永岡洋治衆議院議員の自殺
首都近郊の農政のあり方などを熱く語るいい人だったのに。報道によると7月5日の郵政民営化関連法案の採決で賛成票を投じたのが後に大きな波紋を広げたのと衆議院解散が現実味を帯びてきて自らの行動と選挙民の反応に苦しんでいたなどの憶測が流れている。仮にそうだとして何が54歳での死を選ばせたのか。
1)何で自民党公認にこだわったのか
永岡議員の地盤は衆議院茨城7区。当初は郵政民営化関連法案に反対していたのも選挙区の民意がそちらであったからでもあろう。現に地元の特定郵便局長会の顧問を務めていた。ならば反対を貫けば死ぬこともなかった。確かに執行部は「反対したら次期選挙で公認しない」と脅していたようだが賛成して民意を失ったら元も子もなかろう。
彼は元々は野党の新進党から初出馬した(落選)。新進党は現在の民主党の源流の1つである。「郵政解散」となれば民主党大勝が大方の予想だ。その民主党は法案に反対している。自分から離党したならばともかく執行部から公認されなかったならば是非もない。いっそ民主党にくら替えすればよかったんじゃないか・・・・と考えるのは甘いようだ。
「自民党公認」の看板はすっかり色あせたが威力を発揮する地域が全国で4つある。北関東・中国・四国・九州南部だ。この4つだけは「自民党」の金城湯池で民主も堅陣を抜けないでいる。永岡議員の地盤は北関東。北関東3県の小選挙区での勝敗は自民党が何と16勝1敗!(2003年総選挙)。どこの国の話かと思えるほど自民が強い。乗り換えるのは不可能である。
2)「中村党」が選挙区にあった
選挙区では暴風雨のように強い国会議員がいる。自民ならば綿貫民輔前衆議院議長、民主ならば羽田孜元首相などが挙げられる。とにかく対立候補に票が行かなすぎて下手すると無投票当選になってしまうんじゃないかというほど強い。綿貫前議長は郵政民営化反対の旗頭だが彼の場合は無所属でも文句なく勝つ。
かつてその一人に茨城7区の中村喜四郎がいた。両親ともに国会議員で「喜四郎」の名は政界進出の際に父の名を「襲名」したという。2世3世が珍しくない政界でも「襲名」は珍しい。かつて西郷隆盛の孫の西郷吉之助衆議院議員がいた例はある。ただし子でなく孫であるし隆盛の「吉之助」は通称で本名ではない。
要するに襲名などという大時代な真似をして受ける土地柄であるらしく選挙では圧倒的な強さを誇った。
中村は1994年にあっせん収賄罪で東京地検特捜部に逮捕された後も無所属で96年と2000年の総選挙を勝ち抜く。刑事被告人なのに無所属で勝っちゃうんだよ。03年に懲役1年6月の実刑が確定して失職するも今年6月以降は刑期が終了するので立候補ができる。「自民の北関東で無敵の2代目喜四郎」がそうでなくても永岡議員の前に立ちはだかる可能性が6月以降出てきたわけだ。
何しろ刑事被告人であっても勝てた御仁である。彼は古い自民党の象徴である「自分党」(つまり「中村党」)の残りかすなのだが残りかすだろうが何だろうが強いものは強い。だからせめて自民公認を維持したくて賛成票を投じたのに「裏切り者」と呼ばれれば死にたくもなろう。
3)「派閥」の弱体化
中村元議員は離党するまで現在の旧橋本派に所属していた。永岡議員は亀井派だ。
組織に派閥がある例はありふれているが自民党は派閥が事務所まで開設している。どこぞの会社で派閥の事務所を設けている有力者がいるだろうか。要するに自民党における派閥は政党と同等で「自民党」は派閥連合であった。公認は派閥間で調整し総裁は追認するだけ・・・・のはずだった。そうであれば賛成票を投じた永岡議員は「亀井派のシマ」なので公認を外される道理はない。
ところが親分の亀井静香衆議院議員が反対票を投じてしまった。そうでなくても小泉純一郎首相は派閥の論理を超えた人事を売り物にして悦に入っている。「亀井派のシマ」なんてチャンチャラおかしいとひねくれてもおかしくない人物だ。
小選挙区制が定着するにつれて派閥提出の名簿を総裁らの執行部が黙認する時代でもなくなっている。現に安倍晋三自民党幹事長代理(正確には安倍晋三自民党本当の幹事長)は公募形式を推し進めようとしている。
要するに永岡議員は
・「反対せよ」と迫る派閥のボス
・「反対すべきだ」と突き上げる地元の支援者
・自らの政治信念
によって最初は反対しようとしたものの
・「賛成しないと公認しない」とわめく武部勤自民党幹事長(正確には武部勤自民党形だけ幹事長)とその裏にいる小泉という独裁者
・自民じゃないと勝てないという北関東の超保守性
・負けっ放しで弱い派閥のボス
・襲名を喜び刑事被告人でも構わない民度ゼロの「中村党」
という変数を考えると賛成せざるを得なくなり結果として虻蜂取らずでどっちからも見捨てられそうになった悲劇の人といえよう。
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コメント
古河市出身の者です。高校卒業後、古河を離れましたが、古河及び北関東は民度ゼロですか、、。そうなんでしょうねぇ、。今度も中村喜四郎が立候補したら当選すると思います。東京方面から移り住む人も毎年増えているようなので、少しずつ変化していくのでしょうが。贔屓目で言わせて頂ければ、良いところなのですよ。愛想もないし無骨ですが、相手を敬う心は持ってるし、相手を騙したりも差別もしません。東京・大阪・岡山と住んできましたが、素直さ・真面目さ・道徳は際立っています。おそらく、疑わない・逆らわない性質が、裏目に出ているような気がします。このままでは取り残される土地になるのでしょうか?哀しいなぁ。
投稿: 85236 | 2005年8月11日 (木) 12時41分