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2005年7月13日 (水)

靖国合祀A級戦犯の内訳

靖国神社にはA級戦犯が合祀、つまり一緒に祭られている。A級戦犯こそ中国大陸をかつて侵略した主要なメンバーであり、そこに侵略した日本の首相がお参りにいくのは許せない--ぐいと単純化すれば中国の小泉首相靖国神社参拝への反発はこんなところだ。
そこまで言われると合祀されたA級戦犯は中国で何をしたか気になる。
一般に中国への侵略とは1931年の満州事変から1945年の敗戦までの「十五年戦争」をさす。この間の首相は若槻礼次郎、犬養毅、斉藤実、岡田啓介、広田弘毅、林銑十郎、近衛文麿、平沼騏一郎、阿部信行、米内光政、東条英機、小磯国昭、鈴木貫太郎の13人で敗戦までに死去した犬養、斉藤、林と戦犯容疑者の指名を受けて自殺した近衛をのぞく9人が差し当たって「十五年戦争の日本側のトップ」となる。そのうち満州事変の拡大を止めようとして果たせなかった若槻、軍部に襲撃された岡田、親英米派で陸軍と対立した米内、組閣自体が終戦を密かな目的としていた鈴木はおとがめなしだったので残りは5人、うち首相としての力量が非常に弱かった阿部がからくも見逃されてA級戦犯に指定された首相経験者は広田、平沼、東条、小磯の4人となる。
ところが靖国に合祀されているA級戦犯は14人。彼らの中国での行いを順にみていこう。
【パターン1】東京裁判で死刑となった人
1)東条英機・・・・35年に当時の日本の中国での植民地である関東州を預かる関東軍の指揮官を務めた。その後も陸軍の中心にい続けて41年には首相に就任。陸軍のツートップである陸軍大臣と参謀総長を兼任し44年の総辞職まで独裁的体制を敷いた。この経歴では中国に敵とみなされても仕方ない
2)広田弘毅・・・・日中戦争では外交官のトップである外務大臣として強硬だった。ただ彼は軍人ではないし政治家とも言い難い。日独防共協定締結や軍部大臣現役武官制復活も問題視されたが中国にことさら憎まれる理由は薄く死刑になったことさえ同情する声がある。
3)板垣征四郎・・・・日本が中国北東部に作り上げた満州国建国の中心人物の一人。中国は一貫して満州国を認めず侵略行為としてきた。ただ彼よりも上位にあって満州国を作った石原完爾が「おとがめなし」だったのとはバランスを欠くとの声もある
4)木村兵太郎・・・中国との関連は主に1940年に就任した関東軍参謀長ぐらい。東南アジアの現ミャンマーでの行為が大きな問題とされた
5)土肥原賢二・・・・満州国のトップに旧清朝の皇帝だった溥儀を連れてきたり満州と隣接する華北を中国から分断する華北工作で知られる
6)松井石根・・・・中支那方面軍司令官として中国の首都(当時)南京を攻撃し占領した。その時に発生したのが南京事件である。A級戦犯が裁かれた東京裁判では「南京大虐殺」として大きな衝撃を与えて責任を問われた
7)武藤章・・・・中国との直接の関わりは見出しにくい。対米戦争での責任追及だったとみられる
【パターン2】判決が「終身禁固」で服役中に死亡
8)梅津美治郎・・・・中国との関わりは関東軍の総司令官を務めたことぐらい。敗戦時の参謀総長
9)小磯国昭・・・・首相の際は中国戦線も太平洋戦線も崩壊寸前で当事者能力さえ疑わしい
10)平沼騏一郎・・・・首相在任中はもっぱら対ソ連戦(ノモンハン事件)に追われ独ソ不可侵条約で方向を見失って崩壊。ソ連の敵とはいえても中国との関係は今ひとつ
11)白鳥敏夫・・・外交官でイタリアを日独伊三国同盟に引き入れることに尽力したが中国との関係は希薄
【パターン3】「禁固20年」で服役中に死亡
12)東郷茂徳・・・・外交官で中国との関係は希薄。東条内閣の外務大臣で対米戦争を避けられなかった点が問題視された
【パターン4】判決前に死亡
13)永野修身・・・・海軍の有力者として対米開戦の音頭をとったが中国との関係は希薄
14)松岡洋右・・・・満州国の承認に至らなかった国際連盟から脱退した時の首席全権。35年から39年まで関東軍が守る南満州鉄道株式会社総裁。問題視されたのはその後に就任した外相時代に取った対米強硬路線である

こうやってみるとA級戦犯は次の
1)すべてに問題がある・・・・東条
2)対米戦争の引き金を引いた=日独伊枢軸に動いた・・・・広田、武藤、白鳥、東郷、永野、松岡
3)対米戦争の政治的・軍事的責任・・・・梅津、小磯
4)その他の失態・・・・平沼、木村
5)主に中国戦線での責任・・・・板垣、土肥原、松井

中国が東条以外に怒る戦犯となると5)の3人ということになる。ただ板垣は前述のように「おとがめなし」の石原とのバランスの問題がある。土肥原の工作は失敗した。すると南京事件の当事者であった松井となるが彼の日常の言動や事件における当事者能力を考えると中国国民一丸となって憎むほどではない可能性が被害者感情を十分に勘案した上でもある。
となると「靖国参拝A級戦犯問題」とは要するに「東条問題」である。東条は明らかに日中戦争の当事者であり権力を掌握した上で国際法を無視した「戦陣訓」を作成して過剰に兵士を締め付けて蛮行の動機を作りもした。
もはや靖国問題は日中問題であるから首相が参拝しないと外国に屈する形になる。私は靖国参拝には反対だが外国の圧力に屈する外交も見たくない。ならば問題を「A級戦犯合祀」から東条問題へと置き換えて議論したらどうだろうか

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