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2005年7月31日 (日)

出版社の作り方

出版社を起こしてみたいという人はどれほどいるのだろうか。自身が零細なので魅力ある起業だと人に勧める自信はまったくないが「文化財」(国会図書館に献本するとこう書いた返事をくれる)を生む誇りが持てる初期投資も比較的少なく済む。しかも後述するように流通システムが独特で自前で構築しなくてもいいなど小資本の起業に向いているのは確かである。ということで私の頼りない経験からでも書けることを書いてみたい。

1)本は書店に貸して売る

ここでいう出版社(版元)とは自分の会社で作った単行本を全国有名書店に委託販売する形態をさす。雑誌に関しては別に雑誌コードという問題があるので今回は割愛するが雑誌コードの問題を除けば単行本と同じである。委託販売とは出版社をメーカーとみなした場合に書店=小売りに問屋(取次)を通して「売る」(買い切り)のではなく手早くいえば「貸す」販売方式で出版界では最もポピュラーな方式である。

書店は「借りた」本なので返せるという安心感から小出版社の本や名もない著者の作品でも案外と気楽に置いてくれる。一方の小出版社は「返る=返品」のリスクはあるにしても自前で大流通ルートを構築せずに全国有名書店に本を置いたり注文に応じたりできる。

2)「取次様」が物流と集金の両方を担う

ここで一番肝心なのは全国有名書店に人手を割かずにアクセスするためには前記の取次という問屋と取引契約を結ばなければならないという点である。書店は各々がどこかの取次の帳合(取引関係)にあるので取次を通さないで本を売るのは至難の技といえよう。

ただ置けないだけではない。実は取次は集金機能もあるのだ。全国に散った「貸した」本がどれだけ売れていくらになるという集計だけでも大変なのに集金となれば小出版社ではとても自力では不可能。集金できなければいうまでもなく商売は成り立たない。要するに取次は本を運ぶ(ついでに戻す)物流機能と集金など金融機能があるのだ。

ここで余談。物流と金融という他の業態ではあまり関係ない能力を合わせ持つ企業形態は珍しい。大手で例えれば日本通運と東京三菱銀行が一緒になっているような形態だ。あえていえば今話題の郵政3事業がそれに当たる。本格的に3事業が分割されたら多分日本で唯一の企業形態となる

3)取引コードの取り方

さて取次はまず大手の2社すなわち

トーハン

日本出版販売(日販)

がある。この2社(東日販)で感覚としてはほとんどの書店が網羅されている。両者の規模は互角といっていい。次いで

大阪屋

が関西を中心に一定の勢力がある。書店グループとしてはジュンク堂やブックファーストの各店舗の多くを押さえている。さらに

太洋社

栗田出版販売

中央社

などが続く。

よってまずは東日販と取引することだが案外とこれが難しい。近年の出版不況で取次は新規の取引を抑制する傾向にある。むろん大資本がついていたりキラーコンテンツを持ち合わせていれば別だが何という実績も資本もないまま取引を頼んでもなかなかウンとはいってくれない。そこでお勧めする方法は2つある。

一つはすでに取引をしている(つまり取引コードを持っている)出版社に依頼して発売はその出版社に任せるが発行は自分でリスクを負って行う方法である。自社の名前は奥付に「発行 何何」として明記する。このようにして出版実績を積んでから取次に談判に臨む方法だ。

もう一つは取引コードの取得を業務内容にしている会社に依頼する方法だ。だが中には口だけ達者で仕事をしてくれない不道徳な会社もある。私も苦労して取引コードを取った者だ。何か質問などあればお気軽に問い合わせてください。

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コメント

はじめまして。ホームページを読ませていただきました。早速質問なのですが、出版社の作り方の具体的な方法を教えてください。また設立後、利益がなくても税金はかかりますか?また、自分で書いた本を自分の設立した会社で出版したいのですが、その際どうすればいいですか?お手数ですがお返事のほど宜しくお願いいたしいます。

投稿: 石山 | 2008年9月 9日 (火) 00時27分

石山様

①出版社の作り方の具体的な方法
株式会社を設立するのが最も一般的です。現在は会社法創設にともなう最低資本金規制などが緩和されてたやすくなりました。会計事務所(税理士)に依頼すれば簡単かと
ちなみに出版社は放送局のような省庁の認可は必要ありません。要するに単なる会社設立と同じです

②利益がなくても税金はかかるか
一般論としていいますと株式会社の利益に法人税はかかるので赤字ならばかかりません。利益が単年度に出ても前年までの赤字を繰り越すことが期限付きでできます(繰越欠損)。地方税の法人住民税均等割はかかります。消費税は当たり前ながら支払わなければなりません。
また登記された株式会社の役員にご自身が就任され、そこで給料(役員報酬)を得れば当然所得税と社会保険料がかかります。その収入に応じて地方税が換算されます
注意を要するのが在庫。これは棚卸資産になるので課税対象です

③自分で書いた本を自分の設立した会社で出版
当然できます。自著であるかどうかで制限は法的に存在しません。ただし記事で書いたように取次との取引コードがないと自著であろうとなかろうと書店ルートで販売するのは難しかろうと存じます

投稿: 月刊「記録」編集長 | 2008年9月 9日 (火) 18時52分

はじめまして。サリービーと申します。
最近、自費出版を考えておりまして、いくつかの出版社の費用を聞いてみると、ある出版社では、1千部印刷して、約3百万位で、印税は、定価の2~8%とか、また別の出版社のネット上の自動見積書で見積もると、まったく利益がでなく、一応その会社は良心的で、利益は、定価の50%と書かれていました。しかし、もし自分で出版社がもてたなら、自分の本を自分で売って、利益は、出版費用にかかる以外は自分に入ると思うと、自分で出版社を作りたいと思ったのです。で、検索すると、貴殿のサイトに出会いました。で、読んでみると、その取次店と取引できるようになるには、非常に大変のようで・・・。簡単に直接ではなく、取次店と取引をできるようになる方法を記載してくださっていますが、いまいちよくわかりません。もっと詳しく、お教え頂けますでしょうか?お手数ですが、よろしくお願い致します。

投稿: sally_b | 2008年11月 9日 (日) 11時30分

サリービー様
「利益は、出版費用にかかる以外は自分に入る」という前提がどうかと存じます
例えば1000部の印刷・製本は外注するとしておおよそ50万円を下ることはないでしょう。定価は高めに2000円とします。全部売れて200万円。うち出版社に入るのは約3分の2なので133万円。印刷・製本を引くと53万円です
これは完売の場合。実際には返品と注文が錯綜するのでその電話・スリップ応対や在庫する場所の確保、取次各社への搬入をしなければなりません。取次の保留分もすぐには入金されません。何より新刊委託分の入金は約半年後。その結果として最上で完売なので経過ではすべて持ち出しとなります。
また売れる本を作るには最低限の宣伝とカバーデザインは欠かせません。これまた20万円を下るとは思えません。
サリービーご自身が編集者ならばともかく、そうでないとしたら編集も誰かに頼む必要があります。それを自分でしてしまうとしても本文の割付やレイアウトは外注することになりましょう。ワードなどの汎用ソフトでレイアウトしたデータで入稿したらその手間も省けましょうが、そのような体裁のレベルで売れている(たとえ千部でも)書籍は皆無に等しいかと存じます
それでも……ということであればいっそ取次へ赴いて直に相談するのが一番手っ取り早いかと思います

投稿: 月刊「記録」編集長 | 2008年11月10日 (月) 17時05分

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