« 「TOKYO」を「YOMIURI」にした罰 | トップページ | 村上某に怒れ阪神ファン »

2005年10月 5日 (水)

鈴木宗男と中野正剛

人は逆境に遭うと天地が引っくり返るほど変わるということが現実にあるらしい。

悪しき例が自民党に所属して郵政民営化関連法案に反対し、刺客を送られながらも当選した「無所属造反組」である。彼らのうち野呂田芳成議員以外は特別国会の首相指名選挙で小泉純一郎候補に投票した。殺し屋を差し向けた相手を支持するポチ、いやポチだって殺されそうになったら歯を剥き出そうからポチ未満の腑抜けがズラリと国会にいる。

その点で綿貫先生は偉い。開票作業中から郵政民営化関連法案の再提出には反対だと明言し、首相指名選挙では綿貫民輔と書いた。あのお年で自民党を離れて首相指名選挙で自分の名を書こうとは本人も予想だにしていなかったに違いない。たった6票だったが万金に価する。

そして鈴木宗男議員である。小誌は毎週『週刊現代』を講談社から贈呈いただいているが今週(10月15日)号の45ページに信じられないことが書いてあった。「個人情報保護法から国会議員と指定職の公務員を除外せよ」と叫んでいるのだ。
その理由が振るっている。いわゆるムネオ疑惑が騒ぎになった時にはまだ同法はなかった。宗男議員は同法がもしあったならば「私はあれほどマスコミに叩かれることはなかったでしょう」という。ここから普通の文脈ならば同法ができてよかったとなるはずだ。彼は裁判では争っているのだから。だがどこをどう間違えた・・・・いや刺激されたのか宗男議員はその体験から「この法律が悪用されれば日本の社会は権力者の思うまま」になるから「国会議員と指定職の公務員を除外」すべきだとの認識に至ったというのである。

驚いた。鈴木宗男さん。あなたは・・・・もしかしたら・・・・私たちの・・・・み・・・味方・・・・なんですか?

改めてそう言われると論理的一貫性がないでもない。「マスコミに叩かれ」たことで深く反省して再生を誓った。その機会が今の国会議員と指定職の公務員は個人情報保護法のせいで失われていて「不正があっても隠蔽されてしまう」からいけないというわけだ。わかるにはわかる。でも「疑惑の総合商社」といわれた御仁がこんな改心をするのだろうか。
ところがどうやら本気モードなのだから再度驚く。詳しくは『週刊現代』を買ってお読み下さればわかるがどうやら信じてよさそうなのだ。

傍証もある。10月4日付『朝日新聞』には外務省がかつて宗男議員への「対応マニュアル」を作っていたという事実に関して「外務官僚の特権を守ったり、スキャンダル隠しに手を貸したことを深く反省している」ので「今後は私の知る実態を明らかにし、国民の知る権利の確保に尽力する」とのコメントを発表したのだ。宗男議員は曲折あって「国民の知る権利」の重要性に気づいたのである。信じがたいことだがそうであるらしいのだ。
たしかにいかに「疑惑の総合商社」だったとはいえ宗男疑惑の報道はいささか度が過ぎた。彼が誰かさんを殺した風に示唆したり、まだ未成年の息子や娘にまで言及したり(加藤昭さん!)と言いたい放題だった。でもそうした経験がある人はたいてい「オレの権利を守れ」の方向に行くのである。『検察恐るべし』を著した佐藤孝行元議員しかり。金正日ばりに肉声さえ聞かせない中村喜四郎議員しかり。少なくとも「かつてのオレのような立場にある者はさらされろ」と訴えた例を私は知らない。

