ばれ自民党の大スポンサーだった。旧日経連は「財界の労務担当」とされて労働組合の敵役である。
したがって日本経団連会長は大金持ち代表兼労組対策のトップということになる。財界は伝統的に与党に強い影響力を持つ。

経済財政諮問会議の有力な民間議員でもある。同会議は01年の省庁改正で内閣府に新設され予算編成の基本方針など国家財政に深く関与する。郵政民営化など小泉「構造改革」の方針(骨太の方針)はここから発した。
05年に成立した郵政民営化関係法に基づいて発足した日本郵政株式会社の社外取締役にも奥田会長は就いた。日本郵政という会社は巨大な物流と金融機関である。奥田会長は民営化を進める当事者として経済財政諮問会議議員を務める一方で、その所産として誕生した日本郵政の役員にも滑り込んだ。

まだある。彼は女帝女系天皇を認めるとした「皇室典範に関する有識者会議」の一員で紀子妃の懐妊がなければこの会議で決まった皇室典範改正法案が今国会に提出されるはずだった。

つまりこういうことだ。まず奥田会長は利益1兆円企業(断っておくが売上1兆円ではない!)の長であると同時に日本経団連のトップでもあるから民間経済の中枢である。ドンといってもいい。加えて旧日経連を引き継いでいるから労働者の特に賃金アップに渋い顔をする親分でもある。

財界は政界には強い。だから政界への影響力はある。だが霞ヶ関には弱いとされていた。しかし奥田会長は交通政策審議会会長であり何よりも経済財政諮問会議議員だ。同会議は霞ヶ関の中核「官僚の中の官僚」たる財務省主計局の権限を引きはがす力を持つ。この時点で霞ヶ関にもにらみが効くから無敵となる。同会議の「骨太の方針」は国家財政を牛耳る。
つまり奥田会長は広義の「経済」である民間経済と国家財政の両方に強い影響力を持っているのだ。その上に東証という世界有数の市場の重役だ。

さらに「皇室典範に関する有識者会議」のメンバーとして皇室にまで影響力を伸ばそうとした。それは頓挫しそうだが今度は日本郵政というメガバンクが束になっても勝てそうもない金融組織の重役に名を連ねた。郵政の物流部門を担うのはもちろん車である。運ぶのは信書すなわち個人情報だ。

数え上げればきりがない。例えばトヨタはすでに豊田工業大学を持ち、海陽学園設立の中心でもある。同学園は中高一貫全寮制エリート育成男子校で今春より開校するが早くも高い偏差値が予想される。遂に教育にまでトヨタは進出してきた。

ついでにいうとトヨタの年間広告費はばく大でマスコミはトヨタ批判などできようはずもない。

長々と書いてきたが、我々は政官業+メディアのすべてにおいて強烈な影響力をいつの間にか1人の爺さまに与えていたのだ。小泉首相を私は独裁者と確信するし大嫌いだが彼の場合は少なくとも選挙で選ばれての権力の座だ。ところが奥田会長は違う。
そうした人物に巨大権力を与えている。しかも批判さえされないから国民の大多数がその怖さを感じない。ゆえによけいに怖い。利害相反関係やマッチポンプと疑えるような職務の兼任も許している。

奥田会長の突出と小泉政権5年間は重なり合う。この間に日本はずいぶんと息苦しくなった。その理由は「乾いたゾウキンを絞る」トヨタ式経営が全国民を覆い出したからといって間違いだろうか。いつの間にかカンバンやアンドンやカイゼンが生活の隅々にまで忍び寄っている気がする。
座っている者は立っての作業を求められ、最適な導線とやらを歩まされ、生きるに十分な収入で気安く暮らせる生活よりも徹底的に「カイゼン」し続けて利益の最大化を目指す生き方の方が善とみなされる社会だ。
当然のこととして落伍者が出る。トヨタ内ならば退職して去っていくからいいが国家は落伍した国民を国外追放するわけにはいかない。結果としてニートや意図せざる無業者やホームレスが生まれる。自殺者は毎年約3万人を数える。

少なくとも私はゴメンの構図だ。トヨタ式はトヨタの中だけでやっていてもらいたい。じゃなければ利益1兆円から国民に給料を払え

|

« 第48回グラミー賞の感想 | トップページ | ライブドア粉飾立件は難航か »

経済・政治・国際」カテゴリの記事

コメント

海陽学園の偏差値は低いです。
「大手塾の海陽の「結果偏差値」どこも40台です。」とのこと

投稿: | 2006年3月 5日 (日) 17時55分

まだこんな奴がいるんですね マスコミも彼を許さないでしょうね

投稿: 海堂 | 2008年11月13日 (木) 00時40分

今回も権力を盾にして厚生省擁護をぶったようですが、この人物の発言は前からおかしい。よくトヨタの社長が務まったと思います。徳川将軍方式の経営体制(取り巻き政治)ゆえか?
単に経済的に成功した一介の社長が何故に大きな顔をして世間に物申せるのか不思議でしかたがない。見識、謙虚さも持ち合わせていない人物に見受けられる。

