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2005年10月11日 (火)

球団が企業名を入れる理由の真偽

一般にプロ野球チームが親会社の名前を名乗らなければならない理由はもっぱら1954年8月10日に国税庁長官から国税局長宛に出された「職業野球団に対して支出した広告宣伝費等の取扱について」と題された通達によるとされる。
同通達は「親会社」が子会社である職業野球団に対して支出した広告宣伝費等の取り扱いを定めている。条件は4つあるが重要なのは最初の2項である。

1 親会社が、各事業年度において球団に対して支出した金銭のうち、広告宣伝費の性質を有すると認められる部分の金額は、これを支出した事業年度の損金に算入するものとすること。

2 親会社が、球団の当該事業年度において生じた欠損金(野球事業から生じた欠損金に限る。以下同じ。)を補てんするため支出した金銭は、球団の当該事業年度において生じた欠損金を限度として、当分のうち特に弊害のない限り、1の「広告宣伝費の性質を有するもの」として取り扱うものとすること。

この通達の「1」をもって球団が親会社の名前を名乗らないと「親会社」と見なされなくなるから損金計上できないとの論理がまかり通っているが、これには二重三重の疑問がある。

まず巨人に限っていおう。そもそも巨人という「子会社である職業野球団」は黒字決算をしているのだから問題はない。
また球団名が親会社の名をズバリ標榜しないといけないというならば「東京読売新聞社」ではないのだから2001年までユニホームに「YOMIURI」を入れていなかったことが問題になったはずだが聞いたことがない。確かに01年まで球団の正式名称に「東京」は入っていたが親会社にはないのだから02年から「読売巨人軍」に名称変更して独立したからといって「YOMIURI」を入れなければならない理由が不明だ。

まさか「読売新聞東京本社」の「東京」なのか?

次に赤字を「親会社」の「広告宣伝費」に頼っている他球団に広げてみても通達は「親会社」と「子会社」の関係が明白であることを条件にしているのであって球団名の標榜を云々していない。いったいに会社の親子関係は資本の関係であるのは常識中の常識だ。社名が違うからといって連結決算の対象にはならないなどという話は聞いたことがない。
さらに通達の「2」がだめ押しをしている。「1」をかろうじて「球団名に親会社の名前は入れた方がいいかなあ」と読めたとしても「2」の規定でクリアできるはずだ。
よって「YOMIURI」を通達の内容から標榜せねばならぬ理由は見当たらない。

さらに通達自身に問題があるという指摘もできる。第一に「職業野球団に対して」のみ税制が優遇されていていいのかという問題だ。出された1954年は2リーグに分立して間もなくではあったがビジネス上ではパ・リーグの劣勢はようやく明らかになってきた。

2リーグ制は1949年までに正力松太郎が強力に推進した。この時点では公職追放の身であったが読売新聞の発展と球団創立の立役者であった事実は揺るがない。そこで彼はライバルの毎日新聞を引き入れようとするが読売新聞の現場は猛反発。いわばハプニング的に2リーグが誕生した。
正力はGHQの占領から独立した直後の53年8月に開局した日本テレビの初代社長に就任、54年7月に読売新聞社主となった。さらに翌年には衆議院議員に当選する。通達は正力が読売本体に正式復活した1ヶ月後だ。
さらにパ・リーグ側の立て役者である永田雅一大映社長の社業である大映映画は50年代前半にピークを迎えている。
ここに挙げたのは状況証拠に過ぎない。だが政治的なにおいがプンプンするのは私だけだろうか。当時のプロ野球がナショナル・パスタイムに成長しつつあったのは認める。だから優遇したのだと正面切っていわれればハイと返答せざるを得ない。だがあれから50年以上経ったのである。「職業野球団」ではないサッカーJリーグのチームは通達を利用したくてもできないのだ。

だから本来はプロ野球側から通達を返上すべきなのだ。そうすると「そんなことをしたら球団経営は成り立たない」という反論が起きよう。確かに昨年の1リーグ騒動の時に近鉄球団(当時)が出してきた「赤字40億円」は衝撃的だった。だが本当は「だから通達が必要だ」ではなくて、そんな経営を許していた来し方を反省して「子会社」なりにやっていく努力をするのが先である。
「親会社」が「広告宣伝費」に音をあげて球団を手放すというのは本末転倒である。それじゃあ「広告宣伝費」に見合う広告宣伝になっていないという証拠に他ならないではないか。

話が巨人からそれたので最後に強化策を。星野仙一監督にならなかったのはよかった。外様がダメだとかそんな了見ではない。選手のみならず監督までついに外部の大物を金で取ろうとした巨人のここ数年の「敗北の方程式」に陥らなかったのを評価しているのである。代わりの原辰徳監督がどうこうと言う気もない。
いっそのこと渡邊恒雄会長が監督をやればいいじゃん。彼が采配をする必要など何もない。原ヘッドコーチ以下にほとんどを任せてベンチ奥でふんぞり返っていればいいのだ。選手は死ぬ気でプレーするぞ。もっともそんな絵は見たいような見たくないような・・・・・

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コメント

http://jpbpa.net/list/baseball/03/06.htm
>昭和29年に国税庁長官の通達というのがありましてね、で、パリーグが1番恩恵を受けていると思うんですけど、年間マイナス20億、30億になっても、それを広告宣伝費で落とせるというね、そういうふうに昭和29年になったんですよ。で、Jリーグもそれが適用されていますけど、

580 :名無しさん@恐縮です :2006/09/19(火) 23:12:43 ID:jRYwoC0X0
>>551>>569
川淵三郎著「虹を掴む」を読め
川淵本人が国税にかけあって例の通達を認めさせた

610 :名無しさん@恐縮です :2006/09/19(火) 23:21:42 ID:jRYwoC0X0
>>590
J開幕前に川淵が国税に話つけて、プロ野球の昭和29年の通達を認めさせた
認める条件が「出資企業がわかればいい」と。別に企業名は入らなくてもいい。袖に申し訳程度に「住友金属」「TOYOTA」と入ったのはそのため・
「渡辺さんは企業名入れないと損金として認められないと言ってるがそんなことない。私が国税にかけあって認めさせた」とある。
まあ立ち読みして嫁

投稿: | 2006年9月21日 (木) 20時50分

川淵三郎著「虹を掴む」にこの通達をJリーグにも適用させたとありますよ。
企業名名乗らなくても親会社であることがわかればいいと。名古屋の袖にTOYOTAと入ったのはそのため

投稿: ななし | 2006年10月17日 (火) 10時12分

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