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2005年9月13日 (火)

「死んだふり解散」との類似点

小社から2冊の単行本を出しているJR東日本の車掌さんである斎藤典雄氏からファクスあり。「たしか国鉄民営化時の選挙は自民304議席の圧勝だったのです」とあってハッとした。そういえばそうだった。さっそく調べてみると気味が悪いくらい似てはいるのだよ。

まず靖国神社参拝問題で揺れていた点が似ている。それにレーガン米国大統領と「ロン・ヤス関係」なる不気味な密着度を示したのも小泉-ブッシュ関係をほうふつとさせる。そもそも近しいメンタリティーなのであろう。

さて本題。斎藤さんの指摘通りの国鉄の分割民営化だ。正確にいえば1986年7月の上記「自民304議席の圧勝」の衆参同日選挙で中曽根康弘内閣が訴えたのは国鉄民営化を含む行政改革だった。選挙後に内閣記者会と行った会見で中曽根首相は「国鉄改革は行革の天王山だ。この法案を審議する臨時国会の召集は9月の初めごろになる。成立までにどれぐらいの期間が必要かは分からないが、来年4月の分割民営化が決まっており、この最終ゴールを考えながら進めたい」と語っている。国鉄を郵政と置き換えるとそっくりそのまま小泉フレーズだ。
選挙間際の5月7・8日に朝日新聞が行った世論調査で「こんどの選挙で各政党に、特に取り上げてほしい問題は何ですか」という質問に対する答えは「税金」が39%、「景気・円高対策」が23%で「国鉄の分割民営化」は3%に過ぎない。「税金」を「年金」に、「国鉄」を「郵政」に置き換えれば今回の選挙の構図とほぼ同じである。

まだまだある。当時の野党第1党で同日選で大敗する日本社会党は後に実態がないと批判された「ニュー社会党」なるものを標榜していた。当ブログがヘビの如くつきまとう民主党の「政権担当能力」とやらと空っぽの度合いはいい勝負。
にもかかわらず選挙直前には「ニュー社会党」なるものの手応えを感じたらしい社会党の田辺誠書記長は「大義名分のない解散を仕掛けてきた中曽根首相に対し、われわれは3年半の中曽根政治が暮らしや経済より軍事を優先し、国民に何の利益も与えていないことを明らかにし、中曽根政治の総決算を求めて戦った。当面の政策課題について明確な争点を隠そうとする首相の姿勢も厳しく批判」などと語っている。
「大義名分のない解散」「争点を隠そうとする首相の姿勢」などは習ってきたのかと疑うほど今回の野党の主張と似ている。

「大義名分」とは86年の場合が「死んだふり解散」だったことに由来する。朝日の国正武重編集委員による当時の分析では

野党側は、首相の政治姿勢や権力行使のあり方に比重を置きすぎた。その象徴が衆院解散―同日選をめぐる「ウソつき」「死んだふり」「ホラ吹き」論議であり、その中に肝心の政策論争や政権への取り組み方が埋没してしまった

となる。こうなると恐いくらいの類似であろう。

つまり当時の中曽根政権は日米首脳同士の蜜月関係と靖国神社参拝問題に代表される近隣との緊張を背景にしつつ「死んだふり」で不意に衆議院を解散した。彼の売り物は「国鉄民営化」を「天王山」とする「行政改革」だった。事前の国民の世論調査では大した争点になりそうもないテーマだった。
野党は「大義がない」とこの解散そのものを徹底的に批判した。一方で野党第一党は「何でも反対」から脱した「ニュー」路線なるものを打ち出して野党共闘や自民党の一部との連合も辞さない政権獲得の意欲を選挙で示してみせた。

一方の小泉政権は日米首脳同士の蜜月関係と靖国神社参拝問題に代表される近隣との緊張を背景にしつつ参議院の法案否決を受けて不意に衆議院を解散した。彼の売り物は「郵政民営化」を「本丸」とする「構造改革」だった。事前の国民の世論調査では大した争点になりそうもないテーマだった。
野党は「大義がない」とこの解散そのものを徹底的に批判した。一方で野党第一党は「何でも反対」を否定する「政権準備政党」路線なるものを打ち出して単独で過半数を取っての政権交代の意欲を選挙で示してみせた。

こんなそっくりの例があったにも関わらず私はなぜ気づかなかったのであろう。少なくとも新聞各紙が自民大勝の予測記事を流し始めた時点で比較すべき対象だった。こうした健忘症は私に限らず日本人に共通した弱点なのであろうか。正直言って寒気がする。というのは同じような健忘症で卑近な例があるにも関わらず見落としている重大な錯誤がまだまだある気がするからだ。というより絶対にあるはずである。探さなくてはなるまい。

寒気ついでにいえば「死んだふり解散」を中曽根政権が打った背景には当初は「田中曽根」とまでいわれた田中角栄元首相の影響力を排除する目的があったとされる点だ。「田中の影響力」排除という目的は時空を超えて中曽根政権にも小泉政権にも共通する。

さてここからは余談。

【その1】綿貫先生おめでとうございます。大勢が判明した時点でNHKの党首討論での先生の小泉首相への舌鋒の鋭さは格別だった。改めて郵政民営化法案の再提出を明言する小泉首相に対して「法案には反対する」とあの時点で、暴風雨のような郵政解散勝利の報が沸き返っているなかで断固として迷いなく口にしたコケの一念には圧倒された。テレビ画面を通しての討論でなかったらつかみかからんばかりの勢いはとても78歳のそれとは思えない。

【その2】保坂展人さんおめでとうございます。今度は自民党の名簿搭載者の不足と名簿上位の重複立候補者の得票不足で議席が転がり込んできましたね。
そういう運命ってあるのか。内申書裁判の昔より訳ありになりたいわけではないのにそうなってしまう。小誌1996年12月号に寄せていただいた記事は「『供託金没収で当選』で何が悪い」というタイトルだった。そうだった。あの時も訳ありになってしまった。そんな人が1人国会にいても面白い。社民党は支持しないけど。

【その3】中村喜四郎候補と支持者の皆さん。あなた方はいったい何なのですか? どういう風にするとそうなれるんですか? 後学のために教えて下さい。

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