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2005年7月24日 (日)

最低資本金制度撤廃と1円起業

早ければ今年秋の国会で商法が改正されて「1円起業」が条件抜きにできるようになる。すでに03年に成立した中小企業挑戦支援法で「1円起業」は可能となったがあくまでも特例である。今秋の改正は特例を無条件にしようというものだ。

現在、株式会社の資本金は1000万円以上必要である。このハードルが高くて日本では起業家が育ちにくい。だから一挙に1円でもOKにしようという話だが過去の経緯を知る者は到底納得がいかない。

そもそも1990年の商法改正以前は株式会社は50万円あれば作れたのである。1円よりは高いが50万円という金額はさほど厳しいハードルではなかった。それを1000万円に引き上げたのが90年の商法改正である。当時の法制審議会の答申や法務省の主張によると最低資本金を株式会社は1000万円(法制審答申は2000万円)に引き上げる理由を

①50万円では名前だけの会社が増える

②株式会社は有限責任なので借金を負った場合の返済は資本金の範囲で済ませられる。50万円では債権者を保護できない

などと言っていた。そのために90年改正以前に50万円以上で株式会社を名乗っていた零細企業は5年間の経過措置の間に、それこそ死ぬる思いで約1000万円をかき集めたのである。そうしないと名刺から「株式会社」を消さねばならない。文字通り会社存亡の危機を招いた。

ところがマスコミはこうした零細企業の労苦をあざ笑った。例えば『朝日新聞』90年3月17日付社説「『会社』には何が必要なのか」には以下のようなことが書かれていた。

「最低資本金を引き上げ(中略)長い間の懸案を盛りこんだものだが、既存会社に大幅な経過措置を認めるなど、現実に妥協した中途半端な改正とならざるを得なかったのは残念」

「この不徹底な改正案でさえ、通産省や零細企業の間では反対の空気が強い、という。改正は中小企業全体の健全な発展という面では、明らかにプラスである」

要するに5年間の経過措置さえ生ぬるく零細企業の「反対の空気」などもってのほかというわけだ。そうした論調が総括されないまま2005年度からは一転して「1円でもいい」という。メチャクチャである。

先にあげた①②の問題がすでに解決済みというならば文句はない。だが現実は何も変わっていない。まず①は50万円でさえそうならば1円ならばもっと「名前だけの会社が増える」に決まっている。②も同様で1円の資本で債権者を救済できるわけがない。

いやいや。零細企業のほとんどが借金をする際には連帯保証人として個人名を代表者が連ねているから大丈夫だよとの声も聞こえるが反論にもならない。なぜかというと、

①個人での連帯責任は90年改正の前から慣行として行われていたし今でもそうである

②そもそも個人での連帯責任自体が「有限責任」の論理から外れている

からである。 90年改正の時に問題となった「節税目的のミニ資本金会社」は「1円起業」でドッと増えよう。何しろ消費税の最低ラインである1000万円に届かなければ益税となるからだ。現行では資本金自体が1000万円以上だからできないはずの節税が1円起業ならばできる。ナンセンスの極みだ。

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