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2005年7月16日 (土)

郵政民営化の出口問題

郵政事業のうち実に350兆円ともいわれる郵便貯金(郵貯)と簡易保険(簡保)の使われ方(出口)がいい加減である。具体的には特殊法人の事業などを支える財政投融資金(財投)に無駄金として流れていると批判するのが民営化賛成論者の主な言い分である。逆にいうと出口をふさいでしまえば民営化は不要となる。
確かに厳密にみていくと以前のような財投の仕組みではなくなっている。端的にわかりやすい文章が見あたらなかったのでこの際まとめておこう。

財投が税金の直接投入と違うのは、最終的に利息をつけて貯金した人に返却しなければならない点だ。そうしないと郵貯、簡保にお金を預けた人に返ってこないことになって暴れ出すに違いない。だから利息をつけて返却するためにはもうけなければならない。出口で「もうけ」とは正反対にムダ使いをしていれば将来返せなくなる。そこで財投改革を今世紀に入って断続的に行った。

1)財投改革の実態
【変更前】旧大蔵省(現在の財務省)資金運用部に預け、資金運用部が運用していた
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【変更後】特殊法人自身が「財政投融資機関債(財投債)」という一種の金券を発行して自主的に集めることにした

「こうすれば内容のよくない特殊法人の財投債は買われなくなるため法人は努力して経営を改善するはずだ」というのが目的である。

ところがこの改革には抜け道がある。

a)業績のよくない特殊法人に政府保証債の発行を認める
b)政府自身が財投債を発行して資金を調達できる道を残した

この抜け道を使えば「A特殊法人」の業績自体は悪いので、そこが発行する金券を買っても損をする恐れがあって買わないが、バックに政府の保証がつけば安心して買えることになり経営改善の動機は消える。

2)特殊法人改革の実態
【変更前】特殊法人自体が無駄を生む吸血鬼のような存在だから、廃止したり民営化することで健全化する
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【変更後】実際に廃止された特殊法人はほとんどなく道路公団の民営化も骨抜きで終わった。何よりも問題なのは「独立行政法人」という民営でも特殊法人でもない不思議な形態が多数生まれたことだ。一応経営の健全化や透明化は義務づけられているものの大臣の監督下にあるなど国のサポートが事実上ある。

しかも財投債のような金券発行も独立行政法人通則法の45条に「独立行政法人は、個別法に別段の定めがある場合を除くほか、長期借入金及び債券発行をすることができない」とある。裏を返せば「別段の定めがあ」れば発行できる。

出口はふさいだようでいて財投改革前と同じ、一種の偽装工作が取られたにすぎない。

3)運用上の縛り
「もうけ」を出すために民営化された郵貯や簡保は運用実績を出さなければならないが民間のようなノウハウがない上に途方もない縛りがある。国債の強制的な買い上げだ。
国債とは国(政府)が発行する債券で、一定の期間がたてば利息を付けて返す金券である。いわば国が保証した借金だが今現在、最大の買い手の1つが郵貯、簡保事業である。「郵政民営化の基本方針」では2007年に政府が100%株を持つ持ち株会社のもとで、いわば「半分民営化」を行い、2017年から完全民営化に踏み切るとしている。そして同方針では2017年までは郵貯、簡保事業は「国債市場への影響を考慮」せよと明記されているのだ。つまり今から10年以上は自由な判断ではなく国の方針として国債を買い続けることになる。
今でさえ途方もない借金を国債の形で買っているのに、さらに10年以上も買わなくてはならない。

もちろん国債が有利な投資であれば「もうけ」が出るから文句はない。不景気の時は地価や株価が下がるので、利息は小さくても国債は国の保証がついている分だけ安心であるとはいえる。しかし同時に不景気が続くからこそ国債に頼らざるを得ないともいえるのだ。
だから景気が回復すれば地価や株価が国債の利回りを上回る可能性が大きいので投資家の資金は国債から逃げていく。すると国債価格は下落し、危険な投資対象となるわけだ。

要するに国債が有利な投資である分には郵貯・簡保は安心できるが景気は上向かない。景気がよくなると国債は反落するから郵貯・簡保は経営危機に陥ることになる。

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