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2005年12月11日 (日)

サッカーW杯組み合わせ決定の前日の件で

10日早朝、サッカーW杯ドイツ大会の一次リーグの組み合わせが決まり日本はブラジル、クロアチア、オーストラリアと同組になった。だが本稿の主題はそこにはない。前日の9日付新聞各紙が大きく紙面を割いた島国根性大爆発!の記事である。

メキシコ・チュニジア・スイスなら・・・・朝日新聞
ベストは「メキシコ・アンゴラ・スイス」か・・・・毎日新聞

スポーツ紙を含めてどの紙面も似たり寄ったりの精神構造で書かれている。頭に来た。
何に怒っているかって?できるだけ「やりにくい相手」とは「避けたいところ」で欧州最弱とみなされたスイスならば「望む相手」とする考え方だ。

何とせせこましい発想であろうか。
日本人が好むスポーツ漫画のストーリーはヒーローまたはヒロインの主人公が「これでもか」と難敵に当たる形が多い。「ドカベン」なんて神奈川県予選の初戦から甲子園大会の決勝並みの強豪と戦ってきた。

物語ではそれを望む日本人がいざリアルな戦いを目の前にすると「なるべく弱い相手と組みたい」となる。
こういう建て前と本音の使い分けが私は大嫌いである。「なるべく弱い相手と組みたい」が本音ならば建て前もそれで合わせよ。逆に真のヒーローは難敵を破ってこそと本心から考えるならばマスコミがやる弱い相手選びを「ベスト」として恥じない精神を攻撃するべきだ。「わが日本代表はぜひ『死のリーグ』でやりたい」とね。
でも日本人の本心は「弱い相手とやりたい」なんだろうな。それこそが最大の弱点とも気づかずに。
W杯初出場の時に日本はアルゼンチン・クロアチア・ジャマイカと同組になって喜んだ。クロアチアとジャマイカは日本と同じ初出場だから勝てそう。も・・・もしかしたらアルゼンチンにも?みたいな雰囲気が組み合わせ発表後に我が国を覆い、私は心から恐怖を感じた。
もしかしたら・・・・こんな「空気」が狂気の「大東亜戦争」に駆り立てたのではないかとね。
先の大戦で日本が相手をしていた中国は弱い。も・・・もしかしたらアメリカにも?という発想である。実はその中国にも負けてしまったわけだが。

いいですか。W杯に出場してくるチームにメチャ弱いチームなどない。同じ初出場組といってもクロアチアは旧ユーゴの一部でオシムが率いていた当時のW杯ではアルゼンチンと決勝トーナメントでPK勝負までもつれ込んだ強豪だ。
当時私はそのことを多くの人に言ったが誰も聞いちゃいない。陶然として決勝トーナメントを夢想していた。結果はご存じの通りである。
前回の日韓共催では確かに組み合わせに恵まれ?て決勝トーナメントに進出した。その時に忘れられない記憶がある。トーナメント初戦の相手はブラジルかトルコのどちらかであった。そして多くがトルコと当たるのを希望したのである。
私はがく然とした。せっかく16強まで残れたのだから是非わが国でブラジルとの本気の勝負が観たい・・・・と多くの日本人は考えないのだ。
だがジーコは違っていた。当時は第三者に過ぎず母国というのもあろうが彼はテレビで「ブラジルと当たるのを期待する」とハッキリ言った。その時に自分は日本の多数派よりもブラジル人の方に発想が近いと知って再びがく然としたものである。

こうした精神構造のもっともいけないのは意に反して強豪と当たるとショボンとする半面で「望む相手」になると勝ったような気になる点だ。先に述べた「それこそが最大の弱点」の正体である。
結果として日本はフランスではクロアチアに、日韓共催ではトルコに敗れた。弱いチームなど1つもないはずのW杯で弱い「望む相手」を探すのは無意味と学習したかと思っていたが案外と続いているのだ。
極端かもしれぬが、こうした島国根性がいじめなどを生み出すのではないか。弱い奴をいじめると楽しいとの発想は本質的に倒錯している。強い相手を倒すから世の中は面白いのだ。ジャーナリズムをいまだ「弱きを助け、強きを挫く」に立脚しているべきだと信じている私がバカなのか。それとも日本のメディアはわが国の代表を「弱き」に分類しているのか。

最後に少しだけ今回の組み合わせについて。前述のような経緯から既視感を覚える驚くべき組み合わせである。クロアチアは「フランス大会には得点王シュケルがいたが今回はそれほどでも・・・・」みたいな評論が早くも出回っているが、フランス大会でボクシッチが欠場していたのを知らぬか知ってかネグッている。
そもそも現代表は欧州予選ではスウェーデンを破ってトップで出場を決めたチームなのだ。

オーストラリアは魔将ヒディンクが率いている。20世紀末に国別代表チームでは最もファンタジックなオランダサッカーを現出し、日韓共催では韓国を躍進させた彼がおめおめと予選リーグで敗退するとは思えない。

そしてブラジルだ。最強国との「組み合わせが最後(三戦目)になったのは理想的」と川淵三郎キャプテン(って呼べということだったよね)は言っているがフランス大会の時は「最強のアルゼンチンと初戦で当たるのは理想的」みたいな論評が覆っていた。要するにご都合主義なのである。
ジーコは母国と対戦して感無量だろうが向こうは何とも思っちゃいない。相手がブラジル人監督だからといって感慨にふけるブラジル選手は皆無であろうし、かつて母国の英雄だからといって敵に塩をおくるなど日本人でもすまい。
Jリーグ発足当初、日本サッカーの英雄・釜本邦茂がガンバ大阪の監督を務めていたが誰も遠慮会釈なく叩きのめしたじゃないか。

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