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2005年12月12日 (月)

みずほ証券発注ミスの背景と旭硝子大仕手戦

「犬が人をかんでもニュースではないが人が犬をかんだらニュースだ」は記者ならば誰でも知っているイロハだ。ただ現実社会はそのように単純ではなくズバリと人が犬をかむような話題に出会うことは少ない・・・・などと最近感じていたのだが。
あるんですね。「61万円で1株ならばニュースではないが1円で61万株ならばニュースだ」と。そりゃもうイロハ通りのニュースである。今後も長くジャーナリズムの世界で語り継がれていい大事件だ。

売り注文を出したのは「みずほ証券」という。「何でも1つ」の竹中平蔵プランによって日本の金融グループが3つになったは誰もが知る。三菱東京UFJ、みずほ、三井住友だ。
うち三菱東京UFJは余りにも長い名前が嫌われて・・・・じゃなくて銀行・重工・商事の御三家の専横に恐らくは辟易して日興證券が逃げ出してしまった。しゃあないから長い名前を改めて・・・・じゃなくて独立独歩の野村證券から国際証券を事実上もらい受けて、その他諸々といろしろして三菱証券らしきを作った。三井住友はもとから大和証券と親密である。
で、みずほはどうだったっけと改めて思い出す。

みずほの源流の1つである富士銀行はかつての4大証券の山一のメーンバンクだったが消え去った。よってみずほ証券は2000年に第一勧業証券、富士証券、興銀証券の旧3行の合併によって成る。名前を見ればわかるように20世紀末の金融・証券制度改革法に基づいてできた親銀行100%子会社の証券会社だ。
はて旧一勧には日本勧業角丸(勧角)証券(シェア約3.7%)、旧興銀には新日本証券(同3.5%)と和光証券(同2.7%)という親密な関係の証券会社があったはずだ。旧富士も山一本体は爆発したとはいえ太平洋や内外といった山一系列を間接支配していたともいえよう。これらがどうなったか気になってノートをひっくり返してみた。

勧角と山一系列の大東は01年にみずほインベスターズ証券(全国約60本支店)に、新日本と和光は00年に合併して新光証券(全国約100店舗)になった。要するにみずほFGには

①1990年代設立の銀行子会社が合併した「みずほ証券」
②旧一勧系の「みずほインベスターズ証券」
③旧興銀系の「新光証券」

の3つが脈絡なくぶら下がっているのだ。みずほインベスターズのHPトップには新光へのリンクが新光のそれにはみずほインベスターズのリンクがそれぞれない。切った張ったを兜町で繰り広げてきた古強者は独自のシマを築いて他を寄せ付けないようだ。
問題の「みずほ証券」は1993年に金融・証券制度改革法が施行され銀行と証券が子会社を通じて相互参入していいことになったのを機に同年に興銀証券が、翌年に第一勧業証券と富士証券がそれぞれ設立された。
ただ同法はこうしたた証券子会社は、他の証券会社がメーン業務としていた株式売買の取り次ぎを禁止していた。既存証券が銀行を脅威とみなし、旧大蔵省の護送船団的発想が生んだ結果で手足を縛られたままスタートした。
解禁されるのはいわゆる「金融ビッグバン」で99年からは証券子会社の規制が撤廃されて取り次げるようになった。そして翌年に「みずほ証券」として結集する。
要するに「みずほ証券」には以下のような弱点があった

①もともと3社が合併して5年余りの寄り合い所帯であった
②古くから株券の売買取り次ぎをしていたFG内の2社とは別立てで合併1年前まで禁止されていた。経験不足は否めない
③にも関わらずメガバンク直系によって資金は豊富。2005年3月期の連結経常利益は500億円を達成している

長らく手足を縛られていたせいで93年以来許されていた引き受けやM&Aは得意でも切った張ったは手慣れていない。寄り合いで統一感が薄い上に経験不足の分を親会社が資金面で強力にサポート・・・・となれば自然と無責任状態やヒヤリハットが生じておかしくはない。
そう考えれば信じがたいミスが起きたのも誤入力を取り消せなかったのも、記者会見が異様に遅れて投資家に1日中犯人探しをさせた無責任さも理解できる気がする

場立のいた頃の東証では「61万円で1株」を「1円で61万株」で取引を成立させるわけがない。もういなくなって約20年経つが新光やみずほインベスターズには当時を知る猛者もいよう。だいたい同じFGに3つも証券会社があってどうするんだ。

朝日新聞12月10日付朝刊によると決済の特例措置を発動して現金決済で解け合う方向だという。記事にもチラッと乗っていたが1950年の歴史的仕手戦の旭硝子権利株事件以来の収拾だというから驚く。
旭硝子事件もまたドッジラインというデフレから特需へと景気が上向きかけた時に起きたという意味では今回と似るが思惑が全然違う。
当時業界トップだった山一の相場師、大神一と盟友の佐藤和三郎(獅子文六著『大番』のモデル)の買い進みに日興など東京勢が便乗、売り向かって対抗するは山種証券の創業者で、これまた著名な相場師の山崎種二を先頭に大和や野村證券といった大阪勢が続く。
売り買い交錯の激しい攻防戦によって今回の「みずほ証券」問題のように決済不能の恐れが出たために裁定値での差金決済となった。金額は買い方にやや不利であったが山一は飲んで収拾した。
いったい山一に資金を提供したのは何者かが後々まで話題となる大仕手戦だった。三菱グループによる旭硝子の企業防衛、つまり何者からかの乗っ取りを防いだとの説が有力だ。

なあんてドラマは「みずほ証券」問題にはない。むしろ思惑ゼロの自然災害に近い。1923年の関東大震災に伴う震災手形の発行と、その処理問題の方が参考になりそうだ。法律が変わっているので一概には比較できないが事後の精神構造は興味深い。

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