« 『ちびくろ・さんぼ』と『ブラック・ジャック』 | トップページ | 隠したニュースの主語を特定 »

2005年8月19日 (金)

電話での「うまい話」勧誘

不景気がいつまでも続き、中小・零細企業が資金繰りに困ったり倒産するのは当たり前という時代。厚生労働省のまとめによると1998年から年間の自殺者数が3万人を超えている。
ところが追いつめられていく人がいる一方で、それらの人を標的としたハゲタカがいる。彼らはうまい話を持ってきて、ワラにもすがりたい人にワラ以上にみせかけ、結果的にさらにその人を追いつめる。
零細企業経営主の私が経験した「うまい話」の主な特長は以下の通り。

1)「社長いますか」と電話をかけてくる
「金を貸す」系の電話に多く、なかには社長の苗字までていねいにつけてくる。大会社の本社にいきなり電話して「社長いますか」と聞く金融業者はきっといないから彼らの手元には

・社長自らが電話口に出てくるほど零細である
・社長自らが金策にかけまわっているほど零細である

に該当する会社という名簿があり、そこにわが社もありがたくも掲載されているに違いない。
残念ながら私のところはその通りの会社だ。そこから借りるか借りないかは相手が法を順守した条件を出している限りは自己責任だが弱みにつけ込んだような商法であるのも事実だ。

2)個人名でかけてくる
毎日新聞にいた頃に通信部に電話して面白いことを発見した。通信部とは地域に置かれている取材拠点兼社宅で、たいてい記者1人とその家族が住んでいる。そこにかけると記者がいないときには子どもが出て「はい、毎日新聞です」と答えた。なんてかわいそうなんだろう。この子は自宅にいながら、自分の苗字で電話に出られないのだ・・・・と。
個人名でかけてくるというのはその反対で会社名を名乗らず、個人の名前でかけてくる。会社名を聞かれるとたちまち切られてしまうからだ。名乗れない名前を掲げる会社はむろん信用できない。

3)必ず値上がりします
先物など金融派生商品に目立つ方法。トウモロコシなどの市況を挙げ、昨年の実績などを示しつつ「必ず値上がりします」と胸を張る。おいおい、農業に「必ず」があれば徳川幕府はつぶれなかったのだよ。たいていは不都合なデータを切り捨てて都合のいいデータだけを並べる。良心的な先物を扱う会社は、総合的なデータをきちんと提供してくれるし、「必ず」とはいわない。

4)今が底値です
不動産売買で目立つ方法。「必ず値上がりします」の親戚だが、「底値」の方は真剣に分析して本気で提案してくれる良心的な会社も数多くあるだけに悪徳組を見分けるのは難しい。ここ10年間、土地は一部を除いて下落してきたにもかかわらず、同じような物件を毎年「今が底値です」と訴えていたらあやしい。

5)選ばれた人です
いまにも倒産寸前で、金が足りないに違いないという会社だけを「選んだ」というならばわかるが、彼らの口調は全然逆で、なかには「これから伸びるごく少数の会社だけを小社の独自のシステムを使ってリサーチし・・・・」などと密やかな口調で迫ってくる。いわゆる「M資金」といわれる手法の中小・零細企業版。
「選ばれた」と聞くと、私などは「うそいえ。私が経営しているうちはわが社が伸びるわけがない」と切り返したくなるが、そこをがまんしていると。少数を選んだにしてはパンフレットが妙に立派。私はこれでも出版の世界にいるので、パンフの作りをみれば、どの程度のお金をかけてどの程度刷ったか想像がつく。で間違いなくお金もかけて大量に印刷したものなのだ。「選ばれた人」用に大量のパンフはいらない。

それにしても、私の会社がある神田神保町は、私と同業の出版関係者が多いのだから、あんな立派なパンフレットを使ったら同様に見抜かれるだろうにと不思議に思って知り合いの印刷会社の社員に聞くと、彼は「そうでしょう?」とニヤリと笑って、「だからね。最近はわざと手書きっぽくしたり、少部数しか刷っていないように見せかける印刷をしてほしいとの要望があるようですよ」と続けた。思わず「そんな商売を君のところはやってるの?」と聞きそうになって止めた。知らぬが仏。

6)金(GOLD)が買い時です
円もドルも株も土地も信用ならない。だからこそ金だと。金の売買そのものは正当な商売だが日本の金はドル建て。つまり支払いはドルと決まっていて円に換算した数字で買うから円、つまり日本で住むことを前提とした資産形成をめざしているならば、円とドルとの為替レートが常に価格に反映されるので、「円もドルも信用できないから金だ」というのは「妻も子どもも信用できないから家族だ」というに等しい根本的な間違い。少なくとも為替リスクを熟知した人でないと扱いにくい商品のはずだ。

7)あなたを信用しなくて無担保で貸せると思いますか
これはかなりの高等戦術。倒産してしまえば貸した金は返ってこない。にもかかわらず担保なしで貸すのだから信用している証拠だという論法である。わが社に限っていえば、私を信用した時点で相手が信用できないので論外ですが、他の多くのまともな人間はひょっとしてこのトークを信じるかもしれない。

この論理はいわばババ抜きの論理。仮に利息15%で100万円貸すとする。A社は100万円貸して115万円の回収。借りた会社に返す力がなければB社から115万円を借りてA社に返す。B社の利息も15%だから期限までに133万円をC社から・・・・という具合に借金は雪だるまのようにふくれ上がりH社でついに借り手が破産してしまったとしたら、H社はババをつかんだわけで大損だが、A社からG社まではもうかる。
したがって「私はH社にならない」というノウハウがある、ないしはノウハウがあると信じ込んでいる会社は果敢に?無担保で貸してくる。

|

« 『ちびくろ・さんぼ』と『ブラック・ジャック』 | トップページ | 隠したニュースの主語を特定 »

経済・政治・国際」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 電話での「うまい話」勧誘:

« 『ちびくろ・さんぼ』と『ブラック・ジャック』 | トップページ | 隠したニュースの主語を特定 »