女系天皇はどうして問題なのか
女系天皇を認めるかどうかで様々な議論がわき起こっている。一方で身近な問題として国民が受け止めているとも言い難い。天皇の皇位継承を考える上で一番のポイントである。
なぜかというと日本国憲法1条に「天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であつて、この地位は、主権の存する日本国民の総意に基く」とあるのだから皇室典範を改正して男系ではない女系女性天皇または女系男性天皇を認めるとの「国民の総意」があれば何の問題も起きないわけだ。
世論調査の結果などを見ると公式な「国民の総意」を得る方法が実施されれば「女性天皇」までは大半が支持しそうだ。ただ「女系」となると大半が????であろう。「天皇家は初代からずっと男系だった」といわれても「ふーん」程度の認識に違いない。
ところで現実問題として「国民の総意」はいかに集約するのか。皇位の継承は皇室典範が定めていて現在の皇室典範は1つの法律であり、法律は「唯一の立法機関」である国会が改廃する。国会議員は国民の選挙で選ばれる。となると国会の審議と決定が「国民の総意」となると考えるのが合理的だ。
問題は「男系」でないと何が何でもダメなのかということだ。「男系」にこだわる人はいわゆる「万世一系」を持ち出す。ただ「一系」の方は多くの識者が指摘しているように疑問も大きい。
まず初代から9代までの天皇は実存が疑問視されている。10代以降も崇神朝と応神朝、継体天皇の出自、安閑・宣化朝と欽明朝の並立説など古代史に「一系」を揺るがす疑問が出されている。
そこまでいかなくても「一系」とは何親等までを事実上指すのかという問題もある。女帝(男系女子)から男系男子にわたった例でもある奈良時代の称徳天皇から次の光仁天皇までは8親等以上の開きがある。しかも62歳での即位だ。「曾祖父の祖父が同じでその曾孫」が親戚でないとはいわないけど・・・・
今上天皇の直接の祖先は閑院宮家出身の光格天皇(119代)であるが直系の東山天皇(113代)の曾孫に当たり直前の後桃園天皇(118代)とは7親等も離れている。
光格天皇といえば父の閑院宮典仁親王に太上天皇(上皇)の尊号を贈ろうと幕府と交渉したが「君臣の別」の大義名分で押し切られた「尊号一件」の当事者でもある。先帝と大きく親等が離れていながら即位は認められた一方で単なる尊号贈与は認められない。かと思うと宇多天皇のようにいったん源氏を名乗って臣籍降下(今でいうなら皇籍離脱)した後に皇位についた例もある。融通無碍なのだ。
さらに両統迭立期を淵源とする南北朝問題がある。持明院統-北朝最後で南北朝合一時の後小松天皇(100代)と大覚寺統-南朝最後で(後南朝史はここでは除く)合一で後小松天皇に神器を譲った後亀山天皇とは共通の祖である後嵯峨天皇から数えて後小松天皇は8代後で亀山天皇は6代後である。ここに「正閏問題」がかぶってくるからややこしい。
いやいやいかに遠い親戚でも男系が守られていればいいのだ。古代史の問題は反論もあって断絶したとの確たる証拠もないと「万世一系」擁護派はいうかもしれない。では本当に男系が途絶えたことはないのか。
父は天皇ということになっているが実は・・・・という例で有名なのは鳥羽天皇1子の崇徳天皇である。彼の実の父は祖父の白河上皇(法皇)だとの説が有力だ。確かに倫理的にはともかく万世一系は途切れてはいない。ただこの話は、だからこそ表沙汰になり得たともいえるのだ。皇統に皇族以外の男性の遺伝子が紛れたことはないと絶対に言い切れるか。明治維新まで長らく「禁裏様」「内裏様」と呼ばれて密室で過ごしてきた天皇家に起こりえないことと断言できるか。証明は恐らく不可能である。
考えてみれば遺伝子(主に性染色体)で万世一系を論じるのもナンセンスか。メンデルが世に出る19世紀半ばまでに性染色体がどうこうという議論が日本で起きたとの話を私は知らない。にもかかわらず皇室はずっと前から存続していた。だからナンセンスなのである。
ナンセンスを承知で考えてもY遺伝子絶対論は不可解である。現在の内親王は当たり前だが女性だからY染色体を持たない。だからといって父親の遺伝をまったく受けてないというのは極論だ。性染色体に限っていっても女性は父母両方に由来するXX染色体を持つ。その上で性染色体だけで遺伝のすべてを語るのはバカげているとの常識がある。
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コメント
初めまして。
さいきん自民党の政治家らがやり合ってる「皇室典範改正」問題。これオモテでは「女性天皇は可か?」みたいな理念上の争いに見せかけてるけど、ほんとはそんなもんじゃなく、具体的に「次々代の誰を天皇にするか?」という皇位-権力闘争ではないのですか?
