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2005年9月29日 (木)

ロシュフーコー小泉を斬る(上)

何度か告白しているように私は9月11日以降の日本のありようを理解しがたく感じている。こんな時は古典を読むといいと考えてひっくり返している最中である。
ラ・ロシュフーコー(1613-80)はフランスの貴族。当時の貴族がそうであったように軍人でもあり権謀術数を駆使する政治家でもあった。政局に関わった経験をもちつつモラリストという道徳的あり方を追求する特異な地位を占めていた。
彼の言葉を集めた『ラ・ロシュフーコー箴言集』(二宮フサ訳 岩波文庫)から現在の日本に当てはまりそうなものを抜粋して私の感想を付記したい。今日は

・自民に投票した有権者の心理
・なぜ郵政民営化一本で大勝したか
・小泉首相の魅力

を、明日は

・岡田民主党の敗北理由
・自民党内の造反議員
・今後の日本

と柱立てて試みたい

【自民に投票した有権者の心理】
◎人間は何かに動かされている時でも、自分で動いていると思うことが多い。そして頭では一つの目的を目指しながら、心に引きずられて知れぬまに別の目的に連れて行かれるのである
・ふだんは選挙に行かないのに小泉絶叫を聞いて自民に入れた惰民ゾンビの姿である

◎われわれの気質のきまぐれは、運命の気まぐれよりもさらにいっそう奇矯である
◎われわれは自分の情念が自分にさせることのすべてを知り尽くすどころか、およそ程遠い有様だ
・総選挙が終わった後の各調査では自民党に投票した有権者はもとより当選した自民党議員でさえもあっけにとられている旨の報道が相次いだ

◎世間は偉さそのものよりも偉さの見掛けに報いることが多い
・現首相が「命を懸ける」と叫び中身はない「見掛け」だけでも改革といえば報いようと思うのだ

◎何人も悪人になる強さを持たない限り善良さを称えられるに値しない。それ以外のあらゆる善良さは、おおむね、怠惰か意志の無力に過ぎない
・この「善良」な「怠惰か意志の無力」による自民票は800万票以上とも数えられている

◎世の中には馬鹿たるべく定められた人がいて、彼ら自身が進んで馬鹿なことをするだけでなく、運命そのものが否応なしに馬鹿なことをさせるのである
・惰民ゾンビよよーく聞け。「馬鹿たるべく定められた人がい」るんだってよ

【なぜ郵政民営化一本で大勝したか】
◎人は自分の偉大な功績を鼻にかけるが、その功績は偉大な志の賜物ではなく偶然の結果であることが多い
◎伝染病のように感染る狂気がある
・なるほど。そういわれてみるとそれだけの現象のような気がしてくる

◎凡庸な素質を上手にひきたてる器用さは、人々の尊敬をまんまとせしめ、しばしば本当の偉さ以上に声価を高める
・その「器用さ」がワンフレーズだったり戦闘服然としたクールビズだったり女性刺客だったり髪型だったり

◎もし誰かが賢者に見えるとしても、それはただ彼の狂気振りが年齢と立場に釣り合っているだけなのである
・郵政民営化一本槍の政治生活で63歳の現首相。この釣り合いがないと確かに「狂気」に過ぎず間違っても「賢者」とは感じないはず

◎立派な行為を心から誉めたたえることは、いわば自分もそれに一枚加わることである
・郵政民営化がいつの間にか「立派な行為」になっていた。だから「一枚」ならぬ一票を加えて「誉めたたえ」てみたとさ

◎自分が欲することについて完全な知識があったなら、われわれはめったに何かを熱望したりしないだろう
・何しろ郵政民営化関連法案は首相自身が読んでいない。賛同した有権者は「完全な知識」がないからこそ「熱望」したのだ

【小泉首相の魅力】
◎世間の付き合いでは、われわれは長所よりも短所によって人の気に入られることが多い
◎自分の利益を諦める方が自分の趣味を諦めるよりもむしろ易しい
・ということは小泉首相の短所を「ワンフレーズ政治」といい「郵政民営化は首相の道楽(趣味)」などと批判したつもりになっていたのは逆でワンフレーズや趣味を有権者に「気に入られる」役割を果たしたか

◎すぐれた面を持ちながら疎んじられる人がおり、欠点だらけでも好かれる人がいる
・日本共産党の言っていることの方が小泉首相よりずっと「すぐれた面を持」っているもんなあ

◎自分の職務ではない職務の適任者だと思わせる方が、実際に果たしている職務の適任者と思われるよりもたやすい
・首相の椅子など大して興味がない変人宰相ということにしておいた方が楽なんだ

◎大きな欠点を持つことは大きな人物にしか許されない
・そのはずだから「大きな欠点を持つ」が明らかな小泉首相は大人物だ、と

◎剛胆とは、大きな危難に直面した時に襲われがちな胸騒ぎ、狼狽、恐怖などを寄せ付けない境地に達した、桁はずれの精神力である
◎偉大な人物になるためには、自分の運を余す所なく利用する術を知らねばならない
◎戦場の危機に際して必要な度胸は勇敢さだけで充分こと足りる
・考えてみれば郵政民営化法案の参議院否決という事態は首相にとって本来は「大きな危難」だった。でも彼は笑っているようにみえた

◎真の雄弁は、言うべきことをすべて言い、かつ言うべきことしか言わないところにある
・それもワンフレーズでとなれば究極の雄弁なのか

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