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2005年11月26日 (土)

オカルトと左翼が結合する怖さ

10月30日に「もしかして小泉首相は左翼か」と書いた。昨日は「首相の靖国観の正体はオカルト」と推察した。
アップした後で怖くなってきた。左翼とオカルトの合体といえば我々が歴史を振り返るとすぐに見つけることができる。1930年代から敗戦までの「あの時代」だ。

「あの時代」は左翼ではなくて右翼でしょうとの指摘は当然である。私がいいたいのは思想信条としての左翼ではない。鉄の規律、民主集中制度、前衛党、一点突破・全面展開、軍事強化といった現象・形式としての左傾化である。社会主義を名乗っていた国家の政策ともいえる。
1930年代の軍部とくに陸軍には明らかにソ連軍に憧れる風潮があった。かの国は五ヶ年計画を成功させ強大な生産力と軍事力を誇っていた。関東軍の仮想敵はソ連であったがゆえに研究も進み、そのノウハウを導入しようと試みてきた。陸軍将校とりわけ統制派の感覚に近い。
それと結びついたりシンパシーを寄せていた革新右翼は日本国家社会党の赤松克麿のように原点は左翼の国家社会主義者、今でいうところのネオコンを思わせる。

近衛文麿もまた河上肇に師事するなど根っこに左翼があるにはある。新体制運動が統制派(武藤章など)の「一国一党」的感覚に結果として近かった。「一国一党」とプロレタリアート独裁は奇妙に符合する。
近衛のイメージした新体制が大政翼賛会で結実したわけではなさそうだが(結成式で近衛の言動があまりに素っ気なかったので)翼賛会が政党も含む何もかもを包含した何かであり、スローガン通りの「下意上達」であればやはりプロレタリアート独裁を感じさせるし実態としての「上意下達」は形式としての民主集中制度を思わせる。

これらのいわば左翼的右翼(変な言葉だがそうとしか表現できない)はマルクス主義を排撃しつつも根っこに持ち、独裁的性格であり、社会主義の母国ソ連を敵視しつつも憧れてもいた。満州事変の手口は一点突破・全面展開の極致であった。1937年からの日中戦争は発端こそ謎だが近衛政権の対応および陸軍の展開はそうであったとの分析ができる。
1930年代後半の戦時統制経済政策は計画経済ときわめてよく似ているとは多くの識者が指摘している通りだ。

一方で新体制運動を左翼的だと批判して2.26事件後の処置で壊滅するまで統制派と対立していた皇道派と気脈を通じるなどしていた観念右翼はどうかというと、これはもうオカルトである。
北一輝の思想遍歴の初期が社会主義であったのはよく知られている。大川周明は論理と激情がない交ぜになった「これぞオカルト」の体現者であり、気に入らない自由主義者をボロカスにしていた蓑田胸喜は狂死している。井上日召は元来が僧侶であるからオカルトに走って何らおかしくない。
彼らが目指したものも個々によって違いはあるものの(その違いが本人にとっては何より重要だったようだが)たいていは空想的な域を出ない。
人を顔で判断するのも何だが北、大川、蓑田などの顔写真を見るだにオカルティックでもある。

大川や北が関連したとされる三月事件や十月事件のパートナーであった橋本欣五郎が影響を受けたケマル・パシャは英雄であると同時に独裁者でもあった。桜会の設立趣意書を読む限りでは空想的発想以上の現実性を感じない。
陸士・陸大という当時の超エリートがどうしてこんな幼稚な発想に至るのか不可解である。これは橋本に限らず当時の軍エリートの多くに当てはまる。
その原因の一つが観念右翼のオカルティックな主張にあるのではないか。オウム真理教の取材で痛感したのだがエリートは答えがほしい。正解をいち早く答えることでエリートはエリートと認められてきたからだ。
しかし「未来への正しい答え」は未来がどうなるか誰にもわからないがゆえに出しようがない。そこに「私は何でも知っている」ような風貌と言説を唱える麻原の如きが現れるとコロッとだまされてしまうのである。
皇道派を自壊させた2.26事件も首謀者の尋問書などを読む限り信じがたいほど幼稚で拙劣な「作戦」であった。これで何らかの成果を挙げられると信じたならばオカルトとしか言いようがない。

そして何よりも怖いのは観念右翼と革新右翼、皇道派と統制派は激しく憎しみ合いながらも結果として昭和天皇を御本人が赤面されるほどに持ち上げてオカルトと独裁が結合した非論理的なシステムを作り上げて軍拡、軍事侵攻に狂奔して最終的にはボロ負けしたという点では皆が共犯だという点だ。
わが国は今、この時の失敗を繰り返そうとしている最中なのかもしれない。なぜいけないかというと社会主義国の政策は結果的にほぼすべて失敗したし、オカルトは本質的にバカげているからだ。失敗とバカを組み合わせた価値観を推進すればダメになること請け合いだ。

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