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2005年9月 1日 (木)

重複立候補復活当選問題を忘れるな

まずは以下の文章を読んでほしい

 また小選挙区の候補者が選挙区の属する比例代表区の名簿にも登載できる重複立候補を認め、さらに比例名簿で同一順位となった重複立候補者の名簿順位が、小選挙区での最多得票者の得票数にどれだけ迫ったかを示す惜敗率に応じるとしたために、得票数のすくない候補がより多い他政党の候補を差し置いて復活当選するといった常識では理解しがたい現象が多発する。

 実際、九六年一〇月の総選挙では、五六六人の重複候補者から八四人もの復活当選者が生まれた。さらに小選挙区において得票数が自分よりも多かった落選者がいたにも関わらず、比例区で当選した候補者は二三人もいた。なかには有効投票の一〇分の一にも達せず、小選挙区の供託金三〇〇万円を没収される「当選者」すらあらわれる始末だ。
 これらの常軌を逸した制度は、当選後にも大きな影響を残している。
 奈良四区で落選し、比例代表区で復活当選した自民党の田野瀬良太郎氏は、みずから当選辞退を表明した。一〇月二三日の読売新聞は、「小選挙区選の当選者と重複立候補により比例選で救われた敗者復活組とでは、発言力にちがいがある。との見方が、さっそくでてきた」と報じている。復活当選した本人でさえ、民意をうけた代表なのか疑問をもつことになる制度なのだ。選挙終了直後に読売新聞に掲載された復活当選者の声には、当惑が浮きでている。

 東北ブロック四位・二田孝治氏「落ちたり上がったりと、まるでエレベーターみたいな選挙だった」

 東海ブロック五位・栗原裕康氏「墓場の中からよみがえった。小選挙区でも比例選でも、議員は議員。けっして幽霊ではございません」

 南関東ブロック四位・佐藤謙一郎氏「小選挙区で敗れ、とてもバンザイしようという気持ちになれない」

 東京ブロック七位・石井紘基氏「小選挙区制でどうしても勝ちたかったので感激は半分だ。しかし、けっして引け目を感じません」

 選挙後に朝日新聞がおこなった世論調査によれば、「重複立候補はよかったか」という質問に、なんと七〇パーセントのひとが「よくなかった」と答えている。国民の大半から支持されていない制度が、そのままでいいはずはない。(鎌田慧著『壊滅日本』アストラ刊・講談社文庫)

この問題はいったいどこへいってしまったのか。もはや誰も問題にしないが小選挙区比例代表並立制での第一回選挙ではこれだけの問題点が示され当選者本人も有権者も大いに問題ありとしていた。それを受けて政府・与党でさえ改善の姿勢をみせたはずである。

今回の選挙ではこの「常識では理解しがたい」が当然になりつつある。それは決して定着ではなくマヒといった方が正しい。自民・民主両党ばかりでなく全党にいえる問題だ。

まず自民。比例名簿の上位に選挙区で「刺客」として放った女性候補を並べた。これは比例順位が惜敗率に優先する制度である以上、郵政民営化関連法案に反対して無所属になった「刺客相手」に大惨敗しても、つまり選挙民にノーを突きつけられても当選確実という途方もない矛盾を生み出す。

その点で民主党の重複立候補を1位に並べるという戦法は一見すると正しそうだが実はそうでもない。むしろ比例は鎌田氏の指摘するような当選者ばかりになるという結果になるからだ。それを比例票の掘り起こしに有効だと積極的に推進するやり方は「常軌を逸した」としかいいようがない。

公明党は小選挙区に候補者はほとんど立てずに自民候補を応援して見返りに「比例は公明」と書いてもらう戦術である。まことに巧みなやり方だが選挙制度の本来の趣旨からいえばおかしい。

結局はカカシ、といって悪ければ小選挙区では当選が客観的にほとんど見込めない候補をズラッと並べる従来の方式に戻ってしまった日本共産党も小選挙区候補が自身の当選を訴えるというよりは比例区での上積みを狙っているという点で選挙区軽視といわれても仕方がない。そもそも共産党がかつて全選挙区で候補者を立てていた理由は過半数を得て政権を取る前提が成立しないからだったはず。それが「確かな野党」じゃあおかしい。過半数を取って野党でいるというのも変な話だ。

社民党は沖縄の1小選挙区を除くと選挙の目的ははっきりいって辻元清美候補を比例でも救済するか彼女が小選挙区を握れば彼女と土井たか子候補の個人票で比例で1人オンできるかという目的としか思えない。国民新党や新党日本は比例での救済自体が結党目的の1つである。

要するに初の小選挙区比例代表並立制選挙で国民の7割がおかしいと感じた重複立候補制度は改善されるどころか各党の数獲得の主要戦略になっているのだ。そのことを声を大にしておかしいという人はいまやほとんどいない。約10年。たったこれだけの間に知らぬうちにおかしいことが当たり前になった。そんな例は他にもたくさんあるはずだ。

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コメント

確か、重複立候補は有効投票総数の1/10が
得られないと復活当選が認められないです。
従って刺客は100%当選ではないです。
参考URL
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050823-00000147-jij-pol

投稿: tkawase2 | 2005年9月 2日 (金) 03時29分

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