なにしろ今も皇族は、大きな政治的求心力を持っているし、自民党の各派閥は、それぞれが皇族各家に特定のコネを持ってる。橋龍などは自身が皇族のハシクレらしいし。
つまりは政治家連中が、「自派」で皇位を押さえるために「典範」の操作合戦をやっているので、オモテに出てる理屈の部分は、カムフラージュに過ぎないのではないでしょうか? マスコミも絶対こんなこと突っ込まないから、みんな何も知らないし、僕も正確な情報の持ち合わせがないんだけど。
投稿: 弓木 | 2005年11月 3日 (木) 01時25分
Y染色体により男系の家系は、遺伝的に存在できるが、X染色体による女系の家系は、2の階乗で先祖の可能性が増大してしまいます。
従って、200年もたてば赤の他人になってしまいます。それゆえ、天皇は、男系しか名乗ることができず、女系は、人皇にしかなりません。天皇家は、人類史上もっとも稀少価値のある家系と言えます。
投稿: なるほど | 2005年11月27日 (日) 18時01分
はじめまして
挨拶が遅れましたが
興味がある問題ですので、トラックバックさせていただきました。
古代日本の人間が、あれほどほどまで、何代にもさかのぼってもかまわないから男系を捜索しろとばかり、こだわっているんですね。
単なる血縁の濃さではダメだった何かがあるようです。
メンデレーエフや遺伝子や染色体の知識もない時代にもかかわらずです。
曽我氏藤原氏平氏源氏など当時の権力者がその気なれば、別に今回のように国会決議も必要とせずに、何時でも女系天皇を即位させられたのにもかかわらず、それをしなかった。
何か理由があるようです。
火影はそれを祈りの力と見ています。
唯一の例外は弓削の道鏡ですね。
彼は稀に見る祈りの能力を有していたので、天皇に代わってもやっていける自信があったのでしょう。神の託宣を利用して。女性天皇に近づき、夫として、皇位を狙ったのです。
しかし、彼は結局失敗した。
今は国民主権の時代です。
歴代の権力者や独裁者ができなかったこと。
法律の名の下、可能なんですね。
すなわち
現代の権力者である国民が、皇位を狙えるということだと思います。
ただ、国民の一人として
できれば、天皇の地位にある者が行う大嘗祭など、効き目のある祈りの能力者にお願いしたいものです。
投稿: 火影三代目 | 2005年12月 1日 (木) 00時01分
小泉首相を憲法違反と女帝推進を最高裁判決まで判断を待つしか、女帝推進の流れ止める方法はない。世論も変わり、時間を稼げる。小泉も居なくなる^^
投稿: 木 | 2005年12月 8日 (木) 19時47分
少し、変わった側面から、今回の女系天皇問題について、述べます。
天皇は、日本神道における現人神です。そして日本神道とは高天原におられる天御中主大神を頂点とした日本固有の宗教であり、そこには、古来より日本を守り支配してきた神々がいます。
日本の神々は、日本神道を世界宗教にまで高めようと、二度の大戦に挑みましたが、結局キリスト教などの各国の神に返り討ちにあってしまいました。
そして現在、男性の天皇継承者が全く生まれてこないのは、如何なることなのか?高天原の神々は、それを是とされているのか?それとも我々日本人を試しているのか?それとも別個の意志が働いているのか?
私個人の印象では、このまま皇室典範が改正される事は日本神道の没落としか思えません。日本という国の脊髄、大柱が音を立てて崩れ落ちようとしているように思うのです。
それは、第二次大戦終戦から始まった、欧米の日本崩壊プログラムの最終局面といえるのかもしれません。
日本という国が無くなる危険を感じます。
投稿: ヒカル | 2006年2月 6日 (月) 05時43分
>なるほどさん
Y染色体とか散文的なこと言ってると天皇家の神秘性がどんどん薄れるだけだと思いますけどねえ・・・。
全日本人をDNA鑑定したら、天皇家と共通のY染色体をもった人間がうじゃうじゃいるわけですよね、例えば一万人とか。おそらく朝鮮人にもいるだろうし、下手したらアメリカ人でもいるかも知れませんよ。その人達全員皇統に属することになっちゃいますけどいいんですか?
投稿: い | 2006年2月 7日 (火) 23時59分