あえていえば中野正剛と共通するかもしれない。中野は1931年の満州事変以後ナチス張りのファシズムを志向して自ら結成した東方会でファッショ的主張をヒトラーを想起させる演説スタイルで鼓吹した。実際にドイツを訪問してヒトラーと会見、崇拝の念を強めて憲政の否定へ走って大政翼賛会では総務に就任した。太平洋戦争もむろん大賛成である。ここまでは明らかに誤った政治家といえよう。
ところが東条英機首相が独裁スタイルを顕著にしてきたら強烈に反発して大政翼賛会を脱退。翼賛会の政党的部分である翼賛政治会所属者以外の当選がほとんど見込めなかった「翼賛選挙」を非推薦で当選した。その後も東条への攻撃をゆるめずに1943年に有名な「戦時宰相論」を朝日新聞に発表した(発禁処分)。結局はわけのわからぬ理由で逮捕されて釈放された後に割腹自殺するのだが、その際にはかつて崇拝していたヒトラーとともにある記念写真を居間から外していたと伝わる。
この一件があったからこそ中野は最後まで誤った政治家という汚名を免れた。少なくとも歴史は一定の評価をしている。

その中野の影響か。されば同じ派閥だった綿貫先生を仰いだか・・・・。何となく違いそうだ。ひどいことを書かれた家族の特に娘さんの尽力もあって宗男議員は当選できたとも聞く。立件された事件そのものは徹底的に争う方向だというし、また徹底的に裁かれるべきでもある。でもその最中で「知る権利」の重要性に気づいたとしたら。我々(といっても何人いるか知らないが)「表現の自由」原理主義者は素直に歓迎すべきであろう。

中野は誤った。宗男議員も誤った。事件は裁判が確定しなければ最終的な誤りとはいえないが本人が「深く反省している」という外務省とのいきさつは誤りといってよかろう。中野の逮捕と宗男議員のそれが同じとはいえないが逮捕という経験を持つ点は共通する。そして中野は独裁者と対決し、宗男議員も平成の独裁宰相に一矢報いるつもりでいる。9月11日の総選挙を「翼賛選挙」になぞらえるのはさほどおかしくない。そこで宗男候補は中野の「非推薦」を思わせる地域政党で勝ち上がった。その過程で中野と同様に以前の誤りを心中で葬り去ったとしたら・・・・これは面白い。むろん割腹自殺などしてほしくないが死ぬ思いで戦ってはもらいたい。

宗男さん。「個人情報保護法から国会議員と指定職の公務員を除外」せよと訴えるならば少なくとも私は支持する。事件の方は最高裁まで争って有罪になれば失職してしまうが、それでも同法反対を訴え続けてくれるのか。しばらくは目が離せないし離さない。

何百回でも書く。個人情報保護法は天下の悪法である。それに反対してくれるならば右も左も無罪も有罪もなく連帯あるのみだ。

|

« 「TOKYO」を「YOMIURI」にした罰 | トップページ | 村上某に怒れ阪神ファン »

経済・政治・国際」カテゴリの記事

コメント

コメントありがとうございました。
今後とも宜しくお願いします。

投稿: ひらりーまん | 2005年11月24日 (木) 21時17分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 鈴木宗男と中野正剛:

» 政治家と役人の関係 [政治ニュース@若者のおたけび]
外務次官は弁明するも緊張感…宗男氏対応マニュアル (読売新聞) - goo ニュース 『新党大地、比例区で一議席を確保』と選挙特番で報道された時、「宗男キター」と思った奴は全国で結構いたと思うのは私だけじゃないはず、、、 政党の要件は満たしていない新党大地。地域政党という新しい試みをあの鈴木宗男が行った。鈴木宗男は、外務省に対して絶大なる権力を行使し、悪いことをたくさんしてきた「私利私欲」「利益誘導型」の政治家としてのレッテルが貼られ、官房副長官時に賄賂を地元業者からもらい便宜を図ったと... [続きを読む]

受信: 2005年10月 6日 (木) 21時38分

» 『闇権力の執行人』 [喜八ログ]
現在私(喜八)は鈴木宗男衆議院議員を強く支持しています。 政治家鈴木宗男を支持するようになるとは、1年前なら自分でも想像がつかなかったでしょう。当時すでに鈴木さんに対して同情的になりつつあったとはいえ、政治観がまったく異なると考えていたからです。 ところが思いもよらぬほど急速に時代は変化しまし...... [続きを読む]

受信: 2006年2月26日 (日) 15時01分

« 「TOKYO」を「YOMIURI」にした罰 | トップページ | 村上某に怒れ阪神ファン »