投稿: Saboten | 2008年11月13日 (木) 01時51分

 今日ヤフーのトピックにトヨタ奥田相談役の厚労省委員会でのマスコミに対しての威嚇が掲載されていました。
今までにもあの人の言動などにとても怒りを憶えた私ですが、このニュースに対しては怒りを通り越して呆れてしまいました。
確かにこの人の権力はとても大きな物だと思います。しかしどれだけ偉い人であれ言って良い事とそうでない事があると思います。メディアの対して物を言うという事はつまり、世論に対して国民に対して言っているのと同じだと私は思います。自分の会社は輸出する時の散々法人税を減税してもらっていてフリーターの人々でも税金を納めているのに自分の会社は政治を動かし、脱税というべき行動を取っているにも拘らず、何様なのでしょうか?わたしはとても疑問を覚えますし、それに対して各マスメディアは自分達の大口のスポンサーだという事でこの腐った会社や団体のトップに対して何もモノがいえない状態だあります。
こういったトヨタの犯罪紛いの行動を報道する事さえ出来ない現実に私はとても怒りをを感じます。

投稿: ノリ | 2008年11月13日 (木) 01時56分

怖いですねえ。
金正日を思い出します。
ネット以外のメディアはとても逆らえないでしょう。
昨日の官邸での発言を見ても、かなり思い上がっているようです。
天皇ででもなったつもりでしょうか。

投稿: えいじ060 | 2008年11月13日 (木) 05時56分

コメントをいただいた皆々様。ありがとうございます。その通りかと存じます。
当ブログは紙媒体時代から「トヨタの宿敵」鎌田慧氏が毎月のようにトヨタを分析してくれています。webでも28日にアップしています。今月号もご期待下さい。ちなみに閲覧は無料です。
それにしても、この記事を書いてから3年近くなるのに爺さまの権力は肩書きこそ変われど続いています。「その後」も厳しく監視する必要がありますよね

投稿: 月刊「記録」編集長 | 2008年11月13日 (木) 16時02分

はじめましてで失礼いたします。
自分のブログを書いているとき、
奥田氏の検索をしていてたどり着きました。
大変詳しく、また、内容にも共感いたしましたので
勝手ながらこちらの記事のURLだけを紹介させていただきました。
零細ブログですので問題は無いかと思いますが(笑、
許否の確認とご報告のためにコメント差し上げました。
当ブログはこちらです。
ttp://touretu.blog63.fc2.com/
もし問題があり、削除しろと言うことでしたら
ご連絡お願いいたします。どうかよろしくお願いいたします。

投稿: 凍烈 | 2008年11月17日 (月) 19時58分

先日のトヨタ会長の奥田の発言!なんか勘違いしてますね。トヨタのトップがあれだから自分の知っているトヨタセールスマンはごう慢ですよ!先の大戦では軍人が政治に介入し悲惨な終戦を迎えたが現在はトヨタの奥田会長みたいなのぼせた人物が政治献金で政党を買収し政治に介入してますよね!世の中の今の現状の責任は政府だけでなく財界にもある!どんどん世の中は暗く厳しい方へ進んでいるが彼らはこんな世の中を望んでいるのかも?カネある奴と権力ある奴は現在のこんな世の中が絶好な状態であるに間違いない!格差社会も意図的に作り上げたと自分は確信している。

投稿: しゅう | 2008年11月18日 (火) 00時31分

エントリー掲載からいまさらですが、年金問題に関わった官僚の刺殺事件があってトヨタの奥田が先週にマスコミに言論弾圧したニュースを知って検索してたどり着きました。

今更ながらこの国の見えない恐ろしさを実感しました。。誰もが見えないという下手な独裁国家よりもたちの悪い国だと言うことに恐ろしさを感じまた絶望を感じました。。誰かホントに救世主を望むばかりです。。

投稿: 通りすがり。 | 2008年11月19日 (水) 18時10分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 奥田碩トヨタ会長という名の怪物:

» スポンサーによる言論弾圧 [ライカで撮る日常]
トヨタの闇/渡邉 正裕 ¥1,365 Amazon.co.jp 「トヨタの闇」 発刊元でもある「My News JAPAN」が 「マスコミが絶対書けない、本当のトヨタ」 の記事をアップしました。 http://www.mynewsjapan.com/reports/956 奥田氏のマスコミ脅し「トヨタ広報部はパーフェクト」... [続きを読む]

受信: 2008年11月23日 (日) 07時38分

« 第48回グラミー賞の感想 | トップページ | ライブドア粉飾立件は難航か »